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歌舞伎町で流しの仕立て屋をする家出少女の話。主人公の一人称の文体で、私は○○と冒頭で自己紹介する古典的な物語の組み立て方。この一人称のスタンスが中途半端で、物語における現在はいつなのか、なぜ主人公は語るのかという物語論上の疑問点は未解決のまま。文章はところどころ過去形になったり現在形になったりして、登場人物の自分語りに徹し切れておらず、そのぶんリアリティに欠ける。純文学としてみるとナラティブの技法に問題があるけれど、それを無視して中高生向けのエンタメとしてみればユーモアたっぷりで上等の出来栄え。★★★☆☆
2009.08.31
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表題作のほか短編集。人間関係の微妙な気まずさを描きつつ、ストーリーのはずし具合に作者ならではの感性が出ているのはよいものの、ナラティブが弱い。一人称にしても、三人称にしても、「私」が主人公の名前に変わるだけで文体の変化がほとんどなく、誰の視点で物を見ているのかというのがまったく意識されていない。口語調による簡素な文章が安定的にある程度のアクチュアリティを保証する一方で、それが限界となってさらなるリアリズムを表現し損ねている。身近にこんな人いた、こんなことあった、といった浅い共感はできるものの、それ以上の洞察に踏み込まないまま物語は終わる。また登場人物に売れない小説家や編集者が多く、肩書きにリアリティがなく人物造形が薄っぺらいのが難。★★★☆☆
2009.08.31
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レイテ島で上等兵に石集めを教えてもらった男とその息子の話。三人称による文体。父親の戦争体験と次男の革命運動を重ね合わせる構造や時間の処理は技術的に成功しているものの、前半は父親が主人公なのに、後半になって次男の話が展開し始めると読者の感情移入の焦点がぶれてしまうのでよくない。また悲劇的題材なのにカタルシスがないのが欠点。また過去形による静的な描写が多く、戦争という古い題材を扱うからといって文体までが古臭くなるのは臨場感を損ねていてよくない。筆致は安定しているものの、時代の移り変わりが速く、物語における現在・現実がどの時代なのか不明なうえに説明的すぎるので登場人物に共感できないし、そのぶん最後のオチが作為めいて見えてリアリティを損ねてしまう。技術的な試みは成功しているけれど、ミステリー以上純文学未満といった中途半端さで、内容は物足りない感じ。★★★★☆
2009.08.27
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表題作の他、短編集。動物や星の擬人化をベースにした短編は親しみやすく、ウィットもある。作者の知識の裏づけもあり、技法も凝っている。「オツベルときたら大したもんだ」の反復や、オノマトペによって面白い日本語のリズムがあるのもよい。どの短編もオチが弱めなのが残念なところ。★★★★☆
2009.08.25
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豊胸手術をしたい巻子と生理について悩む娘の緑子が巻子の妹の夏子のところに上京してくる話。夏子が関西弁でつらつらと描写する文体で、途中に何度か緑子の感想が入る。主人公は姉と姪を傍観しているだけで、主人公なりの思想がみえないので主人公としての存在意義が無い。また、関西弁の会話調で描写されるので、描写が読者の印象に残らないまま流れてしまうのはよくない。文飾としては乳、生理、精子等に関連する暗喩を多用していてそれ自体はよくできているものの、リアリティを損ねるくらいにあざとさが目立つ。こういう暗喩を使うのなら、主人公=語り手という構造にするべきではないだろう。ストーリーはオーソドックスに書けば十分読み応えがあるものになっただろうけど、工夫しすぎてストーリー自体のよさが損なわれている。★★★☆☆
2009.08.25
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サルトルの論文や対談の寄せ集め。個々の論文はそれなりにおもしろいものの、テーマがばらばらなのでサルトルの他の本を読んでからでないとサルトルの考え方がわかりにくい。★★★☆☆
2009.08.24
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淫蕩なカラマーゾフ家の親父が殺害されて、長男が無実の罪で投獄される話。三人称で、ところどころ作者がでてきて物語をコントロールする文体。この作者の顔の出し方があいまいで、裁判の部分はすべておぼえているわけではないとか、作者がその場で傍聴したかのような書き方をしているけれど、これはリアリティを損ねている。長男の恋愛と裁判の場面は面白いものの、長老を訪ねる部分は長い割にはプロットとしてあまり生かされていないし、イワンの出番も少ないし、アリョーシャと中学生との関わりも話として独立していて伏線になっているわけでもないのが欠点。★★★★☆
2009.08.24
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30才目前の男性がスケート中に頭を打って結婚指輪を渡す相手を忘れる話。一人称の主人公が読者に向けて描写する文体なのに、最後になってまた頭を打って指輪を渡す相手を忘れるというのはナラトロジー上の矛盾があり、もとから少ないリアリティをさらに損ねている。★★☆☆☆
2009.08.24
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19世紀のイギリス人の結婚と遺産相続と社交界の話。作者が読者に向かってしつこく語りかける文体が良くも悪くも小説を特徴付けていて、作者のユーモアが前面に押し出された分、物語にリアリティがなくなっている。登場人物の虚栄を強調して長所短所を生かしつつ、ベッキーとアミーリアを対比させながらプロットを展開しているのはよいものの、作者が終始同じペースで語るために物語に起伏がなく、長い話がさらに冗漫になっている。★★★★☆
2009.08.18
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他人に理解されない実存の孤独を書いた話。日記として一人称で語られる文体。ストーリーらしいストーリーがなく物語としてはつまらない。主人公のリアリティはあるものの、自分のことをあまり語らない主人公なので共感しづらい。★★★★☆
2009.08.18
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両親が死んで叔母の家にひきとられていじめられながら育った女性が教師になって、なんやかんやの末に結婚する話。一人称で主人公が自分の人生について語る形式の文体。幼少時から時系列順に物語が展開する構成で、主人公が孤児というのは小説としてはありきたりの設定だけれど、リアリズムを損なわない程度の波乱万丈さがストーリーを面白くしている。特に優れた文飾があるわけでもないけれど、描写のテンポが安定していて場面ごとに丁寧に心情を書いているのがよい。オーソドックスな手法による教養小説、恋愛小説としてよくまとまっている。★★★★☆
2009.08.06
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精神病になった女性の出会いと別れの話。一人称だけれど主語の省略が多く、文飾が少なくてあっさりした文体。場面が変わるたびに一行空きを乱発していて、時間と空間の描写の工夫に手を抜いているように見える。ストーリー自体は知り合いと会って話をして、セックスしそうでしないというだけで、主人公が何か目的を持って行動するわけでもなく、一人称のくせにストーリーの進行が他の登場人物任せになっているのはよくない。描写が少ない中で主人公の情報を小出しにするタイミングはうまく、少ない文章で親子の不和を仄めかしている場面はよくできている。しかし文章量そのものが少なく断章的なので文飾や構造の楽しみは少なく、これが一つの短編というよりは掌編の盛り合わせといった感じで全体のまとまりがない。病んだ主人公の日常に共感できなければ小説としては全くつまらない話になってしまう。もう一つの短編「第七障害」はレース中の転倒事故で愛馬を亡くした女性の話。外的焦点化と内的焦点化の使い分けがうまくいっていない、乗馬用語の解説で物語の流れが止まるなど、描写技術の低さが露呈している。新人がやりそうな描写の不手際を抱えながらなんとか物語をまとめているものの、推敲が必要なレベルで、こちらは出版するほどの技量に達していない。デビューできるか否かの技術的境界線上にある作品として参考になる。★★★☆☆
2009.08.03
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初期の短編集。自らの経験に基づいて書いたと思われる「思い出」と「道化の華」が読み応えがあるけれど、「道化の華」は新しいことをやろうとしてリアリティを損ねている。他の短編は特にオチもなく印象的な場面を書いただけの小話として終わっていたりするし、作中にやたらと小説家が出てきて書くだの書かないだのとぼやくのがうざったい。★★★☆☆
2009.08.03
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