勝手に最遊記

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Comouflage ―9―



「そんなぁ~・・。」やっと・・やっとお風呂に入れるって思ったのにっ!!
悟浄が笑いながら、
「いいじゃん、別に。坊さん達は、俺らに重ならないように後からから入るって言ってるし・・・一緒に入ろう~ぜ~♪」

桃花の肩に手を回した。その手を払いのけつつ、

「入れるワケないでしょっ!?あーも~・・・夜中に入るかな・・。あ、でもイイやっ!三蔵が泊まっている別棟っ。
あそこでお風呂だけ入るから、みんなは大浴場に行ってきて?」ニコニコと言う桃花に、

悟空が「三蔵と入るのか?」
悟浄が「な~るっ。お背中でも流すってか?」
八戒が「大変ですねぇ、世話係は。」
などと、好き勝手なことを言いだした。もちろん、ワザとである。

「アンタ達・・ねぇ~っ・・・!!」憤怒の余り、顔を紅潮させた桃花を尻目に

「さっ、僕ら妖怪は大浴場に行きましょうっ。」
「だなっ。」
「んじゃーね~。」
「キューッ。」
三人と一匹が部屋から出て行った。

一人残された桃花が、

「なんなんだ・・・今日は。」特大のため息を付いた。


「・・・ちょっと意地悪が過ぎましたかねぇ。」言葉とは裏腹に、クスクスと笑いながら八戒が言った。

「だーってよっ!桃花、ずっと変だし、話してくれないしっ・・。」多少の罪悪感を感じている悟空が、ムキに言う。

「確かになぁ。アイツがああだと、コッチの調子まで狂っちまう。」悟浄も首を振る。

            「「「・・・・・・・。」」」


「・・・俺っ、後で謝ろうっ!!」悟空が宣言した。
「なっ!?この馬鹿猿!!抜け駆けかよっ?」
「駄目ですよ、二人とも。・・・僕が取りなしておきますから。」


心配しても話をして貰えず、つい、意地悪をしてみたけれど・・・・。後が恐いのを思い出し、謝罪する事を心に決めた三人だった――――。





―――――――――――彗は裏庭に佇んでいた。

既に夜の帳が辺りを覆い、雲の間から見え隠れする月光だけが辺りを柔らかく照らしている。


本来ならば、ずっと三蔵様に付き添いして、風呂の支度や準備などしなければならないのだが、三蔵の不興を買い、突き放されたのである。
とても傍に行ける心境では無かった。

『大桷がお傍にいるし・・・。』そう思って、ちょっと笑った。


大桷。
不思議な人だ。
見かけは自分と大差がない。
小柄で、自らを戦闘能力などありません、と僧達に言い切った。
弱い自分を臆する事など無く晒し、尚かつ強い信念の目で僧達を一蹴した。

『羨ましい・・・。』
彼のような強さがあれば。
彼のように非力でも、心の強さがあれば。
私も・・・変われるのだろうか?

「・・・大桷、か。」小さく呟いた。




「おっ・・小坊主の彗か。何してるんだ、こんなトコで?」笑いを含む声が、彗に投げられた。

『嫌な連中に・・・。』微かに彗の顔が歪む。

酒の匂いを振りまきながら、彗の傍に近寄ってきたのは桃花にも絡んできたあの“三バカ不細工トリオ”(桃花的あだ名)である。

金剛寺の中でも素行が悪く、前僧正との折り合いが悪かったのだが今の僧正とは気が合うらしく、好き放題に振る舞っている。


「なんでもございません。・・・陳捻様、失礼いたします・・・。」お辞儀をし、立ち去ろうとする彗の腕が捉えられた。

「・・いいじゃねーか。お前も飲んでけよ?」酒臭い息が、もろに顔へ吹きかけられる。

「・・いえっ、私は結構でございます!」拘束されている腕を、何とか振り払おうとするが
所詮、大人と子供・・・巨漢の陳捻に敵うはずもない。

藻掻く彗を、後ろからもう一人が突き倒す。
危うく地面に激突しかかった彗が、手を突いて直撃をかわす。
「・・・!」
手首に激痛が走った。

地面に転がった彗が顔を上げると、下品な顔が自分を見下ろしていた。
「どうする?頓丙。」
「・・最近、町にも行ってないしな。」
「この際、男で我慢するか・・。」自分の体へと次々と手が伸びてくる。

その意味を瞬時に悟った彗は、思わず目を瞑った――――。







「冗談はソコまでにして置け。」

彗の耳に、やや高い声が聞こえた。


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