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いわゆる日露戦争ではなく、第二次世界大戦終戦前後の樺太の状況を書いた小説。ロシア兵から逃げる際の親の子殺しや、移住してきたロシアの少年たちとの対決など、樺太での特異な体験を子供の視点から書いた点は評価できるし、古臭さもなくよくまとまっていて読みやすい。ストーリーはわかりやすいものの、少年たちの心理表現としては不十分。少年たちの不安を「不安」と書くのではなく、別の表現に昇華するのが作家の腕の見せ所だ。他にも描写で年配の作家によくみられる括弧やかぎ括弧の多用が目に付くので、そこは自然な地の文章として落とし込むように工夫するべきだろう。★★★☆☆
2008.04.30
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医師が主人公の短編集。ヘミングウェイ風の釣りの描写や先に死ぬものと残るもの寂寥的な死生観を自分のスタイルとして描いている。風景描写にも無駄がなく、かつ叙情的で効果的な言葉遣いができている。何よりも医師と患者にリアリティがあるのがよい。欠点があるとすればどの短編も見慣れた感じがあることで、オリジナルの技法やテーマに挑戦してほしいところだ。★★★★☆
2008.04.30
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病人の短編集。人の死をテーマにするにしても、自殺、病死、事故死、殺人、安楽死、脳死、不老不死などいくつかテーマがある。この作者は病死や事故死をテーマにしつつも、病気に対する考察が不足していて、医師のコメントも聞きかじったようなものばかりで医師という存在にリアリティがない。生きている人間の描写にさえリアリティがないのだから、死という抽象的なもののリアリティも表現しきれていない印象。病気や死を扱うジャンルの小説としては元医師の小説家の南木佳士に数段劣る。しかし一番の問題は作者の医療知識の不足よりも、小説として演出する描写技法がないことだ。医療の描写にリアリティがないならせめてそれ以外の部分で補ってほしいのだけれど、それさえもないのでつまらない。★★★☆☆
2008.04.30
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男二人女一人の田舎での生活を書いた青春小説。三角関係に発展するというオーソドックスな内容で、時間の処理も下手。冒頭の小学生の頃はエピソードが羅列してあるだけで、ストーリーとしてまとめ切れていない。わざわざフクロウにつつかれたエピソードを冒頭に持ってこずに時系列順に書いたほうがまし。暴力親父と奔放な少年という構図はハック・フィンと重なるものの、性の要素を入れることでただのわんぱく物語とは違った仕上がりになっている。見所は高校生になって三角関係になり、嵐と性の目覚めを重ねる描写の辺り。ベタな技法だけれど他に技法らしき技法がないだけによく栄える。しかし最後で失速して、登場人物の病死と事故死で物語が終わる。作者が死によって青春時代の物語を閉じたいのはわかるけれど、作者のナルシズムで殺される登場人物はたまったものじゃない。長い人生の中で青春時代をどう位置づけるかというところまで書いてこそちゃんとした青春小説といえるだろう。いろいろ問題はあるにしても作者の表現しようという意欲や迫力は伝わってくるので、そこは新人らしく評価できるし、大御所のやっつけ仕事の小説よりは読み応えがある。★★★☆☆
2008.04.30
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若者の生活を描いた短編集。中学生向けに書いているのであれば納得できるが、大人向けに書いているのであれば文章もストーリーも稚拙な内容である。若者の生活を描くという筆者の執筆スタイルはわかるが、ただ若者を書くだけならば小説でやる必要はなく、街の若者を眺めればすむ話。小説にするには描写やテーマに工夫が足りないという印象。ただ最後の老婆が同居の孫の寝袋に入る短編はユーモラスでよい。★★★☆☆
2008.04.30
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ひきこもり少年が自分とトキの孤独を重ね合わせて、トキを殺して世界を変えようとする話。トキについての知識はウェブサイトからの引用で、引用部分は小説の世界に溶け込んでいないが、それがひきこもり少年の偏屈な視野をも表しているのだろう。データとしてパソコンの画面に現れる世界のリアリティのなさや主人公の中二病具合はそこそこ表現できていると思う。しかしそうであるがゆえにストーリーの単調さが目立つ。プロットはただトキを殺すために準備して実行に移そうとして失敗するというだけで、予想外の展開というのもない。主人公が日本のトキの絶滅に自分の孤独を重ね合わせたあげくにトキが繁殖をやりまくりなのに嫉妬するなら、自分も中国人とやりまくるという発想くらい出てきそうなものだと思うけれど、作者はそういった可能性を登場人物の視野の狭さと初恋ネタで片付けてしまう。しかもトキに関する知識のコピペが度々出てきて、ストーリーが中断されてしまうのも退屈さにつながる。描写も外面描写しかなく、主人公への感情移入もしにくい。インターネットの軽薄さを出すためにあえて作者が淡白に描写しているということも考えられるけれど、もともと小説なんてフィクションなんだしそこまでメタフィクションを意識したらかえってつまらなくなるだけだろうし、トキという主題からもずれる。ということはただ描写に工夫がないだけのような気がする。読者のイマジネーションを喚起させるポエジーがこの小説にはない。読み終わった後の感動も感慨もない。ウェブサイトを読み流しているような既視感があるだけで、読んでいてもわくわくしない。★★★☆☆
2008.04.23
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女性用下着を身に着ける中年男性の話。娘に女性用下着を入れたかばんをみつけられたことがきっかけで仲直りするけれど、問題解決の為に本人が努力したり苦悩したりしているわけではなく、水戸黄門の印籠のような感じで開き直って下着姿をさらけだしたら問題解決となるというのはご都合主義的展開すぎる。途中に出てくる女装クラブみたいなエピソードも主人公の家族の問題とはあまり関連がなく、ワケアリで云々というありふれた展開になっている。作者が内容盛りだくさんにしたつもりでも、小説の主題が散漫となって逆効果になっている。★★★☆☆
2008.04.23
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子供の頃に虐待された男が立ち直ろうとする小説。虐待された児童が大人になったときにどうなるのかということを描いたのはニッチな目の付け所で、小説の主人公としては物語を展開しやすく都合がよいと思う。しかし自動虐待はニュースで多く報道されていて既視感のあるテーマで、不良に絡んだりタクシー強盗にあったりする辺りは退屈に感じてしまう。なんらかの技法を使うか、綿密な取材をするかしてリアリティを演出してほしいところだった。★★★☆☆
2008.04.15
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複雑な家族関係を書いた短編集。フォークナーに影響を受けているといわれているが、家族間の愛憎はフォークナーの小説に比べて小ぶりな印象で、技法としても意識の流れのように大掛かりなことをやっているわけではない。男、兄、彼という抽象的な呼称が使われていて主人公と他の人物の関係が曖昧なうえに、主人公の親の婚姻関係がわかりにくい。人間関係のわかりにくさ自体は人間のしがらみを表しているので欠点というわけではないけれど、かといって小説として面白いわけではない。他の小説と組み合わさって作者の経歴が反復されることで面白さが増すタイプの小説だと思うので、短編の『岬』だけを読んでもあまり面白みがない。★★★☆☆
2008.04.15
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家政婦が記憶が80分しかもたない老人男性の世話をする話。目新しいのは小説の中に数式が出てくる点だが、後半は野球の話が中心になってしまい、そこからは老人と子供が仲良くなって云々というありきたりの展開になる。小説の構造はオーソドックスで、技法としてはこれといった見所がない。地味に取材をして地味に仕上げたという印象。★★★☆☆
2008.04.03
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もてるけれど恋が長続きしないニシノユキヒコの様々な恋愛の短編集。女性からの視点で物語は展開し、最初の数篇はニシノの過去が徐々に明らかになっていく面白みがあるが、途中からは女性がニシノに恋するけどだめになるというワンパターンの展開になっていてダレる印象。★★★☆☆
2008.04.03
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