勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Decision―6



ハッハッハァッ・・・流石に荒い息づかいで、草むらにゴロン、と寝ころ返った。


「三蔵の・・・バッキャロ・・・・。」小声で呟いて 夜空を見渡せば、星明かりがチカチカと輝く。
この夜空を桃花も見ているんだろうか――――――――・・・・たった独りで。 

悟浄が居なくなった時とは違う。  全然、違う。

悟浄は強い 強いから、命の危険を感じることなど無かった。・・・でも、桃花は。


・・・・強いけど、腕っ節が強い訳じゃない(有る意味そうだけど)でも、守られて嬉しいと喜ぶ女じゃない。
“覚悟が決まっている”・・・・そんな感じがするんだ。いつ、死んでも悔いがないって。


「どーせ“守ってあげたいv”なんて思われるような美少女じゃないし!」そんなコト言うクセに、守られるのを良しとしないんだ。


そんなスタンスを貫くから、三蔵達だってあからさまに守るようなコトはしない。けど・・・


桃花、知ってる?


町で買いモンする時。桃花が絡まれないようにって、必ず八戒が少し後を歩くんだ。


ジープが長時間走ってる時。桃花が辛そうな顔をすると、必ず悟浄がちょっかい掛けるんだ。


登りのキツイ、山道で。 桃花がへばってくると、必ず三蔵が歩みを止めるんだ。マルボロを取り出して。


俺だって 俺だって ・・・・・絶対、守ってやるって思ってたんだ。


初めて桃花と逢った時。  すっげぇビックリした。 女なのに、身を挺して妖怪の子供を庇うなんて。

話してみて・・・面白いヤツ!って思った。判りやすいし、気が合う。年聞いて(また)ビックリしたけどな。

一緒に居て・・・つくづく、ビックリした。だって我先にって危ない真似するんだぜ? 女なのに、人間なのに。


―――――ハアァッ・・・・大きな溜め息を付いた 『・・・・どーせ、泣いてんだろうな・・・・。』


「自分の事では、滅多に泣きませんからねぇ。」困ったように微笑んだ八戒。
妙な器具を着けられて、自分達との戦闘で死んだ妖怪――――桃花がどうしても墓を作ると言い張って、埋葬した時の事。

なかなか泣きやまない、桃花の後ろ姿に・・・・八戒が呟いたのだ。


「アレ?そうだっけ?良く泣いてるような・・。」泣いて笑って怒って、また泣いて・・喜怒哀楽がハッキリとしている。
「他人の事ばかりで、泣いてるんですよ。自分の為に泣いたのは最初と・・・・あの、サクラって言う式神の時だけですよ。」

最初―――――桃花が自分の過去を話してくれた時。大桷って言う妖怪の少年の話をした時。
それと、サクラと言う式神が襲った時――――ジープで何が悲しいのか、突然泣き出した桃花・・・


それ以来、・・・・殴られたり、蹴られたり。普通の女の子なら、痛さで悲鳴を上げるような時でも。

――――――――自分達の前では、決して泣かなかったんだ。


・・・何処で泣いてんだよ  独りぼっちで。


むかむかと  歯がみして  沸き上がってくる桃花への怒り。「・・・ムカツク。」


どうせ泣くなら、俺の前で泣けばいいのに   どうせ死ぬなら(死なせないけど)俺の前で死ねばいい

寝ているうちに出て行くなんて、卑怯じゃないか。「・・・・うん、許さないぞ。」

許さない――――――自分に黙って出て行くなんて・・・・俺は、諦めない。諦めないから、桃花。

悟空の金精眼が、光を帯びる

夜空に光る、星に負けないぐらいに


「八戒や悟浄や三蔵がなんて言ったって・・・・・俺は、絶対、諦めたりしねぇ。」

ガキ扱いなんてクソ喰らえだ。俺は、俺の意志で――――――「手放すもんか。」


さわさわと、風が吹き抜けていく――――――大地色の髪を揺らし、マントを翻して。


「待ってろよ、桃花。」待ってないカモだけど でも、イイんだ。後悔だけはしたく無ぇ。


遠く、暗い夜空の奥を見透かすように・・・悟空が睨んだ。そこに桃花が居るかのように・・・・





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