神秘階梯




スーフィズム全体は個我が失われれば、宇宙我が見出されるという信念、
あるいは宗教的な用語で言えば、エクスタシーは魂が神と直接交流し、
結ばれることを可能にする唯一の手段を提供するという信念に基づいている。

スーフィー達が通常用いる比喩的用語で「エクスタシー」に
多少とも匹敵する語は、
ファナー「消滅」
ワジュッド「感じること」
サマー「聴聞」
ザウク「味わうこと」
シルブ「飲酒」
ガイバ「自我喪失」
ジャズバ「魅惑」
スクル「酪酊」
ハール「情緒」
である。

・・・・・中略・・・・・

しかしながら、上述の専門用語のうちファナーとサマーの二つに言及しなければ、エクスタシーのイスラム的理論について論議することは不可能に等しい。
私がすでに序章でのべたように、ファナーには異なる段階、局面、意味がある。
これらは次のように要約されよう・・・

(1)その情念、欲望のすべてを絶滅することによる魂の道徳的変容。

(2)精神的抽象化、すなわち神に思念を集中し、
   心から知覚、思考、行動、感情の対象を消去すること。
   ここで神の思念というのは、神の属性についての瞑想のことである。

(3)あらゆる意識的思考の停止。
   ファナーの最終段階は、ファナーに到達したという意識すら消えたときに
   達成される。
   これがスーフィーの言う「消滅の消滅」である。
   神秘家は今や神の本質の観照に歓喜する。

ファナーの最後の段階、つまり自我からの完全な消滅は、神の中での「存続」
もしくは「永住」を意味するバカー(Baqa)の前奏をなしており、これについては第四章でより詳しく論ずる。


第一段階は仏教の涅槃によく似ている。
それは心の邪悪な性質や状態の「消滅」であり、
心の善良な性質や状態の同時的「存続」を含んでいる。

神との関係の中では「自我」の諸属性はすべて悪であるので、
これはエクスタシーへの必然的過程となる。
自己を完全に道徳的にすること、
すなわち完全に「無我化」することは誰にもできない。
これは彼の心に現れる「神の美の閃光」を通じてなされなければならない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


愛はわが魂の琴の愛の弦をかきならし、

頭から足の先まで私の全身を愛に変えた。

それはほんの一瞬の手触りであった。

だが時は永遠に

感謝の負債を私に負わせるであろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人間はその内にないものを知ることはできない

「スーフィーの格言」


*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。


消滅と残存(ファナーとバカー)

bara

「愛される者」は、

その「愛される者」たる本質の基盤をなす

「愛する者」に捧げられているのだと、知ることが

バカー(baqa-;残存)である。

このように、すべての「愛する者」は

「愛される者」であり、

すべての「愛される者」は「愛する者」である。

愛は美を必要とし、美を希求する。

美は愛を必要とし、愛を希求する。

「絶対者」は絶対の美であり、絶対の愛である。

「絶対者」は自分を愛する人びとを愛する。

「絶対者」はそれらの人びとを愛するがゆえに、

彼らの中に、自分以外のものを何も残さない。

彼らは絶対者と同一である。

実際には、絶対者こそ唯一の愛する者であり、

唯一の愛される者だからである。

アリーに帰せられている

聖なるハディースにおいて、

神は次のように述べている。



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。

私を探す者は、私を見出す。

私を見出すものは、私を知る。

私を知る者は、私を愛する。

私を愛する者を、私は愛する。

私が愛する者を、私は殺す。

私が殺す物に、私は報いなければならない。

私が報いなければならない者には、

私自身が報酬である。



[スーフィズム、イスラームの神秘階梯]より抜粋

*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。
(注)

殺すものは、エゴ(自我)

エゴ(自我)の消滅によって

残存するものは神(絶対者)の存在のみである。



tutuji



*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。

「スーフィズムの精神的修業」


探 求


魂が上昇の弧に入り神秘的探求に取り掛かる過程は
スーフィズムの技術と方法にかかわる。

この方法は精神集中の能力に集約される。

精神集中の対象は神的なものとなり、
われわれは神を中心に据える。

精神集中は実に困難な行為である。

自分自身を与えるのは、
自分の行為の果実を与えること以上に困難である。

われわれの欲望は、外側に向かって、より強まる。

かくてスーフィズムのあらゆる方法は、
中心を探すものとなる。

瞑想の能力なしに
魂の欲望を支配することは不可能である。

何らかの静けさを探さなければならない。
静かでなくては神の声が聞けない。

行為のともなわない知識は果実のない樹のようなものだ。


瞑想=瞑想の機能は、心(ハート)が神に集中している間、
   理性(マインド)が道に迷わないように守ることである。
   心霊(サイキ)とは戦場、あるいは
   たえず波立っている海のようなものである。 
   それは静められなければならない、
   つまり、内面に目を向けるようにしなければならない。

唱名=スーフィズムにおいて瞑想(フィクル)は能動的唱名(ジクル)を
   受動的に補完するものである。
   人間は思考を止める事はできない。
   しかし、思考を超越することはできる。
   音楽・詠唱・精神的舞踊などの行為によって
   落ち着きのない心霊(サイキ)の抵抗は次第に弱まり、 
   肉体は個我(エゴ)を空にし「自己(セルフ)」に満たされた
   神の館となる。

   しかし、われわれは意志の行為によって
   自分自身の意志を超えることはできない。


以下、略・・・(考え中・・・)
のちほど。


「イスラームの神秘階梯」より。
平凡社
著:ラレ・バフティヤル


*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。

「4つの庭園」



コーランには、天国は4つの庭園からなるものとして表現されている。
「55章45節ー75節」


4つの庭園は、奥儀的には
スーフィーが内面の旅をするときに通過する4段階として、
解釈されている。

魂の苑

心の苑

霊の苑

本質の苑


 魂の苑:内なる女性原理

     感覚の出入り口(ゲートウェイ)によって組み立てられる。
     確実なる知、知識


 心の苑:完成された人間の全体性

     女性原理の精神的覚醒によって組み立てられる。
     直感、霊的心、能動的英知
     確実なる眼、英知


 霊の苑:高い部分と低い部分の2重構造になっている。
     低い部分には自己の本性である7預言者、7惑星、7つの霊妙
     高い部分には真の宿りの楽園として知られる果実がなる。
     女性原理は男性原理の中に自己を完成する。
     瞑想的真理、照明知、神的属性を一性にあらわした知識。

本質の苑;消滅(ファナー)の階梯
     存在一性の照明知識の中に再生した男性原理と女性原理から成立する。
     神的自己、合一、確実なる真理


この4つの庭園に到達した後、スーフィーは下降の弧をとおって
残存(バカー)の状態で現象界に再降下する。
スーフィーは来た時と逆の順序で次々に4つの苑を通っていく。

一性の知が湧出している光としての「本質の苑」

すべての神的属性の同一性の知識が自然に湧出し
太陽によって象徴される「霊の苑」

月が太陽から光を受容するように、
英知から流れ出る水と
霊の泉から水を受容している生の泉をもつ「心の苑」

そして、最後に「魂の苑」を通って、スーフィーは円を完成させる。
「魂の苑」は、月の光のように、存在の一性と霊を反射させ、
普遍的な意味をすべての特殊な形体へと反映させる。

神によって残存しながら、いまや真のスーフィーとなった神秘家は、
探求から戻ったのである。    

                         「イスラームの神秘階梯」

*・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。. .。.:*・゜゚・**・゜゚・*:.。..。.:*・*:゚・*:.。

難しくてよくわからないのだが
上昇弧を昇ったのち、下降弧を描いて円を感性させる。
4つの苑が上昇と下降で8つの苑を通過する様は
それとは若干違いはあるものの、 禅の十牛図 を思い起こさせます。
世間に帰る、それもまた修行のうちかと。
それには独居房に入る、黙想する、唱名する、などの肉体的修練も
含まれているといわれています。
その形式も禅の修業ににているように思えます。




kabe
よろず、何事にあれ

捜さなければ見つからぬもの

ただこの友だけは、不思議なことに

見つけてからでなくては捜せない


= サナーイー =



© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: