追記



迷路みたいな市場から出てくるといきなり右手に何かを渡された。
見てみると外国製の化粧品である。誰がこんなものを渡したのだろう。
後ろを振り返ると一人の少年が立っていて、こちらをじっと見ている。
どうやらその化粧品を買え、ということらしい。
しかし私は男でその化粧品を今必要としてはいない。

「いらないよ」と、優しくこたえる。すると少年は頭を右左にふる。

「本当にいらないんだよ」 少し強く言うと少年は更に激しく頭を振る。

しかたなくその商品を下に置いて立ち去った。

後ろを振り返ると、少年の顔はこわばって悲しそうな目をしていた。

キプロス島でのことである。

町の中をぶらぶら歩いていると一人の少年が話し掛けてきた。
しかし言葉がわからない。
じっと顔を見ているとどうやら、どこから来たのか?と聞いているらしい。

ジャポネだ。

それを聞いた少年は、ジャポネ・・・と小さな声でいい、うっとりとした目で遠くを見ていた。

体重計の商売をはじめに見たときは私も驚いた。

こんなもので儲かるのだろうか?誰が載るっていうんだ?

興味を持ってしばらくその商売を眺めていると、一人の男の人が靴を履いたままのっている。
数字を見ている少年(ここでも少年が商売をしていた)が大きな声で体重を読み上げる。
男の人は満足そうにうなずいて少年にコインを渡す。

しばらくして今度は女性がのる。体ががっしりしており横幅に貫禄がある。
左手に買い物かごを持ったまま載ると、少年は更に声を張り上げて数字を読み上げる。
女性もうんうん、ってかんじてうなずくと少年にコインを渡した。

何のための体重計か!などとゲスなことを考えてはいけない。
商売としてちゃんとなりたっているのである。


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