勝手に最遊記Ⅱ

勝手に最遊記Ⅱ

Pain―Past-4






季節は巡る―――――――――――――それから数年後。





体の弱かった母が他界した後、向日葵の油を行商をしていた父が家に戻り。


男で一つで娘二人を育て上げた。


気だてが良くて、優しくて。美しい女性へと成長した萄花。

少々勝ち気で、明るくて。家族思いの娘へと成長した夏花。


幼なじみの小瑯は、聡明な青年へと成長した。


そして村では―――――――――小瑯と萄花の結婚話で持ちきりだった。










「夏花ちゃん!萄花は秋には結婚するんだろう?」
「おばさん!ええ、今は小瑯が行商に出てるから・・冬前にはって」
「そうかいそうかい。アンタ所も苦労したからね・・」
「あたしはちーっとも苦労してないけどね!お姉ちゃんとお父さんと小瑯が居てくれたから」

明るく笑いながら夏花は歩いて行く。




そして、人気(ひとけ)の無い場所まで足を進めて・・・・「・・・・はぁ・・」深いため息をついた。





「・・・・小瑯」その名前を小さく呟いて、「お義兄ちゃん、なんて・・呼べないなぁ・・」苦そうに、微笑んだ。










「コリャ辛いわな」「なんだ、悟浄?辛いって?」
惚けた顔の悟空に心底呆れたと言うため息を付きつつ悟空を見やり、

「おま、判んねぇワケ?たーっく、お子様以下だなお前はよ」「お子っ・・テメェ!」
場所も弁えずに喧嘩を始めようとする二人に割り込み、
「まぁまぁ。悟空?桃花・・夏花は小瑯が好きなようですね。」「ぇえっ?!」

「だーって、姉ちゃんの恋人だろっ?!」「でも、好きなんだからしょーがねぇだろ?幼い頃から一緒にいる訳だし」
「そうですね・・・彼はとても聡明ですし優しい。仕事は真面目で、かといって堅物でもない。
ああ、彼なら桃花をお嫁に出しても・・・v」
「いや、八戒。そりゃ違うだろ・・・」少々脱線した八戒に悟浄が(小さく)突っ込む。



小さい頃から傍に居て、守り、愛してくれた男性・・・・・それが、いつしか恋心に変わったとしても自然の流れ。

ただ、彼の一番近くには――――――――自分が最も愛する姉・萄花が存在していた。

自分が産まれて来るより、ずっと早くから。







「――――んっ!さぁ、お仕事お仕事!結婚式までに終わらせないと~!」



迷いも恋心も、断ち切るように。


自分を叱咤して歩き出す夏花の顔に、陰りはない。








「・・・やぁっぱ、桃花だよなぁ~」悟浄が嬉しそうに一人ごちる。




自分達が知っている桃花より幼くて。




何故か、呼ばれる名前も違うけれど。




“ああいうところ”   “こんなところ”   “あの表情”  “この言い回し”




確実に桃花が存在していた事に、悟浄達の表情(かお)が弛む。







「・・・呆けてんじゃねぇぞ、てめぇら。本題は、こっからだ」紫暗が剣呑な光を帯びる。









自分達が放り込まれた“桃花の過去”の世界――――――――――この幸せな世界が、壊される。






萄花も、小瑯も、夏花・・桃花も、“平和な向日葵の村”の村人の誰一人として、その瞬間が来ているのを・・・













其処まで来ているのを―――――――――――――知らなかった・・・・






























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