勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Separation―9




「ぷわぁーっ。」悟空がベッドに倒れ込んだ。横になっていると、目がとろとろしてくる。
『うわ・・・もう眠て~かも・・・。』夢の世界へと片足を入れつつ、今日の出来事を思い返してみた。

危ない目に遭うのはいつもの事・・・だが。『・・・すっげぇ、ビックリした・・。』桃花が倒れた時。

三蔵が以前、目の前で血塗れになって倒れた時と同じ様な――――――感覚に襲われた。『あんなのは・・コリゴリだ。』
三蔵が平然としていなかったら。 大丈夫だって僅かな確信がなかったら。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『暴走、していたかも知れない』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ゾッとして、金精眼を見開いた。

『何で俺は・・・・。』 強くなりたい。いつだって願ってるのに。

大事なモノ全て 守りたいのに。

前に暴走した時―――――――危うく、三蔵を殺しかけた。自分の意志で金鈷を外したのに。

金鈷に右手の握り拳を押しあて、瞳を閉じた。「・・・まだ、ダメだ。」 “まだ、強くない” “まだ、足りない” まだ・・・


「まだ、お腹が減ってるの~?」ハッと気が付けば、風呂に入っていた桃花がベッドに腰掛けている。クスクス笑いながら。
「・・・違うって。別に腹減ったとかって言ってるワケじゃねーって。」少々ムッとしつつ起き上がった。

「えー?そうなの??コッソリ隠し持っていたオヤツがあるんだけど・・。」「ぇえっ!??マジでっ!!?」
キラキラ瞳を輝かせた悟空に、「じゃじゃーんっv旅の常備オヤツvv干しイモでーすっ!食べる?」袋から干しイモを取り出した。
「っ!食べる食べる~っ・・・はっ☆」いつものように手を出し固まり、「ち、違うっ・・。」こんなハズじゃぁ~っ・・頭を抱える。

「ん?どしたの、悟空ちゃん。」カジカジと干しイモを口に入れながら、桃花が悟空の顔を覗き込んだ。
「う・・俺って悩みが持続しないヤツなんだよなぁ。」そう言いつつも、手には干しイモを握っている。

「イイんじゃない?悟空ちゃんらしくてさ。」「・・バカにしてる?桃花。」拗ねた子犬のような悟空に苦笑しつつ、
「違う違う!・・悩んで答えが出るんなら、いくら悩んだって良いけどさ・・。」よいしょっと、悟空の隣に腰掛け
「悩んでも答えの出ない事は・・・ある程度の所で、折り合い付けないとさ。ウジウジと時間ばっかり使って勿体ないジャン?
で、ウジウジしてんのは悟空ちゃんらしくないって思うから・・・。」

ねっ?そう笑って言われれば・・・『悩んでるのがバカみてぇじゃん。』何だか肩の力が抜けて「だよな~。」にぱっと破顔した。


「悩むのが似合わないと言えば、悟浄君も似合わないよね~。」「そりゃエロ河童だかんな!」「苦悩が似合うのは・・・」
「「八戒!(ちゃん)」」キャハハッと笑いあって、「三蔵は苦悩が、と言うより・・・笑顔が似合わないしねっ!」
「俺は・・ノーコメントにサセテ下サイ。」その発言に爆笑した。


それから他愛もない事を話して・・・・・・笑って。     笑って            笑って・・・・


夜の闇が―――――――・・・もうすぐ、朝日と混じり合うと言う頃。 悟空はすっかり寝入っていた。


薄暗い部屋の中。 微かに聞こえる悟空の寝息。

窓辺に背中を預け、桃花は思い返していた。


あの女の記憶――――――――“白衣の男”が見えただけでは無い。

『嘘・・・吐いちゃった。』 


一瞬、駆け巡った女の記憶に・・・・・色とりどりのステンドグラス。桂林が言っていた、東に在ると言う教会。


其処に“ハカセ”と・・・妖怪達と・・・・『信じられない・・・でも。』


まさか


まさか


・・・・・あの子が、  居たなんて。


「大桷・・・。」  胸に、手を押しあてた。











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