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貧しく育った女が一躍有名女優になり、言い寄る男を破滅させながら放蕩をつくす話。最初の場面に登場人物の固有名詞が一挙に出てくるのは名前が覚えにくくなり、ナラトロジー的に悪手に思える。自然主義特有のやたらと長い描写があるものの、せっかくの長い話が伏線として生かされておらず、ただ誰と分かれて誰と付き合ったということが続くだけで飽きてくる。描写の視点が固定されておらず、人物描写に偏りがあるのもつまらなさの一因。それに中盤から終盤にかけて男たちがナナとかかわることで次々に破滅していく様子が描かれるものの、ミュファ伯爵以外の人物は中途半端な存在感しかない。無駄にエピソードが長く、競馬の場面はナナの周辺の描写がやたらと長い割りに大金を賭けた男についてはほとんど描写されないままあっさり焼死したりして、ストーリー展開のバランスが悪い。最後の部分だけ視点がナナから離れてロシアに行ったらしいという噂話になるのも、ナナを象徴的存在に仕立てようとして急に比喩が多くなるのも、せっかく長々と悪行を積み重ねたナナの存在感がなくなってしまい技術的に失敗している印象。ナナが貧乏から這い上がって金持ちを破産させることで復讐を果たすというテーマは理解できるものの、なんで金持ち連中がナナに破滅するまで惚れ込んで執着するのかというナナの魅力が理解できず、テーマありきのストーリー展開のように思えてしまう。★★★☆☆
2008.11.21
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ひねくれた女性の話。デビュー作の他2編。男のシモネタや女のえぐい部分をあけすけに書くことによる民度の低さにリアリティがあってよい。干渉したり無視したりする田舎の人間関係のしつこさの裏にある弱さと、周囲と距離をとって生きようとする主人公の芯の強い生き方が対照的で、何気ない日常を書いているようで情緒がある物語になっている。構成が甘いように感じられるものの、人物の行動や思考の描写のバランスがよく読みやすい文体なのは評価できるし、作者はひねくれた女性の視点で人間関係の微妙な愛情を描くスタイルを確立している印象。短編としてよくまとまっている。★★★★☆
2008.11.19
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ぐうたらな亭主が仕事を転々とする話。主人公が金がない現実を突きつけられて右往左往する様子が延々と続くだけで、ストーリーに起伏がなく飽きてしまう。作者の実体験を元にしたフィクションと思われるものの、中途半端なフィクション具合でリアリティにも面白みにも欠ける。書評だと堕落の美学として紹介されているけれど、美しくなくただ見苦しいだけでこれは美学ではない。堕落をテーマにするにしてもテーマの追求不足の印象。★★★☆☆
2008.11.19
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人間が目的に向かう仕組みや自由についての思想をわかりやすい言葉で書いている。古典や哲学者からの引用は多岐に渡るので教養がないと理解しきれないけれど、それでも他の哲学書に比べて素直な文体がよみやすい。★★★★☆
2008.11.13
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サラリーマンや青年を主人公とした短編集。文体に対しては意識的に変化させていて、いち市民の日常を効果的に演出しており、それぞれの小説で違った見所があるのがよい。欠点があるとすれば、話が小さくまとまっていて社会的背景や思想が感じられず、箱庭的になっているところ。★★★★☆
2008.11.13
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頭に猿が乗っている幻覚が見えるジイサンの話。ジイサンは老いを嘆きつつ他人の相談に乗る役割しかしておらず、ジイサン自身の思考がみえず、主人公として不適格。息子の嫁に欲情するというテーマも特に目新しいわけでもなく、同居について掘り下げられていない。頭上の猿が物語中で異化や象徴としての小説的役割を果たしておらず、存在意義が不明。猿が伏線として機能しておらず、終わり方も唐突で強引。★★★☆☆
2008.11.13
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戦争中に占拠された町から逃げる旅で、太った娼婦と尼たちが同行する話。敵兵と寝る様に言われて断り続ける愛国心がある娼婦に対して、他の人たちは拘留されるのがいやだからと敵と寝るようになだめすかしたあげく、寝たとたんに馬鹿にするという人間の利己的な卑しさをよく描いている。プロットも人物描写も秀逸。★★★★☆
2008.11.06
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金遣いが荒い地主が桜の園を売らなければならなくなる話。自ら働かずに他人から搾取した金で贅沢して生きてきた地主が自慢の桜の園を元農奴の商人に買われるというクライマックスには零落する人と出世する人の双方の感慨があり、時代の移り変わりや人間性をよく表現している。人間同士のいさかいなどの大きなプロットの変化があるわけでもないので、見方によってはどうでもいい会話ばかりに感じてしまうのが欠点。★★★★☆
2008.11.06
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でたらめに振舞いつつ患者を治す精神科医の話。主語を省く文体で、主に患者側の視点から物語を進めることで精神科医の破天荒さを表現している。登場人部は個性をつけて書き分けているものの、それらは設定上のステレオタイプなキャラクターにすぎず、登場人物固有のリアリティはない。本来は独力で克服するべき問題を精神科医を交えたコメディにしているだけで人間の心理を書いているとは言えず、また短編によっては精神科医が出てくる必然性もなく、展開がパターン化されていて先が見えるつまらなさがある。★★★☆☆
2008.11.06
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家紋を描く上絵師が数十年ぶりに女性と会う話。文体がぶっきらぼうで、主語と述語の関係がわかりづらく説明不足な書き方。意図してやっているというより細かい文法の技術的な処理が下手なのかと思う。家紋の違いや針の混入などの職業ならではのプロットが絡むのはよい。久しぶりに女性に会ってかつての恋や別れの原因が明かされるというオチは短編として効果的なものの、それゆえに短編集でこればかりやるとオチだけが強調されてワンパターンな印象になる。一つ一つの短編はきちんとまとまっているものの、短編ごとに主人公が変わっているのにどれも人物像が同じで、職人肌の男性と凛とした女性しかでてこず、文体にも変化がないのもよくない。★★★☆☆
2008.11.06
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少年少女の日常を書いた話。少年少女を主人公にしていても、今流行のレイプだの流産だのという携帯小説とは逆を行くほのぼのした内容。一人称で主人公の幼い思考をよく表現しているのはよいけれど、人生や社会にに対する思想のリアリティがあるとまではいえない。またストーリーらしいストーリーがないのはこういうスタイルの小説特有の欠点ともいえる。4つの物語で文体があまり変わっておらず、はっきりした書き分けがないのでどれも同じように感じてしまうのはよくない。★★★☆☆
2008.11.06
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高校の時の男性教師に恋をする女子大生の話。最初に演劇のために主要な登場人物が一挙に登場するものの、人物の書き分けができてなく、会話も描写も単調で変化がない。教師も年齢の割に幼稚すぎる。安い居酒屋の飲み放題ででてくるブランデーのような薄い内容。もっと書くべき内容を絞って面白さを凝縮させるべき。デビュー作では長所だった冗長さが逆につまらない原因になっている。主要な人物は主人公と教師と恋人だけで、他の登場人物をプロットとして生かせていない。女子高生のレイプ自殺というのも安易。それに誰がどの音楽や映画が好きだということにこだわっているものの、それが登場人物の内面を表現するまでに至っていない。こだわるならとことんこだわれば面白いけれど、中途半端だからただの無駄な情報にすぎない。中途半端といえば最初の演劇の話はどこにいったのやら、終わりのほうには演劇もなにも関係ないただのうだうだした恋愛小説になっている。★★★☆☆
2008.11.06
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