ベルガマ





宿を探す。小奇麗なとこがあったので、部屋はあるか?とたずねると、満室だという。中を見渡すと、そんなに混んでいるようにはみえない。断られたのだ。人をみられた?そんなに汚いかっこうではないと思うのだが・・・



代わりに泊った宿は値段が安かった。が、しかし、大変寒かった。これを読んでおられる方は東障子というのをしっているだろうか?アパートなどで、台所との間仕切りによく使われている。障子の紙の部分に、薄い硝子が入っている建具のことだ。この宿の部屋は外との境はこの障子窓一枚で、おまけに隙間もふんだんにある。シャワーは共同で、外を通って別棟のシャワー室までいかねばならない。そしてやはりというか、「湯」というよりは「冷水ではない」、というシャワーであった。暖房はもちろんなく、毛布は一枚だけ。全ての衣類と最後のホカロンを使ってもまだ寒い。なんか、ベルガマが少し嫌いになった。

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気を取り直して夜食を食べにでる。近くに食堂があったのでここにした。店にはほとんど人がおらず、豆スープなど数種類の惣菜とパンを食べる。値段は安い。味もまあまあというところ。テレビを見ながら食べてると、ひとりの男(トルコ人)が話しかけてきた。

「ミチコをしってるか?」

ミチコ? 誰のことだろうか?もしかして、美智子様のことだろうか?

考え込んでいると、どうやらここへ旅行に来た日本人の女性のことで、彼はその時しりあったらしい。自分の彼女だと思い込んでいる。いつか日本に行こうとさえ思っているらしい。彼は5ヶ国語を話せると自慢していた。その中には日本語も含まれていたが、彼の片言の日本語を聞く限りでは他の言葉もおよその想像はつく。



宿へ戻る。寝ることにした。3月半ばだというのに、寒くてなかなか寝付けなかった。

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朝食は昨日と同じとこで食べる。今朝は人が多い。日本人は珍しいのか、みんなからじろじろ見られた。



今日は荷物を宿に預かってもらって身軽にした。そのあたりはとても親切なのだ。アクロポリスまで歩くことにした。距離は結構ありそうだ。坂をのぼりはじめる道の横に、小さなアンティークのお店があったので入ってみた。古そうなのがあったが、そのなかで金色のぐい飲みほどの大きさのアンティークを買った。持ってみると重量感があって、これでワインを飲んだらうまそうだ。坂は石畳で両側に民家があるが、人通りはほとんどない。時おり荷車を引いた馬車にすれ違うだけだ。その民家も過ぎると、牧草地の丘の斜面に出た。この先、ずうーと道は迂回しながら上まで登るらしい。途中で斜面を駆け上がって、距離を縮めることにした。傾斜は思ったよりもきつい。ふと気づくと、隣にはやぎが群れている。歩いているからまだ良いが、かなり寒い。粉雪が舞い始めた。途中でまた石畳の道にでる。しばらく歩くと、浴場跡らしい横をとおってから頂上にでた。どうやら料金所を通らずに上まで来ちゃったみたいだ。



こんな季節の、こんな天気のせいだろう。旧ペルガモン宮殿の跡だというのに、人っ子ひとりいない。爽快ですらある。結局小一時間あまり散策していたが、誰にも会うことはなかった。あるのは壊れた遺跡だけだ。劇場跡からアスクレピオンが見えた。山を下りアスクレピオンまで歩く。約3キロほどらしい。



ところが、である。
途中で道を間違えたらしい。いけども到着しない。上から見たら単純にみえたのだが、どこで間違えたのだろうか?おそらく倍以上歩いてから、やっとたどりついた。ここも誰もいない。おまけに入場料も徴収していない。晴れ出したが風は冷たく、強く吹いている。ビュービューさくような風音だけが聞こえる。劇場跡は風除けになった。陽だけに当たっていると暖かい。少し日光浴をしてると、うとうとしかけた。

さあ、戻るとするか!

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街に出ると遅い昼食を食べた。同じ店で同じメニュー。ここから北に行くつもりだったが、ブルサ行きのバスは夜の9時半までないようなので、チャナッカレに行くことにする。チャナッカレはアジア大陸とヨーロッパ大陸を結ぶもうひとつの港町だ。そこからブルガリア国境のエディルネまでいってみよう。



チャナッカレまではベルガマのバスターミナルからは直接バスは出ていないらしい。ここから7キロほど北にいったところにジャンクションがあって、そこでイズミールから出発したバスに便乗させてもらうとのこと。ジャンクションまでタクシーで400円くらいらしい。その時、俺の車に乗らないか?と誘われた。彼はジャンクションを通ってディキリという街まで行くらしい。値段は100円ほど。乗らせてもらうことにした。



しかし、乗ってからしばらくして後悔し始めた。道はほとんど野っぱらみたいなところの一本道で、外を歩いている人はいない。同乗しているのは先ほど声をかけた運転手ともうひとりのトルコ人の二人。何かあったら空手ができるふりでもしようか、と考えているうちに、ジャンクションについてしまった。思い過ごしだったらしい。但し、そこはジャンクションといってもなんにもない大きな原っぱの真ん中で、道が交差しているだけだった。もちろん、建物なんかない。座れるイスなんかもない。本当に何にもないところで、枯れ草がはえているだけで360度の彼方まで見通せた。冷たい風だけがびゅうびゅう吹いている。



乗せてくれたドライバーは10分程バスが来るのに付き合ってくれたが、中々こないので去っていった。買い物をして自分の家に戻る途中だという。ずいぶん待ったがバスは来ない。少し、心細くなってきた。それにとても寒い。



1時間ほどしてからだろうか、さっきのドライバーの人が、自分の子供を3人乗せて戻ってきた。どうやら気になってたらしい。しばらく一緒に待ってくれてたが、来そうな気配がないので、一番近くのお茶の飲めそうな暖かいバス停まで送ってやると言ってくれた。



その時、バスの姿が見えはじめた。彼は一生懸命バスを止めてくれた。おそらく自分だけだったらバスに乗れなかったかもしれない。今回の旅行の中で最も親切な人であったが名を聞くことを忘れてしまった。



ベルガマは、一番印象深い街になった。

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