小人

小人

短・短



百円ショップ。家族連れ。母親に抱かれた幼女。そのくりくり目玉を見つめると、彼女もまっすぐ見つめ返し、互いにほんのり微笑み交わす。深い深い瞬間。永遠の瞬間。至福の刹那、刹那なればこその至福。たぶんまだ満足にしゃべれないだろうに、その微笑みの何たる深さ、穏やかさ・・・。まるで酸いも甘いも噛み分けて透明となった老婆。百円ショップの老賢者幼女。


(幸せ)

金曜、夕暮れのグラウンド。遊ぶ子供ら。野球に興じる人々。

フェンス際の鉄棒に若い家族連れあり。父母の間には乳母車。二歳ぐらいの女の子。天使もかなわぬ愛らしさ。お父さんが子供を抱き上げ、鉄棒を掴ませる。見守る母親。子供は掴む気もなく直ぐ放し、ただ両親に見守られて嬉しそう。三者三様に穏やかな笑顔。

私もにっこり子供を見つめ、しばし目が合う。すると父親の腕の中、子供がこぼれるような笑顔で私に両手を振る。私もためらわず両手を振る(こんなことしたことあったっけ)若い両親が穏やかに笑う。私はニコニコして歩を進めつつ、女の子の異次元の微笑みと、モミジのような両手を胸にしまう・・・。

しあわせ。

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どういうワケか突然バカ話が湧いて出て・・・

{ノリノリ}

日曜のある地方都市、ノリのいいレポーターが街頭インタビューしている・・・。

ハーイ! 中学生?高校生?中学生?高校生? アッ、中学生!分かんないネー。Oh、Yea!今日は何?エ? ただブラブラ? 立派な人間になるんだよー。Oh、Yea!

オッと、若い女性が来ました・・・。ハーイ!OL?人妻?OL?人妻?オー、人妻!!Oh、Yea!今日はこれから何すんの?アッ、同窓会!好きだった彼に再アタ~ック!!ナンチテ、Oh、Yea!

オ、今度は男性・・・。こんにちは。サラリーマン?自営業?サラリーマン?自営業?アラ~!公務員!!お堅~い!Oh、Yea! で、これからどちらへ?エ~ッ?!テレクラ?!柔らか~い。ふにゃふにゃジャン!!グッドラーック!!Oh、Yea!

今度はお父さんかな・・・? お父さん、お父さん、エッ?もうお父さんじゃない?最近、なになに、女房子供に逃げられた?Oh、Yea! で、これからどちらへ?ナント、その子に会いに?小遣いせびられてる?ニコニコしてるよお父さん。エンジョ~イ!Oh、Yea!

アッ、腰の曲がったお婆さんが来ましたね・・・。お婆さん、お婆さん、これからどちらへ?あー、お爺さんの墓参り。シブ~イ!!すぐまた一緒になれるよー。足元気を付けてねー。Oh、Yea!

オー、今度はおめかししたご婦人だ・・・。奥さん、奥さん。エッ?奥さんじゃない?!え~~!!オカマ~??Oh、Yea!で、どちらへ?オー!!彼氏とデート!!Oh、Yea!Oh、Yea!Oh、Yea~~~!!!

アレッ?今度はなんか一風変わった・・・。ハーイ、どういうお仕事?エッ?ここ数年仕事してない?!Oh、Yea!エッ?何?メーソー???What’s THAT? エッ?踊るの?笑う?座る?♪泣きなさ~い~って・・・アラアラ踊りだしちゃって。笑ってるよ。抱きつくなよ!泣いてるもん。こんどは座りかよ。・・・・・・・ま~だ座ってるし~!。 アン、モ~時間がー!!
            オーマイ、ガーー!!!



        街角レポート「アナタが主役」を終わります

                提供は

               TAHATA

               田畑農機でした

 どちら様も火の元、戸締まりをもう一度お確かめの上おやすみ下さい

         (カラーパターン画面にチェンジ)
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{爪}

寝ても覚めてもセックスのことしか頭にない高校生の洋平。やっと最近ガールフレンドができた。少々おつむの軽い女子校の真麻(マアサ)。この前何とかキスまではこぎ着けたが、その先がどうもいけない。下心で爆発しそうなある日曜日、デート帰りの夕暮れ・・・。

洋平:「今日は楽しかったよ。でもまだ話し足りないな~。ちょっと公園のベンチでお喋りして行かないか?」
真麻:「暗くなってきたからチョットだけよ。」

その後の事は・・・、夕闇と生け垣に紛れてキスよりかなり進展した、とだけお伝えしておこう。翌朝、いつもの通学路にて・・・。

真麻:「ちょっと、洋平。」
洋平:「やあ、おはよう、真麻。何だよ。恐い顔して。」
真麻:「何だよじゃないわよ。アタシ、ゆうべから膀胱炎なんだからね。」
洋平:「ああ、おしっこするとき痛いやつね。」
真麻:「他人事みたいにナニよ。アナタが原因じゃないの。」
洋平:「え?!俺が??また、なんで???」
真麻:「アナタが汚い手でアタシを触ったからでしょ。」
洋平:「え~!マジ~??俺のこの手が原因か?!」
真麻:「ほ~ら、爪が伸びてる。」

その場は何とか謝り、笑って機嫌をとってはみたものの、少なからぬショックを受ける洋平であった。


その日の国語の授業にて、教師の中田が言った・・・。

中田:「よ~し、今日は君らに川柳を作ってもらう。分かってるな、五七五だぞ。」
洋平:「先生、何について作ればいいんですか?」
中田:「自分の日常で感動したこととか、心に残ったこととか、人間生きてりゃいろいろあるだろ。それをストレートに詠めばいいんだよ。チャイムが鳴るまでに提出しない者は後日レポート提出だからな。」

国語は昼寝の時間と思って疑わなかった洋平には正に寝耳に水。ましてや川柳などという風流とは無縁のニキビ面。目を閉じ、懸命に考えれば考えるほど、頭の中は豆腐のように真っ白になって行くのだった。

ピンポ~ン、パンポン~。チャイムが鳴り出したではないか!あわてて鉛筆を走らす洋平。チャイム終了と同時に駆け込みで提出。

職員室に戻った教師の中田、洋平の作品を見て、飲んでいたお茶を一気に吹き出し、頭を振って大きくタメ息をついた。そこには、拙い字でこう走り書きしてあった・・・、


 某公園

  イチャついていて

 ぼうこう炎
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(和尚との対話A)

エゴイストが悟りたいと言ってきた。
和尚さんの答えは・・・「君にはムリ」

で、精神世界オタクが聞いた。
答えは・・・「精神世界に飽きたらおいで」

で、学者が聞いた。
答えは・・・「本を全部焼いてからおいで」

で、スピリチュアル業者が聞いた。
答えは・・・「えべっさんでも拝んでなさい」

で、哲学者が聞いた。
答えは・・・「頭のスイッチ切ってからおいで」

で、たまに瞑想する人が聞いた。
答えは・・・「せめて国民の祝日より増やしなさいね」

で、修行者が聞いた。
答えは・・・「瞑想に任せきりなさい」

で、通りすがりの人が聞いた。
答えは・・・「日々の暮らしをゆっくり、シッカリしなさい」

で、瞑想初心者が聞いた。
答えは・・・「しばらくここに居るがいい」

で、子供が聞いた。
答えは・・・「毎日お外で元気に遊びなさい。家の手伝いを一つするといい」

で、年寄りが聞いた。
答えは・・・「過去は全部忘れて、ただくつろいで行きなさい」

で、評論家が聞いた。
答えは・・・「朝意識が戻ってから1分、寝る前に1分、何も論評せずにいてごらん」

で、分かってる人が聞いた。
答えは・・・「明日はゴミの日だ。その“分かってる人”とやら出しといで」

で、瞑想しない“瞑想者”が聞いた。
答えは・・・「ウソツキは見込みナシ」

最後に、自称悟った人がやってきた。

答えは・・・「おや、今日は二人連れかね」



(和尚との対話B)

エゴイストが悟りたいと言ってきた。
和尚さんの答えは・・・「君はなかなか見込みがある。がむしゃらにガンバってみなさい。ファイト!」

で、精神世界オタクが聞いた。
答えは・・・「正に君にピッタリの世界だ。エンジョイ!」

で、学者が聞いた。
答えは・・・「君を待っていた。私の不備な点をドンドン指摘してくれたまえ。期待しとるぞ!」

で、スピリチュアル業者が聞いた。
答えは・・・「悟ったら千客万来、御殿に住んで高級外車に乗れるぞ。それにモテるしのう、頑張り給え、ワッハッハ」

で、哲学者が聞いた。
答えは・・・「ちょうど論争相手を探しておったのじゃ。よく来たよく来た」

で、評論家が聞いた。
答えは・・・「君の今生での仕事は解脱ではなく(解説)だ。シッカリおやり」

で、たまに瞑想する人が聞いた。
答えは・・・「たまにやるとはエライ、見上げたもんだ」

で、修行者が聞いた。
答えは・・・「ここはお前なんかの来る所ではない。とっとと帰れ!」

で、通りすがりの人が聞いた。
答えは・・・「興味がわいたらいつでも遊びにおいで」

で、瞑想初心者が聞いた。
答えは・・・「しばらく遊んでみるがいい」

で、子供が聞いた。
答えは・・・「毎日シッカリ食べて、外で元気に遊びなさい。宿題したか。歯みがいたか?」

で、年寄りが聞いた。
答えは・・・「ボケとるヒマは無いぞ、コノ老いぼれが。シャキッとせい!」

で、分かってる人が聞いた。
答えは・・・「よくぞそこまで分かった。君はエライ! もっと分かってどんどんエラくなりなさい」

で、瞑想しない“瞑想者”が聞いた。
答えは・・・「よくぞ瞑想が落ちるほど瞑想に打ち込んだ。君は修行者の鑑だ! 花マル!」

最後に、自称悟った人がやってきた。

答えは・・・「流石じゃ。なんも言うことないわ」
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(叱る)

近所に運動公園があって、テニスコートや野球のグラウンドがある。私は車道を避け、そこを斜めに突っ切って駅へ行く。何もない空間が気持ちいい。

ある夕方、いつものようにグラウンドを歩いていると、どこからともなく声が聞こえてくる。しかし姿は見えない。更に歩きつつ見回すも、人影はどこにもない。もうすぐ出口の階段にさしかかろうというとき、繁った木の枝に覆われた野球のベンチの上に立ち、竿を持って何やらぶつぶつ言っているオジサンが目に入った。

あー、あの人だったのかと更によく見ると、オジサン、竿を手に木の上をつついている。ぶつぶつ言いながらつついてる。聞き耳を立てると、「えーい、もう、このアホが。いっつも木に引っかかりよってホンマにー、ドアホ!」と、えらい剣幕。

ははー、飼いネコでも木に登って降りられなくなったのかと思い、歩を進めつつ見ていると、何やら白いものがハラリと木の枝から落ちた。オジサンは落ちたソレに向かって尚も悪態を吐き続ける。「ホンマにもー、このドアホ。いっつも世話やかせよって、何でオマエはいっつもそうやねん、ボケ!」

して、その落下物とは----オジサンが丹精込めたと思しき・・・紙飛行機であった。

2003年、盛夏の夕
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{準備中--哀れ難民青年の巻}

経済難の中国から海を渡って命からがら脱出してきたボート難民の19才の青年。やっとの事で横浜のとある中華レストランに潜り込んだ。言葉もほとんど分からない彼。仕事といっても雑用係り兼ドアマンである。知っている日本語は「いらっしゃいませ」「準備中です」「ありがとうございました」の三つだけ。それ以外はいつもただニコニコしているようにと申し渡されていた。ある日のこと、開店準備をしていると、短気で売ってる地元のチンピラ、竜が、厚化粧の女二人を連れてやってきた。

竜:「オイ、店開けろや。」

難民青年:「準備中です。」

竜:「腹へってんだよ。いいから開けろ。」

青年:(ニコニコして)「準備中です。」

女A:「チョット~、あんたナメラレてんじゃん。」

女B:「キャハハハー!」

青年:(さらにニコニコして)「準備中です。」

竜:「なめーは何てんだ、オメー。」

青年:「・・・・・??」

竜:「ナ・マ・エだよ、コノヤロー!!!」

青年:「アー、準備中です。」

竜、そこで完全にプッツン。哀れ難民青年、竜にドツキ回され気絶。顔面血だらけ。騒ぎを聞きつけ、店から二人が飛び出してきた。店の支配人山本と、青年を憎からず思っているチャイナドレス姿も麗しいウエイトレスのミンミン。二人は倒れている青年にすがって叫んだ。

支配人 :「閏!」

ミンミン:「彌躊!!」


・・・そう、青年の名は、ジュン・ビチュウであった・・・。
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幸多朗さんを見守る会

近くの公園に住まう初老の男性幸多朗さん。段ボールの中で暮らしてる。持ち物はバッグ一つ、アルミ鍋と薄っぺらな毛布二枚、それと何故か大量の新聞雑誌の類。最近近所の悪ガキにでも殴られたのか、顔に青あざ服に血痕。少々びっこを引いている。

噂では、元は平凡なサラリーマンだったらしいが、不況で倒産。そこへ熟年集団お見合いで遅い結婚にこぎ着けた奥さんが不倫相手と有り金全部持って蒸発。借家住まいだった幸多朗さん、何とか家財道具を少しずつ売り払って暫くは暮らしていたが、バブル崩壊後で再就職も適わぬまま、遂にサラ金に手を付け、借り入れが借り入れを産む借金地獄。とうとうある日、厳しい取り立てから逃れて見知らぬ地方都市へと逃げ延びた。

元々身寄りのない幸多朗さん、自由と引き替えに名を捨て、ミスター・ノーバディーとなり、ゴミを漁って命を繋ぐ毎日。

そんなある日、古新聞を読んでいると、ある記事が目にとまる。なんでもタマちゃんとかいうアザラシが日本中の耳目を集めているらしい。人気者のタマちゃん、みんなに可愛がられ、いつも鈴なりの見物人が笑顔で手を振ったり名を呼んだり。エサを撒く人もいたりして、数百万円のエサ代の寄付まであったらしい。青空を見上げて幸多朗さんは思った・・・

一緒に寝そべってみようか・・・。
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{ミッション・インポッシブル---不可能ミッション鈴木と田中}

売れないシナリオライターの鈴木と田中。またも安酒場で互いの構想を熱く語り合っている・・・。


田中:「で、今どんなモノ書いてんの?」

鈴木:「ちょっとしたスパイ物。」

田中:「いまどきスパイなんて流行んねーだろ」

鈴木:「いや、半分コメディーさ。まあ聞けよ。男がイチモツに国家機密データ入りマイクロチップを埋め込んで敵国脱出をはかるんだが、アクシデントで完全に記憶を喪失。行方不明になる」

田中:「そこで自国のスパイが捜索に乗り込むってわけだな」

鈴木:「ご名答! で、データはナニが勃起した時しか読み取れない仕掛けなんだが、哀れスパイ、アクシデントで完全インポになるんだな。そこで男を捜し出し、データを抜き取る特命ミッションを受けた恋人の女スパイが潜入、めでたく男を勃起させ、記憶も戻るというお話。勿論お笑い、涙、アクション、ふんだんに盛り込むぞ~!」

田中:「でもどうやって勃起させる?完全インポなんだろ?」

鈴木:「必殺フェラチオだ。女の歯に埋め込んだマイクロチップが勃起と同時にデータを自動コピーする仕掛け。女の純愛とキュートな色気で勝負したいね。ラスト近く、追手が迫り来るなか、女が涙ながらに優しくナメナメする場面が見せ場さ。」

田中:「オイ、コレいけるぞ!!!俺にも細部を手伝わせろよ。」

鈴木:「ああ、いいとも!」

田中:「で、タイトルは何だい?」

鈴木:「ミッション・インポしゃぶる!」

田中:「・・・・・・・・・・・」

鈴木:「・・・・・・・・コホン」

  ♪ジャッ、ジャ~~~~ン!(テーマ曲ラスト)
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(かの有名なミッション・インポッシブルのテーマ曲を知らないヤツは読むんじゃねーぜ、フフ)

MI-2(帰宅指令)

夕焼けが青空の三分の一ほどを染め上げた初夏のある日、勤め帰りのサラリーマンや学生達を乗せた電車の中、突然、どこからともなくスパイ大作戦のテーマが流れてくる。そう、誰かのケータイが着信したのだ。無関心を装う人々。しかし、テーマは一向に止む気配がない。オレはたまらず辺りを見回した。

すると、扉近くに立ったオバサンが何やらゴソゴソしている。大きめの手提げ袋が二つ、太い腕に食い込んでぶら下がっている。オバサンは先ず一個目に手を突っ込み、ゴソゴソ、ゴソゴソ・・・。しかし、探しものは無かったようだ。その間にも鳴り続くスパイ大作戦のテーマ・・・、

♪ ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッジャ♪ ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッジャ♪
♪ ピラリ~・ヒラリ~・パヤ!

オバサンは煮込め、いや、二個目の手提げに取りかかる。ゴソゴソ、ゴソゴソ、ゴソゴソ・・・。ややあって、オバサンの顔にかすかな光がさしたのをオレは見逃さなかった。オバサンの太い腕がソレを手提げから取り出す。と同時にスパイ大作戦のテーマが車内いっぱいに響き渡る。

♪♪ピラリ~~~・ヒラリ~~~~・パヤッ!!

ピッ。
「あ、はいはい、ワタシやけど。え? ナニ? 今? 今電車の中。え? 今夜のおかずか。きんぴらゴボウとアジの開きや。好きやろ。アンタ今どこおるん。え? 友達と喫茶店? はよ帰りや。いっつも遅なってからに。アンタがお風呂出るころにはたいがい12時まわってるやないの。お母チャンまた遅じまいになってまうがな。えーか、早よ帰んねんで!・・モ」

♪ジャッ、ジャ~~~~~~ン!!! 

              The END
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MI-3(本部確認願います)

街中にはいろんな人がいて、みんなそれぞれの日常をそれなりに必死に(或いはいい加減に)生きている。ある日、とあるビルのロビーでエレベーターを待っていると、柱の影でケータイしているオジサンの声が響いてくる・・・。

「・・・はいはい、えー、分かりました・・・・・・はい、はいはいはい、ええー・・・えーえーえー・・・。えー、はい。・・・ハイッ、分かりました。それで、先方の名称は、株式会社サンコー物産ですか、サンコー物産株式会社ですか・・・えー・・・サンコー物産株式会社。株式会社サンコー物産・・・・、い
や(株)が・・・えー、えー・・・、ですから(株)が先か・・・えーえー、はい・・・えーえーえー・・・はい・・・・えー・・・」

エレベーターの前には次第に人が増えてくる。が、オジサンのケータイは一向に止む気配なく、話の進展を見る様子もない。

「サンコー物産株式会社。株式会社サンコー物産・・・サンコー・・・えー確認なんですけど・・・はい・・・株式会社サンコー物産・・・・・・・・・えーえー・・・はい・・・あ、はいはい、サンコー物産株式会社・・・はい?・・・株式会社サンコー物産・・・あっ、株式会社サンコー物産!・・・えっ? サンコー・・・つまり・・・どっち。サンコー物産株式会社ですか? はい・・・えー・・・ハイ?・・・はい、ですから・・・」

とそのとき、やっとエレベーターのドアが開き、待っていた10名ほどが乗り込む。別れを惜しむかのようにオジサンの声がロビーに響く、「サンコー物産株式会社、株式会社サン・・・」と、そこでエレベーターがプシュ~っと閉まり、上昇を開始。遠ざかるオジサンの声。打って代わってシンと静まりかえるエレベーター内。ふと見れば、数名の肩が小刻みに震るえている。この間、しめて一分足らず・・・。

そんな、梅雨空もこっぱ微塵に吹っ飛んだ・・・21世紀・・・平成日本の逢魔が時、トワイライトなオジサンのいた風景・・・。

ジャッ、ジャーーーーン!!(MIテーマ曲ラスト部分、大音量にてエンド)


                         THE END
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MI-4(ローカルエージェントレポート・先客カップル)

散歩好きの太一さん、昨今流行りのウオーキングほどのカッコよさも気負いもなく、ふだん着で山道を一人スタスタ歩いている。今日はふと思い立って午後遅くからの山歩きだ。

道がつづら折りになって山腹をぬうように徐々に高度を上げ、ぐるりと山をめぐって眺望のいい西側斜面へと続いている。時折、木々の間から皮膚病のように広がる街並みがのぞく。見上げれば、雲間からは旧日本軍の旗そのままの陽光が八方に伸び、見はるかす天地を更に広大に見せていて、遥か遠く、かすかに光る海には船さえ確認できた。

何度もつづら折りのカーブを抜け、ここを曲がれば目指す展望スポットという最後のカーブを曲がりきったその時、突然、太一さんの目に、予想だにしなかった光景が飛び込んできた。

ナントそこには、カラスと野ウサギが仲良く肩をならべ・・・

夕焼けを見ていた。 

(ジャッ、ジャ~~~ン!)(実話)
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