勝手に最遊記

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Position ―3―



微かな妖気。・・・小さい。しかもこの妖気を知っている?

窓へと近づき、神経を集中させる――――――・・『コレは・・アイツらの?』覚えがある。

三蔵達と一緒に行動している白竜だ。名は確か・・ジープとか言ったな。白い小さな竜。

紅孩児は逡巡した。どうする?放っておくか・・?

此処は紅孩児の別荘だった。正確には羅刹女の別荘である。

封印される前には、幼い紅孩児を連れて静養に来ていた場所であった。

静かな山の中。豊富な自然。この別荘の裏手には大きな湖があり、落ちる夕日が素晴らしく美しい。

此処に来る気は無かった。  全てが解決するまでは。  しかし、精神的疲労を心配した独角兕が
「行ってこいって!経文探しの方は俺の方で上手くやっておくからよ!」
無理矢理、紅孩児を来させたのだ。

来てみて・・・良かった。そこかしこに羅刹女との思い出があり、心に懐かしさと悲しみを抱かせるが
久しぶりに故郷に帰ったという想いが、紅孩児の心を解放していた・・・なのに。

『まさか・・こんな所で三蔵達と相まみえようとは。』やはり、無視は出来ない。

激しく降り続ける雨に、舌打ちしながら――――――紅孩児は飛竜を駆った。


「・・わっ・・わっ・・わっ・・わああああっっっっ・・・!!」・・・桃花は真っ青だった。

走るのは得意ではない。すぐに息切れがするのだ。
しかし、飛んでいるジープを振り切るには・・・死に物狂いで走るしかなく。懸命に足を進めているウチに、
もの凄い加速が付いているのに気付いた――――『コ、コレって下りっ!?』気付いた時には既に遅く。

山道を転がり落ちるような勢いで、走り抜けていく――――――「っっっ・・・ああああっ!?」
目の前に、湖の湖面が見えて来た。止まりたい・・・止まりたいっ!!涙目になりながら、必死の桃花。

されど急に止まるには、余りにも勢いが出過ぎている。先程から顔や手足に、鞭のように小枝があたる。
無理に足を止めれば――――――それこそ、足の一本でも折りかねない。

「・・・ぅあああああっっんん!!」・・バッッシャアアンンッッ・・・・大声を上げながら、湖に“落下”した・・。



「――で?三蔵サマは、どうしたいワケ?」揶揄するような口調とは裏腹に、不機嫌顔で悟浄が問うた。
降り続ける雨を避ける為・・・とりあえず手近な岩穴を見付け、其処で一晩過ごすことになったのだ。

悟浄には訳が判らない。いきなり桃花が飛び出して行き・・・捕まえようとした自分を三蔵が止めた。
先程から三蔵にどう問いかけても、答えるどころか視線すら合わせようとしない。
いい加減、我慢も限界に来ている。

「三蔵っ・・・・!」キレかけた悟浄が、三蔵に詰め寄ろうとしたのを「・・悟浄。」八戒が止めた。
「八戒?・・・っだよ!?ワケ判んねーっての!・・・桃花をどうすんだよ!?」

八戒がニッコリ微笑みながら、
「しょうがないじゃないですか。三蔵が弱すぎて、桃花を追いだしたんですから。」・・と言った。
「・・・三蔵が・・・弱すぎて?」口をあんぐり開ける悟浄。

「八戒・・・貴様・・・。」ようやく顔を上げて、視線を合わせる三蔵。殺気ばしった視線だが。
「だってそうでしょう?ご自分の精神的弱さが露呈しただけ・・じゃないんですか?」真顔でのたまう。

―――――・・・一気に。 岩穴の中の温度が、下がった。

『・・八戒ぃ。マジギレかよ・・・。』流石の悟浄も気圧される。
普段は温厚な八戒だが、他人(ヒト)に対して・・・しかも三蔵に対して、これほど怒りを表すとは。

「俺が弱いだと?よくも俺に・・「違うんですか?」更に八戒が詰め寄る。

「桃花は僕等に守られたいなんて、これっぽっちも思っていません。結果的に僕等が守ってますけど。」
「・・守るモノなんか、欲しく無ぇんだよ。」――――――失う悲しみを知っているから。

「守ってるつもり・・だったんですか?僕は、僕等は寧ろ・・桃花に守られていたように思いますけど。」
一層険しくなった三蔵の顔を尻目に、
「・・とにかく。桃花の荷物もありますし。明日には桃花を探しに出ます。そのおつもりで。」
言い放って、さっさと横になった八戒。

その八戒に一際強い視線を投げつけ、雨が降る中を出ていく三蔵。

ソレを見送って、はーっ・・と悟浄がため息を付いた。『・・・まいったな。』
キレた八戒や三蔵もイヤだが、
『・・・問題は・・・コイツかよ。』  小さくしゃがみ込んでいる悟空。

膝を抱え込んだまま、一言も言葉を発さない。

悟空は三蔵に対して、口答えや反抗などしない・・・心底、信頼しているから。
それでも、今回の桃花の件に関してはカナリ不本意なのだろう。

口も利かず、食べ物も食べず、只・・・しゃがみ込んでいるだけ。その姿が痛々しい。

『・・・桃花ぁ~・・・帰ってきてくれよぉ~・・・。』祈る想いで、悟浄が闇の奥を見つめた。

――――――――――――早く。 早く、帰って来てくれるように・・・と。


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