イスタンブール





ここで更に後悔したことがある。



エアチケット代を安くしようとマレーシア航空にしたのだが、直行便ではもちろん、ない。成田からボルネオ島のコタ・キナバル経由でクアラルンプール迄いき、そこで乗り換える。クアラルンプールからはアラブのドバイ経由でイスタンブールに着く。

ご想像どおり、とてつもなく時間がかかるわけだ。

腰は大丈夫だろうか?と思いながら、何度も食事を重ねているうちに、やっとのおもいで着いたイスタンブール。しかし、2月の寒い時期に、南の暖かいところを適度に降りていた為か、腰の症状は快方に向かっていた。
空港に着くと独特の匂いがする。どこの国も固有の匂いがあるらしい。ちなみに日本では味噌汁の匂いだという。現在、イスタンブールは早朝で、まだ外は薄暗い。空港で軽く食事をして、インフォメーションで地図などをもらいながら時間をつぶす。ここで100ドル程両替したのだが、トルコリラの札束には驚いた。厚さが3~4センチもあるのだ。当然財布には全部入りきらない。



ここからバスで市内まで移動したが、降りたとこが市内のどこかわからない。朝は早いが人はいる。が、言葉が通じない。数字のワン・ツウ・スリーが通じないのだ。少々あせる。とりあえず歩いてみた。妙に嗅覚だけはよくなっており、中心部に向かっていることは確かだ。数キロも歩いただろうか、大きな広場にでた。



ここで休んでいると、男が話しかけてきた。「宿を探しているんだ」と言うと、「案内してやる」という。とりあえずついていってみよう。程度と値段さえおりあえばかまわない。そこから5分程歩いている時に、その男は、自称警官だと言っていた。宿についた時に、なんか手帳みたいなものをみせていたから、あながちうそでもなさそうだ。部屋を見せてもらった。シャワー・トイレ共同のシングルで、値段は日本円で約500円程。特に差し障りはないのでここに決めた。4畳半ほどの部屋に入り、背負っていた荷物を床に置き、それ以外なにもないベットに横になると、急に眠気が襲ってきてそのまま寝てしまった。
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朝起きてから今日の予定を考える。腰の調子はよくなっていた。ガラタ橋のところや、鉄道のシルケジ駅のあたり周辺を歩きまわる。近くにある海をぼうっと眺めていたらフェリーが通り過ぎていった。どこへ行くのだろう?急にそれに乗りたくなった。チケット売り場で聞くと、ボスポラス海峡をジグザグに移動して黒海迄行くのだという。面白そうだ。乗船すると中はけっこう広い。ドリンクバーもあるし、ボーイに飲み物を注文もできる。

ここで、トラブルが起きた。

実は飲み物を飲みたかったのだが、値段がわからない。その時、前にすわってたフランス人のアベックがジュースを頼んだ。2杯分で200円か。よし、私も、と同じものを頼んだのだが、ボーイから200円を要求されたのだ。なんだ高いじゃないか、と文句をいうと、そんなことはないと、とぼけられる。お前じゃ話にならん、とかなんとか言っているうちに、事が大きくなるのを恐れてか、ボーイは去ってしまった。やはり日本人はカモになりやすいのだろう。値段を確認しておいてよかった。



船はあっち行ったり、こっち行ったりしながら進んでいる。川から眺める景色は悪くない。船もさほど揺れることはなかった。終点で降りて歩く。昼は、さばサンド。海でとれた鯖をドラム缶みたいなものの上で焼いて、パンにはさんだだけだが、これが実に安くて、うまい。帰りの船までは時間がある。海が見渡せる丘の上まで歩くことにした。その途中の公園で子供たちが10人以上遊んでいたが、写真を取らしてくれと、頼んだら、みんなしてポーズをとってくれた。黒海がみえるところは眺めが良く、赤い船が走っている景色はとても絵になる。ところが、ここで落し物をしてしまった。

しかも、2つも。

一つはカメラのレンズにかぶせるキャップ。(これは後日、日本でカメラ屋に行ったら、ただでくれた) もう一つは帰りの船のチケット。なんでチケットをなくしたのだろう? とりあえずチケットのもぎりのおじさんに、「困っちゃったんだよね」という顔で話すと、おじさんはゾルバ顔をして、しゃあねーなぁ、という感じで中に入れてくれた。半日ほどかかるが悪くはない旅である。お金もフェリー代だけしかかからない。
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戻って街中をぶらついていると、また別の客引きが寄ってくる。ガイドしてくれるという。今度は観光スポットではなく、街中を案内してくれてから最後に絨毯屋に連れて行かれた。この絨毯屋は、きのうのよりはかなり小さくて、若い男が一人でやっていた。とてもハンサムな奴で、日本の女の子はこういうのに弱そうだなぁと思っていると、案の定この男のファンみたいな日本人の女の子がやってきた。少しふっくらしている眼鏡の子。試しに絨毯を見せてもらうことにした。次から次へといろいろなものを出してくる。きのうもそうだが、シルク製だという。タバコに火をつけて、それを絨毯のうえに置く。シルク製だと焦げ跡が残らないらしい。色は鮮やかだ。そのうちに私好みのデザインのものが出てきた。「これはすばらしい」と私が言うと、男はそうだろう、という顔をして言った。「ヘレケ製なんだ」 値段をきくとべらぼうに高い。大きさもかなりある。 「これでは大きすぎる」と言うと、彼は小ぶりのものを取り出してきた。「これはデザインがちゃちだ」などと難癖をつけると、次から次へとおそらくこの店にあるもの全部だしたのではなかろうか。あたりは絨毯だらけになった。一つ気にいったのがあったので、「これはすばらしいね」といってやると、彼は満足気にうなずく。 「値段は?」「250ドル」 「それでは高くて買えない!」「そんなことはない、これはヘレケ製だ」 そんなことを平行線でやっていたが、デザインのことをほめると、彼はマケはじめてきた。結局、私はそれを100ドルで買うことにした。決して高くない値段だと思う。ものは、多分悪くない。シルク製で、ヘレケの誰が織ったという証明書までつけてきた。ここで自慢するつもりはないが、値切ることに関して、私には異常な才能がある。

なぜなのか?

簡単なことである。その品物に対して執着心がないからである。買い終わった時には、その男のほうが興奮していた。おそらくぎりぎりの値段なのだろう。これならまるめてバッグの中に入れても邪魔にはなるまい。



腰の具合も良くなったので、明日はアンカラにいくことにした。が、行き方がわからない。聞いてみると、どうやらバスターミナルがあってそこでチケットを買うらしい。イスタンブールにはなんと、値段がただの市電が走っている。これに乗ってターミナルまでいけるらしい。市電の中で2人連れの若者に場所を聞いたら、わざわざ市電をおりてそこまで連れていってくれた。一人は日本で暮らしていたようで、日本語が達者だった。ターミナルでバスがアンカラへ行くことを確認すると、「じゃ、元気でねっ」と言って去ってしまった。親切な人もいるものだ。帰りもただの市電に乗って広場まで戻り、近くで食事をしてから宿に戻る。私はこの、ただの市電を気に入ってしまった。(乗り心地もわるくない) さて、次の日のバスは早い。早めに寝ることにした。
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