ぬちぐすい。

ぬちぐすい。

女の子





~ 女の子 ~




女の子がいました。
女の子には好きな男の子がいました。



女の子はいつもその男の子の心の中を知りたがっていました。

「あの人は私のことどう思っているのかしら・・・」
「あの人の心の中を覗いてみたい」

・・・いつもそう思っていました。




ある日 女の子はへんなおじさんに会いました。
そのおじさんは薬屋さんでした。
おじさんは女の子に言いました。

「君は恋のことで悩んでいるね」

「この薬をあげよう。使用上の注意をよく読んでね」


そういって小さな薬をくれました。

薬




ー使用上の注意 ー

「この薬は人の心が読めますが・・・ 
一粒 薬を飲むごとに10年寿命が縮みます」


女の子はすぐさま薬を飲みました。
命が10年縮みます。

「いやな日だなぁ」
「早く帰りたいなぁ」
「何 食べようかなぁ~」

みんなの心が見えてきます。


薬の効き目はとても早いのです。
でも切れるのも早いのです。

女の子はもうひとつ飲みました。
命が10年縮みます。

男の子のところに行きました。

「英語 嫌だなぁ~」
「家に帰ったらギター弾こう」

楽しい。楽しい。
もうたまりません。





女の子は もうひとつ もうひとつ・・・
命が縮まるのも忘れて飲みまくります。



薬が最後の1個になってしまったとき
そして 最後の1個を飲んでしまったとき
・・・女の子は気づきます。





男の子の心はわかるけど 

自分の心は届かないこと。

自分の心は届かないこと・・・。








女の子は そのまま もう動きませんでした。








<終わり>




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