勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Decision―5



「・・・悟浄。貴方、何処で考え事をするつもりなんです?」・・そう、八戒が言いたくなるのも当然で。

目の覚めるような、深紅のシャツ。鍛えられた胸骨が覗いているその胸元には、銀のネックレスが飾られている。
腕や指にもゴツゴツとした銀のアクセサリー。スラッとした足には皮パンを履き、ブーツで固めている。

「昔懐かしい格好だろ?」・・・・昔。まだ、八戒と同居を始めた頃。オンナ遊びが派手で、賭博師としても稼いでいた頃の、悟浄。

「良いんじゃ有りません?・・・ちんぴらヤクザって感じで。」「お前な・・同意語を重ねて嫌味言うなよ。」
チッと渋い顔をしたが、「まっ。騒がしいトコで考え事すんのもイイぜ?雑音が大きい程、思考がクリアになるって言うか。」
「ソレは貴方だけでしょう?」「ははっ。そーかもな。」軽い笑いを浮かべて、「じゃーね~んv」手を振って部屋を出て行った。

“百戦錬磨の札付き”・・・って言われてましたっけね。あの頃は。


飄々(ひょうひょう)とした悟浄の背中を見送って、暫し過去を思い返した。

・・・・・逆らいもせず、抗(あがら)いもせず。 来る者を拒まず、去る者も追わず。


                             “生きるコトなんて、反吐がでるほど簡単” 


・・・そう言って、憚(はばか)らなかった悟浄―――――――――――

―――――「・・結構、変わったかもな 俺。」


同室になった八戒に漏らした言葉。

「・・・はい?」濡れた髪を拭いていた八戒。唐突に何を言い出すのかと・・・見れば、ボーっと呆けた様子で、鏡を見ている悟浄の姿が。

「雨が酷いからよ。・・なーんか昔のコト、思い出したって言うか・・。」ザアアア・・・窓から漏れ伝え聞こえる雨音。

「お前と出逢って。 猿や坊主と知り合って・・・。」 カチンッ。 ライターの火を付け、ハイライトをゆっくりと吸い込む。
「・・・なんつーの?生き方って言うか、考え方がさ・・・。」「変わらないヒトなんて、居ないでしょう?」

悟浄と向き合って、ベッドに腰を掛けた。
「・・僕も変わりましたよ。あの日、悟浄が救ってくれた、あの日から・・。」―――――死ぬのが怖い。 そう思える程までに。



                          犯してしまった罪は、永遠に消えない  






                       『・・・だが、お前が生きて 変わるものもある 』 





                              “幸せな人生を 歩んで欲しい”

「・・・・そりゃそーだ。永遠に変わらないモノなんざ、ねぇよな。」ククッと思い出したように笑い、
「それに?今は桃花を嫁に出すって言う野望も有るし?」「・・野望って言い方はないんじゃありません?」八戒もプッと破顔し、
「幸せになって欲しいんですよ。・・・花南を幸せに出来ませんでしたから。」穏やかに微笑んだ。

「花南の代わりに、ってか?そーゆーの、イヤがんじゃねぇ?」紫煙を吐きながら問うた悟浄へ、
「判ってますよ、桃花は。」雨音が――――・・・・「全部、判ってくれてるんです。」 雨音が、消えていった。 


―――――――「・・全部、判ってくれてる・・って言ってたな。」 

悟浄は細めのサングラスを掛けた。

日もすっかり暮れている。

賑やかな夜の町・・・・・・色とりどりのネオンが。ごった返す人の波が。 昔を思い出させる。


自分の容姿は良く弁(わきま)えている。 こんな派手な格好をして、サングラスを掛けておけば・・・まともなオンナは近付いて来ない。
“そう言う男には、そう言うオンナ”・・・・後腐れ無く遊ぶなら、こんな風体をしている方が面倒が無くてイイ。


ハイライトを銜え、「・・・・さーてと。 俺は、どうしたいんだろうな・・・。」
自らの疑問に答えようと。 悟浄の姿が雑踏に紛れて行った。













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