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ぼちぼちいくさ
母子密着と育児障害
何がそんなにつらいのか?それは育児です。それに毎日同じことばかりを繰り返す生活。もちろん学生だって、会社に勤めてたって、同じような生活の繰り返しです。でも育児中の専業主婦の生活は、生活の幅があまりにも狭くて、息苦しかった・・・。
一体何で?
それにそんなにまでして育てている子供に対しても、ちょっと違うんじゃないか、と感じることが出てきました。
一番感じていたのは、大人に対する尊敬の念がないこと。
私の子供だけではなく、公園や学校で接する子供たち一般に対して感じていました。
何でこの子達は大人に対して一歩引いたところがないの?これじゃあまるで友達同士みたい。
一体何で?
あれこれ育児本を読んだけれど、ぼんやりと感じていた疑問、“子供の要求はすべて受け入れてあげればよいのです。大人になっても抱っこをせがむ人はいません。欲しいというものを買ってやってたら、そのうち欲しがらなくなります”
必ずこんな風にかいてあったけど、本当にそうなんやろか?
第一、子供の要求をすべて受け入れるなんて、とてもじゃないけど不可能。抱っこと遊んでだけでもうくたくた・・・。
いくら遊んでやっても抱っこしてやっても、子供の口から出るのは“もっと”だけ。
気に入らないことがあるとすぐかんしゃくを起こして親のほっぺたを小ばかにしたようにぴたぴた殴ったりする。
スイカを切って、みんなで食べようというと、いいところから好きなだけ取って、親の分がなくても知らん顔。これはおかしいんちゃうやろか?
そんな疑問にズバッと切り込んできたのがこの本でした。
この本では、添い寝は悪、断乳は子供の自立の第一歩(なので必要。いつまでもだらだら飲ませない)、抱き癖をつけてはいけない、叱らない育児は間違い・・・と、今はやりの育児書とは正反対の意見が次から次へと出てきます。
そうかなあ・・・と思う部分もあるのですが、私がなんだかおかしいな、と思っていたこと、その原因について考えていたことで、思い当たることがあるのです。
まず、大人に対する尊敬の気持ちを子供から感じないことについて。
この原因を私は公園(にかかわらず外遊び)に親がついていかないといけないことが原因ではないかと思っていました。
子供だけで外で遊んでいれば子供だけの世界で遊べますが、そこに親がいるとどうしても、たとえばお茶を持っていって、子供が欲しがったら渡したり、滑り台をすべるのにも“は~い、すべってらっしゃ~い”などと指示したり、踏み切りしようか~、と遊んでやったりしないといけません。
子供が2~3歳くらいまでならそれも仕方ないでしょうが、幼稚園に行ってる子供にでもそんなことをし続けてたら、子供が大人を自分たちの仲間みたいに思っても仕方ないな、と考えていました。
この本ではそれをもっと突き詰めて、なんでも受容する育児=子供のワガママをきく育児(につながる)なので、親が子供の言いなりになってしまい、“子供が王様”状態になる。そんな子供に大人を尊敬する、大人の言うことを聞く気持ちなど生まれるはずがない、と主張しています。
これは私がぼんやり感じていたことと一致します。
断乳については善悪についてよくわからなかった(考えたことがなかった)のですが、今日育児サークルがあって、そのときに三人目を断乳したばかりのお母さんが、
“断乳はつらかったけど、断乳したら子供の顔つきまで変わって、一人でできることはやり始めた。自立したって感じがはっきりした。いつまでもおっぱいをあげてると、嫌なことがあるとすぐおっぱいに逃げ込んでしまうけど、断乳するとそうは行かないからかな”という意味のことをおっしゃたのです。
まさに同じことがここには書かれていました。
添い寝もおっぱいも、いつまでもやってると大人が子供に振り回されてしまう。子供は大人と違うんだ、大人には許されることでも子供はダメなことがあるんだ、というのを教えるのが、添い寝をやめること、つまり時間が来たら子供は寝ないといけないというしつけをすること、と書かれてありました。
このところずっと、大人と子供は違う。大人はえらいんだ(えらくない大人ももちろんいるが、基本として)ということをどうすれば教えられるのだろう、と悩んでいた私は、はっとしました。
・・・・
反論からはじめたいと思います。この本では、昨日書いたような、大人を尊敬できない子供や、今流行り(?)のキレる子供、やる気のない子供を育てたのは、大人(もちろん特に母親)の甘やかし育児に原因の多くがある、と主張しています。そしてそんな甘やかしを可能にしたのは、暇をもてあましている専業主婦の存在だと主張します。
母親はどうあるべきか?
この本でも、目標は今までの育児書に書いてあるような“すべて受け入れてくれるやさしいお母さん”です。
ただし、ずーっと家にいて一日中子供の世話をしている母親にはそれは無理。なので理想は、一日中働いて子供といられるのは寝るときぐらいという母親が、布団の中で(こういう場合なら添い寝OKらしい)子供をかわいい、かわいいとひたすらかわいがる、そういう母親です。早い話が野口英世の母ですな。
たくさんの友達と自然の中で外遊びをしていれば、その中でルールやマナーも学ぶし、いろんなことに対する意欲もわいてくるので勉強もそれなりにするはずなので、お母さんはただひたすら、そうかい、そうかいと話を聞いていて、ここぞというときのみびしっと言うことを言うだけですむ。
うん、確かに。私も出来るならそんなお母さんになりたいし、そんな環境に子供を置きたい。
でも、そんなこと、今の日本で可能でしょうか?
私は不可能だと思います。この本では“それでも専業主婦がいい?”とまで書かれていますが、私はそんなに単純な問題ではないと思います。
確かに専業主婦が子供の世話をしすぎて子供をだめにしている、というのはある程度納得がいきます。昨日書いた育児サークルでも、小学校3年生にもなってコップと冷茶ポットを出しただけだと、“(コップに)ついで”と言う子がいるという話が出ました。家でも“こぼすといけないから”と、お母さんがついでやってるそうです。
でも、母親が働けばそういう問題は解消するのでしょうか?
面倒の見すぎはある程度解消するでしょう。しかし、自分が専業主婦だから言うわけでは決してありませんが、根本的な問題は、解決しないと思います。
今の日本の車社会、および“ヘンな人”が一杯いる状況では、小学生でも“遊んどいで”と子供だけを外に出すことはほとんど不可能です。
学童保育に預けてもたいていは5時で終り。それから親が帰ってくるまでの間、外へ行ってはいけないと言われた子供たちはビデオ漬け、ゲーム漬けになる可能性があります(あくまで可能性です。私の周りの学童保育の子供たちは、結構たくましく、夕方家の周りで友達を見つけて遊んでます)。
学校がある間はそうでもなくても、特に学童保育などの年齢を過ぎた子供の場合、夏休みなどはどう過ごすのか。
私の友人しろくまさんも働く母親ですが、夏休みについては本当に頭を痛めています。
お金をどれくらい持たせるべきか?緊急用に携帯電話を持たせるべきか?勉強はどうすればいいか?悩みの種はつきません。
家ではビデオ漬け、ゲーム漬けになっていて、淋しい思いをさせて可哀想だからとお金やケータイ、パソコンなどを欲しがるままに与えられた子供が、立派な子供になるのでしょうか。
注: もちろん私は働く母親の子供の多くがそうなる、といってるわけではありません。親が働いてたってそういう問題が起こってくるといいたいだけです
野口英世の母になるには、お母さんが子供たちの目の前でくたくたになるまで働く必要があるように思います。
たとえば家の1階の食堂を両親が必死に切り盛りしている・・・というような。子供が何かあれば、おかあさーんとすぐ会いにいけるような職場。そしてそこでお母さんは働いて大変なんや、と子供がわかるような仕事。それなら野口英世の母も夢ではないと思います。
専業主婦でいうならじいちゃんばあちゃんの世話をして、赤ん坊と3才、5歳の三人の子供の世話もして、家族全員の食事を三度三度作り、実家の親の面倒も時々見に行く・・・というような生活をしていれば、子供はちゃんとわかって、ほっといてもよい子になるでしょう。東京にいた頃の友人がこういう生活をしていました。
でも、それ以外のケースでは・・・野口英世の母はちょっと難しいのではないでしょうか。私はそう思います。
野口英世の母が無理ならどうしたらええのんか?この本では書かれていません。ただしつけのポイントについて書かれているだけです。
この本の著者は女性です。専業主婦へのきつい文章が目立ち、それに対する疑問も書きました。でも・・・私には著者の気持ちも少しわかる気がします。
著者は私より30才近く年上です。その頃、働く母親への風当たり強さは今の比ではなかったと思います。
ちょっと子供に何かあると、“あそこは共働きやから・・・”そう言われただろうことは想像に難くありません。今だってそうです。
長崎の御手洗さんの事件で、週刊誌の見出しに“加害者女児の家は共働き”という見出しがありました。中身は読んでいないので断定は出来ませんが、私はこの見出しの文章から、“母親が働いていなければ、加害女児の気持ちを察して事件は防げたのでは・・・(だから母親は家にいろ)”というメッセージを感じました。
働いているお母さんは悔しい思いをなさっているのではないでしょうか?
多分、そういうこころない言葉を、著者もイヤというほど専業主婦から受けたのではないかと思うのです。私の母も専業主婦でしたが、働く母(学校の先生も含め)への批判はものすごかったです。
そういう悔しい思いもこめられた専業主婦への反論、と思えば、確かに一理ある・・・とも思えます。
田中喜美子著 講談社+α新書
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