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A賞候補になった夫とN賞候補になった妻の同人作家夫婦の話。妻視点の三人称。この作家の癖なのか、現在→過去→現在という構成を冒頭に持ってくるものの、時間をこじらせてわかりにくくするだけで伏線にもなっていない悪手。自伝的小説らしいものの、各場面の書き込みが足りないせいか抑揚がないまま、描写というよりは説明が淡々と続いて山場がない。自分をモチーフにしている割には心理の追求が浅く、文飾にも見所がない。貧乏生活とDV夫という面白要素を持ちながらもそれを物語として活かせていない。唯一の技巧の見せ場らしいところは終盤でメタフィクションを匂わせる点だけれど、これも匂わせただけで決め手にならないまま終わる。描写でなく説明で物語を進めてしまった文体が失敗の一番の原因で、私小説らしいリアリティや気迫がない凡作になってしまった。何か面白い点があるとすれば東京オリンピックをやってたころの同人活動の様子や賞レースの事情がちょっとわかるというくらい。★★★☆☆重い歳月価格:407円(税込、送料別)
2012.03.21
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森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』京都の男子大学生と後輩の黒髪の乙女のラブコメ。主人公とヒロインの一人称が交互に展開する形式。しかし主人公は過去の記録として物語っている一方で、ヒロインが物語る動機は明らかでない。主人公とヒロインが共作していなければ二人が交互に一人称で書く形式は成立せず、ナラトロジー的に矛盾していて、作者が主人公とヒロインを駒として使っているのが透けてみえてしまうと物語の面白さは減少する。物語の見所はいかにして主人公とヒロインがすれ違いつつ接近するかという点なのだけれど、主人公とヒロインがテンポよくすれ違う反面で登場人物自身が御都合主義だと開き直っているのはよくない。ヒロインがあっさり主人公に恋してしまうのはプロット以上に御都合主義な部分だろう。この点でリアリティを損ねている。オモチロイ言葉遣いをしているのと脇役として奇人変人を惜しげもなく登場させてどたばたしているのは物語を異化できていてよい。しかしそのぶん平凡な主人公の存在感がなくなってしまうのだけれど、最後に主人公が空を飛ぶ場面に効いてくるのがよい。リアリティがないままコメディで終わってしまったのが残念なところ。もてない男子大学生が恋愛を成就してデートするというのは大事件には違いないものの、それまでの飛んだり跳ねたりする過程に比べるとどうにも平凡な結末にみえてしまう。★★★☆☆【送料無料】夜は短し歩けよ乙女価格:580円(税込、送料別)
2012.03.12
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