全22件 (22件中 1-22件目)
1
![]()
シュルレアリスムの規定と、自動筆記の実践による「溶ける魚」。シュルレアリスムという潮流を引き起こしたという歴史的価値はある。どうでもいい描写ばかりの小説はもううんざりだという出発点には共感できるけれど、すべてがシュールで理解できなくなるとシュルレアリスムもまたうんざりしてどうでもよく思えてしまう。出オチみたいな感じで、最初は興味深いものの、後に記憶や感動として残らない。★★★☆☆
2009.10.29
コメント(0)
![]()
猫を飼っている人たちのところにボス猫がやってくる話。一人称で、句読点で文章が長く繋がるのが特徴の文体。~で、~だけれど、~から、という言い回しで文章にリズムが出ていて読みやすいけれど、いくら読みやすくても内容がないようだから、読みやすくてもしょうがないなと思う。「しょうがないな」は、生姜がないことではなくて、止揚がなくてどうでもいい内容だなというあきらめに近い「しょうがないな」なのだけれど、ちょうど電車に乗っていて他に読む本がないからしょうがなく最後まで読んだ。内容は人間から見た猫像にすぎず、猫を主題にしておきながら猫の世界観を書いているわけではなくて、漱石は『我輩は猫である』を猫の一人称にしたのだけれど、この小説は猫を生かした文学的技巧もないし、人間も猫も描写が中途半端でテーマの掘り下げが浅いから、だからなんだといいたくなる。★★★☆☆
2009.10.29
コメント(0)
![]()
アラブの兵士が東京に密入国してロックバンドでメジャーになる話。三人称で、トルストイのように様々な登場人物の視点から物語を組み立てている。長編だけれど、章ごとに短編小説の様な新鮮味があるのはよい。また、異邦人を主人公にすることによって東京を異化しているのもよい。音楽の描写もうまいけれど、ロックバンド云々という話になってからバンド内恋愛や親子の確執云々というのは月並みな展開で、異邦人の存在が小説に与えている緊張感が薄れてしまい、トーンダウンしたように感じた。主人公が東京になじめばなじむほど必然的にこの緊張感はなくなっていくのでしょうがないけれど、メジャーなバンドになって終わりというのは順調すぎて物足りない。★★★★☆
2009.10.27
コメント(0)
![]()
生命について論じた本。動物的生命の否定→生命とは幸福の追求である→自己犠牲によって他人に幸福→愛、というような論旨の流れになっていて、段階を追って生命について論じるのでわかりやすく、19世紀のキリスト教圏の思想としては十分説得力がある。生命の無価値や自殺についての考察は現代にも応用できそうな内容。★★★★☆
2009.10.27
コメント(0)
「残響」は前に住んでいた人のことを考える話。弊録の「コーリング」は人材派遣会社の同僚たちの話。ゼロ焦点化で登場人物の視点を変えていく三人称の文体。そのとき●は▲を思い出していた、などの人物の切り替えが強引。ころころ視点を変えて同じ時間に別の人がなにをしていたかを書くのは、ただ小説を読みにくくするだけで技法として失敗しているように見える。ゼロ焦点化による神の視点にもかかわらず、人物の思考については断定せずあいまいなまま。また人物を形容する描写が少なく、いきなり固有名詞がでてきてなんやかやとくだらないことをしゃべってすぐ次の人物の話に切り替わってしまうのはよくない。登場人物の外見やら人間関係やら、読者にとって不確定な要素が多すぎるうえに、それが補足されないまま別の人物が出てきてまた不確定要素が増えていく。どのような人物なのか具体的に描写されず、メンタルモデルが不確定なまま場面が変わるので、登場人物が全く印象に残らない。なにを書くか、なにを書かないかという描写の取捨選択が偏向していて、描写が客観的ではなく作り物めいている。登場人物が思考しているというよりも作者の思考を登場人物に「と思った」と押し付けているだけのように見えて、人間を書いているというより抽象的な人形劇を見せられているようなリアリティのなさがつまらない。★★★☆☆
2009.10.21
コメント(0)
![]()
小説を書く姿勢や過去の出来事などについてを書いたエッセイ。星座や近所の料理屋など話題は素朴だけれど単なる身辺雑記にならず、日常を異化して村上的世界を表現しているのはよい。友人からもらった時計の話に友人の死を重ねるエピソードなどはそこいらの作家の下手な短編小説よりも趣深い。★★★★☆
2009.10.21
コメント(0)
![]()
唯野教授へのインタビューと「一杯のかけそば」の分析。『文学部唯野教授』と併せて読むと裏話がわかって面白いが、内輪的な面白さに過ぎず、ネタをどこから借りたかわかって唯野教授の底の浅さが見えてしまうとかえってつまらなくなる危険もある。★★★☆☆
2009.10.21
コメント(0)
![]()
出世の為に作家であることを隠している文学部の教授の話。三人称による文体で、ストーリーとしては平凡なものの、文学や教授に対する皮肉や文学批評のガイドとして面白い。★★★☆☆
2009.10.21
コメント(0)
![]()
不倫をする女性の話。一人称「私」の文体。他の短編と一人称の書き分けができておらず、なぜ語るのかというナラトロジーの問題も考慮されていない。またところどころに回想が挟まれて時系列がごちゃごちゃしていて、物語における現在、つまり主人公がこの物語を語っているのははいつの時点なのかというのがよくわからない。家族や親友の死がプロットに組み込まれているが、主人公は他人の死を終わったこととして傍観して回顧するだけで、死そのものに向き合って考察しているわけではない。死を扱うわりにテーマの掘り下げが不十分で、感傷の雰囲気だけ演出したという感じで物足りない。★★★☆☆
2009.10.21
コメント(0)
![]()
エログロな短編集。一人称の「俺」で語る文体も三人称の文体も書き分けができていない。特に副詞の使い方が下手で、本当に、もの凄く、といった安易な描写が目に付く。「~としか呼びようがない」という言葉が同じ短編に2度出てくるなど、表現力がなく言葉に洗練が無い。解説は目くそが鼻くそを天才扱いして礼賛するひどい有様。「これを読んだらもう死んでもいい」といった清水アリカは死んでからそいうセリフを言ってほしい。内輪を褒めたければ同人誌でやればいいと思う。★★☆☆☆
2009.10.16
コメント(0)
![]()
「猟銃」は猟銃雑誌に詩を載せたら知らない男から手紙が送られてくる話。手紙に3人の女性の心情がつづられているものの、無理やり猟銃とこじつけて構成したような印象でリアリティに欠ける。詩人の存在意義もよくわからない。「闘牛」は新聞社の男が怪しい興行師と組んで闘牛を企画する話。三人称による文体。闘牛の勝敗に賭けているところがクライマックスになるけれど、途中に恋愛話が割り込んできて方向性が中途半端な印象。赤い牛が勝ったら恋人と別れるなんてめんどくさいことしないですぐ別れりゃいいじゃんと思う。★★★☆☆
2009.10.14
コメント(0)
![]()
フルトヴェングラーの論文や講演をまとめた本。ベートーベンの楽譜の解説などは音楽に詳しくないと理解できないものの、全体性や直感についての考察、ロマン派批判などは芸術論として面白い。科学について論じるならば、ベンヤミンの複製技術時代の芸術などについても触れてほしいところだ。★★★★☆
2009.10.14
コメント(0)
![]()
フルトヴェングラーが再婚した夫人へのインタビューを元にフルトヴェングラーの生涯を書いた話。ナチへの抵抗やトスカニーニとの反目などは面白く読め、フルトヴェングラーの人間性が分かるような書き方をしているはよい。ただ著者がフルトヴェングラーを好きだというだけあって、フルトヴェングラーびいきになっている印象。途中で薬害の話になるとフルトヴェングラーではなく自分語りになってしまうのは高齢ゆえ仕方が無いとはえ、テーマに徹しきれていない感じがする。★★★☆☆
2009.10.14
コメント(0)
![]()
京都の大学生が小さい鬼を使って戦う話。主人公「俺」の一人称による文体。読者にホルモーを説明をするという体裁で、いかにも大学生っぽいふざけた描写が特徴。冒頭でホルモーを説明してからホルモーが始まるまでが長く、描写と構成に無駄が多い。またプロットはホルモーならではの展開といえる部分が少なく、結局は予定調和的で先が読める恋愛話として終わるのが残念なところ。★★★☆☆
2009.10.14
コメント(0)
![]()
いじめられた息子に対して父親が父の出来事や妻との馴れ初めを語る話。父親が息子に語りかける形式の一人称。語りが不安定で、祖父が豚を殴るあたりの描写などは一人称で無理に語ろうとしていることの描写のほつれが見える。豚を殺したからといってなんでヤクザ扱いなのかというのもよくわからない。息子に語りかけるという目的がどっかに忘れられて、最後にはゴドーを連呼して主体が語りのリアリティを失って小説的になっているのも興ざめ。また物語の内容や野球の話が引用した『ゴドーを待ちながら』に負けていて、ごちゃごちゃした印象。『ゴドーを待ちながら』がなかったなら野球と家族の話としてもうちょっとわかりやすかっただろう。★★★☆☆
2009.10.14
コメント(0)
![]()
工場勤務の30歳目前の女性が世界旅行に行くために貯金をする話。三人称による文体。作者の視点が主人公に寄り添いすぎて、三人称としての効果はだせていない。主人公の苗字をカタカナで書く必然性があるとは思えず、三人称なのに作者が登場人物を客観視していないような印象を受ける。また描写に抑揚がなく、これで終わりなの?というようなあっけない終わりかたで見所がない。描写の客観性の不足ゆえに下流社会のリアリティも表現しきれていない。女性の30歳はよく女性作家のテーマになるだけに、ただ世界旅行を計画するという以上に工夫がないと、またこの手の小説家かという既視感があって凡庸に感じる。★★★☆☆
2009.10.14
コメント(0)
朝鮮戦争時の新聞社で記事の翻訳をする男の話。三人称による文体。構成・描写が洗練されておらず、削ってもいいような無駄な比喩も多い。資本主義と社会主義のどっち側につくかというのも煮えきらず、主人公がなにをしたいのかよくわからない印象。★★★☆☆
2009.10.09
コメント(0)
![]()
アメリカ人文化人類学者による日本人の考察。恩、義理など個々のテーマについて、アメリカ人としてのバイアスもなく合理的に日本人の習性を分析、比較していてよい。★★★★☆
2009.10.08
コメント(0)
![]()
レイテ島の日本兵が仲間の肉を食べた話。一人称による簡素な文体。精神病院で自分の体験を書くという構成になっていて、なぜこの主体は語るのかというナラトロジーの問題をクリアしているのはよい。文章にクセが無く、風景や状況がわかりやすいのもよい。欠点があるとすれば、忠告されていたにも関わらずあっさり手榴弾を渡してしまう点が不自然にみえる。★★★★★
2009.10.08
コメント(0)
![]()
引越し祝いに集まった男女の話。一人称による簡素な文体で、各章ごとに違った人物が一人称の主体となる構成。その人物の視点から描くなら三人称のほうが適しているし、描写レベルで主体の違いを表現できないのなら一人称にする意味が無い。なぜこの主体は自分の事を語るのかというナラトロジー上の問題にも無自覚。また人間の書き分けができておらず、特に男性が一様にぼくの一人称で語るときに相手から呼びかけられるまで主体が誰なのかわからない。それに語りの主体を変えたせいで主人公が不在になり、物語の軸がない。ひとりの人物を掘り下げたほうがましだっただろう。京都弁での会話にリアリティがある点はよい。しかし会話文はましなだけに、なおさら一人称の下手さが目立つ。ウェブカメラで延々と自分のプライベートを公開しているような感じのつまらなさで、それもリアリティの有り方には違いないが、だからなんなんだといいたくなる。★★★☆☆
2009.10.06
コメント(0)
![]()
死んだ父親の同居相手の女からハムスターをもらう話。一人称による文体で、会話の連続と擬音語の形容が特徴。人物間の緊張や対立がたいして起きず、結果として淡々としたストーリーになっている。母親との不和、元恋人との不和はあるけれど、相手が悪いということで主人公から見切りをつけているので対立にまで至らず。また巨大金玉男や卵を産む女などの登場人物の特異性をプロットとして生かしきれていない。無駄な描写も多く、物語の密度が低く読み応えが足りない。人物間の対立もないから止揚もなく、だからなんなんだといいたくなる。★★★☆☆
2009.10.05
コメント(0)
![]()
高校生がロックバンドを結成する話。一人称で、大人になった主人公が高校生の頃を回顧するという形式。プロットはなく、時系列順でストーリーが展開する。方言がアクチュアリティを出していて、描写のぞんざいさも主人公=語り手の個性としてユーモアを出すことに成功している。★★★★☆
2009.10.02
コメント(0)
全22件 (22件中 1-22件目)
1


![]()