~*卒業TIME*~

~*卒業TIME*~

2006.10.22
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部屋を出て椅子に腰掛けた。
―エイズ―
まだ、信じられない。わからない。何が起こったのか。亜季の病室に行くのさえ忘れていた。
―魁の手紙―
汗で少し湿っていた。それに握り締めていたせいかくちゃくちゃになっていた。
「そういえば、何で俺宛なんだ?」
亜季に直接送ればいいのに・・・。不思議に思いながらも魁からの手紙を読むことにした。


やっと、こっちにも慣れてきました。
いろいろ話したいことがたくさんあるけど大事なことを言わなければいけません。
こっちで仕事中に倒れました。過労かと思っていた。けど、検査したらあることがわかった。俺、病気にかかってた。エイズという病気に。全然知らなくてびっくりした。自分でも気付かなくて・・・。たぶん、俺の両親からだと思う。それしかない。俺の母親は俺を捨てた。その理由がわかった気がする。俺がエイズで、自分もエイズになったから―
俺の父親誰かわからない。母親はいろんな男、つくってたから。生まれたときにはもう、エイズだったんだよ。今まで、病院なんてろくに行ったことないから気付かなかった。
・・・俺のことはいいんだ。ただ、亜季のことが心配で。もし、亜季に感染してたら・・・。俺、亜季を病気に・・・。俺の命は残り少ないと思う。体がやばいんだ。なんかわかる。
悠、俺はもう亜季になにもできねぇよ。好きだった。愛してる、けど、好きな人を病気にしてしまったなんて・・・最悪だよ。俺はどうなってもいい。ただ、亜季は・・・亜季は助かってほしい・・・。悠、頼むよ。結局、悠に頼むことになった。ごめん。
後悔ばっかだ。自分の人生を呪いたい。俺は人を好きになっちゃ駄目だったんだよ。
亜季、悠、ごめん。
ごめん、

こんなことなら、亜季と結ばれなくてもよかった



放心状態のまま、何もできなくなっていた。手紙の文面をずっと見つめていた。

―やっぱり―
魁がエイズだったのか・・・?しかも、残り命が少ないだって?
二人の大切な友達が病気―そんなとき正気でなんていられるわけがない。
亜季のところに行かなきゃ。とりあえず、足を動かそうとした。でも、力が入らない。
「亜季・・・」

「悠!私、どうだった?」
亜季は起きていた。不安な顔をしていた。駄目だ、悲しい顔をしてたら。
「亜季、妊娠だよ。」
「妊娠!?魁の子どもが。」
お腹を嬉しそうにさする亜季を見て心が痛んだ。
その子はエイズかもしれない―
「男の子かなぁー女の子かなぁー。あっ魁に報告しないと!ねっ悠、」
亜季に、どう言ったらいいんだ?
「悠?」
「ごめん、なんだった?」
「魁に、報告しなくちゃいけないね。」

「亜季に言わないといけないことがある。聞いて、」
「何?」
何から言えばいいんだ?
「悠?どうかしたの?」
「魁・・・病気にかかってるらしい。」
「ホヘッッ?」
意味がわかっていなかった。
「魁から今日、手紙が届いた。」
「手紙?」
「これ、」
悠は亜季に手渡した。自分から言うより、魁から言った方が・・自分で言うのは荷が重い。それに、辛いよ。

亜季が手紙を読んでいる間、ずっと沈黙が流れていた。
「魁、死んじゃうの?」
手紙を読み終えた亜季の第一声だった。
「わからない。俺だって・・・さっき読んだばっかで・・・。亜季だって・・・。」
「私、エイズになったの?」
「医者はそう言ってた。」
「そっか・・・。」
それ以外何も言わなかった。
「亜季・・・」
「魁、後悔してるんだね。私と結ばれたこと。」
「えっ」
「手紙の最後に『こんなことなら、亜季と結ばれなくてもよかった』って。それが悲しかった。」
「亜季」
「私は後悔なんて絶対にしないよ。たとえ、魁のせいで病気になっても。好きだから。しょうがないよ。」
優しい顔。亜季の強さに惹かれていくよ。
「この子もエイズになるのかなぁ?」
「亜季・・・」
「多少は知ってる。母子感染するんでしょ?エイズって。」
「うん、」
「嫌だな。」
少ない感想・・・。亜季の心の中はどうなっているのだろう・・・?
「亜季、産むのか?」
「悠、何聞いてるの?産むに決まってるじゃん。」
当たり前のように亜季は言った。
「でも、もし産まなかったら長く生きられるかもしれない。」
子どもを産むのには体力がいる。寿命は縮まる。
「産む。絶対に産むから。魁と私の子ども、たとえ反対されても産む。私の命は短くなってもこの子は生きてくれるから。この子が大きくなる頃にはきっと、病気を治してくれるよ。」
亜季の決意は固かった。

亜季、どうして君はそんなに強いの?
本当は魁に会いたくて会いたくて仕方がないのに・・・
弱さを決して見せない
俺は別に死なないのに辛かった
亜季と、魁を同時に失うことが恐怖だった
俺はどうしたらいい?
死なないでくれ
魁の描いた絵の前でずっと泣き続けることしかできなかった





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Last updated  2006.10.22 12:24:10
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