好意もてこのわしを

sibasakura

好意もてこのわしを

思い出してくれるあの人

いつまでも世の中に薫れかし

あの人のうるわしい思い出もまた。





誰かが誰かのことを良く言う時、
その善果は自分自身に戻ってくる。

実は始めから自分自身のことを褒め讃えるようなものだ。

譬えて言うなら、誰かが自分の家のまわりに花園をめぐらし、
香草を植える。
外を見るたびに目に入るものは花と香草ばかり。
四六時中、天国にいるような気持ちだ。
他人のことを良く言う習慣がついているからである。

本気になって誰かのことを良く言っていれば、
相手は自分の愛する人になる。
そこで、その人のことを思い出すごとに、
心に愛する人の面影が浮かぶ。

愛する人の面影を胸に抱くことは花咲く園だ。
心はすがすがしく、ゆったりと安らぐ。


ところが誰かのことを悪しざまに言えば、
相手はその人の目に憎い奴として映る。
そんな相手を思い出し、その姿を心に描けば、
目に浮かぶおぞましい光景はまさに蛇か、蠍か棘か、がらくたの山か。
現に昼夜の別無く花や花園を眺め、
イラムの楽園を目の当たりにできるのに、
何を好き好んでいばら生い茂る荒野、
蛇棲む地帯をうろつきまわるのか。



あらゆる人を愛するのだ。
そうすれば常に花咲く園の中にいられる。

あらゆる人を敵と見れば、数限りない敵の姿がまなかいに浮かんで、
夜となく昼となくいばらと蛇のなかを彷徨うようなもの。



さればこそ聖者がたはあらゆる人を友とする。
全ての人をやさしく見つめる。


・・・・・・・中略・・・・・・・・・・

抜粋「ルーミー語録」訳 井筒俊彦


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