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拾った生き物にブラフマンという名前をつけて飼っていたら車で轢いたので埋葬した話。主人公「僕」の一人称。主人公の年齢は不詳だけれど、働いている割には幼稚なので十代後半くらいなのだろう。まずはこの主人公の中身の無さにいらいらする。純情を通り越して間抜けの域に達していて、知的障害者が主人公かと思うほど。次に物語の焦点である動物にリアリティが無い。拾ってきた動物は小さくて茶色い毛が生えていて尻尾が体の1.2倍あってあちこちかじるらしいのだけれど、何の動物か描写しないのがいらいらする。ブラフマン(謎)という名前にかけてあえて作者がぼかしているのだろうが、犬なら犬でいいし、わからないならわからないでいいのに、動物の種類によって飼い方が違うのに主人公が動物の種類さえ無視しているのは不自然すぎる。リアリティの無さの裏には固有名詞がないこともある。物語の場所はどこかの村で、人物は彫刻師だのレース編み作家だのと職業で呼ばれ、主人公が仲良くなる女さえも「娘」と呼ばれる。この娘と他の娘をどうやって主人公は認識しているのか疑問で、この村には他に娘はいないのかと疑問に思う。このあたりの度を過ぎた抽象性が主人公を必要以上の間抜けに演出している一因になっている。命の大切さだのパートナーの愛情だのがテーマならなおさらリアリティに基づいた上で物語を作らなければならないのに、登場人物にリアリティがなく物語にひねりも無く、すべてが現実味がなくしらじらしい。読後感は中村航『100回泣くこと』と同じで、久々に本をゴミ箱に叩きつけて捨てたくなった。飼っていた動物の死を見取る話はネタに困った作家がでっち上げる類のくだらない話で、謎めいたタイトルだけ見て「博士が愛した数式」的なものだろうかと思って買ったものの大失敗で、中身を知ってたら買わなかっただろう。動物ネタをやるならやるで真摯に書くべきで、動物を飼ってる人がこの本を読んだらさぞかし怒ることだろう、と思いきやアマゾンで好評価されているのをみてげんなりしてしまった。幼稚な人が幼稚なメルヘンに浸って動物好きな善人になったつもりになれるなら、それなりに価値がある本なのかもしれない。★★☆☆☆【送料無料】ブラフマンの埋葬価格:420円(税込、送料別)
2012.04.30
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旅行でパリに寄ることになった少女ヘンリエッタがパリの家で今まで会ったことがない母親と会う予定の少年レオポルドと会うものの、その母親がこられなくなる話。三人称。ヘンリエッタがパリの家に来た現在、レオポルドの母親のカレンの恋愛の過去、また現在という三部構成なものの、過去の部分で話の流れがぶったぎられていて、効果的な構成ではない。そのうえこの物語の主人公が誰なのか焦点がはっきりしない。最初ヘンリエッタが主人公かと思いきや、レオポルドの母親に話が飛び、結局誰の何の物語なのかがよくわからない。パリの家が物語の焦点なのだとしても、それならそれで話の展開の仕方がうまくない。文体も面白くなく、描写過剰で話がなかなか先に進まない。誰かが座ったとかのちょっとした動作にページ半分を費やしてくどくどと心理描写をしたり、~のようだと比喩をしたりするのが延々と続く。描写の多さに見合うだけの面白さがあればいいのだけれど、描写にメリハリがないうえにストーリーの山場も少なく同じ調子で延々と続くので、飽きて退屈するだけだった。昔の暇な読者はくどい描写に付き合ってのんびり楽しく読んだのだろうけれど、現代に読み直されるほどの魅力は無い。★★☆☆☆
2012.04.30
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家族で旅行中に善人でない人と出会う表題作とその他の短編集。三人称。物語に登場する様々な田舎者が誇張されてはいるものの、人の性格の特徴をよくとらえていて、文体は普通でも登場人物自体が物語を魅力的にしている。個々の短編としてみるとよくできているものの、各短編のストーリー構成はワンパターンで、自分が正しいと思っている田舎者と、意見が食い違う家族がいて、主人公の思うとおりには行かずに悲劇が起きるというものばかり。どれも認知的不協和を物語の軸にしたもので、短編を続けて読むとおなじやり方ばかりで飽きてしまう。誰かの死で短編をしめくくるのは劇的にもなり印象に残るものの、そればかりが続くとリアリティも薄れて演出過剰気味に見える。★★★★☆善人はなかなかいない価格:2,310円(税込、送料別)
2012.04.28
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恋愛をして結婚したら妻の肺に蓮の花が咲いて死んでしまう話。三人称。文体は普通かと思いきや、シュルレアリスム風の意味不明な描写があり、物語に入り込めない。マジックリアリズムのように物語の一部としてディティールが活きるわけでもなく、唐突に意味不明な状況がさしはさまれるのでその部分の描写だけ物語から浮いていて、表現技法としてこなれていない印象。シュルレアリスムで物語が軽薄になったのに加えて、登場人物たちもいつの時代のどこの都市に住んでいる人たちなのかがはっきりせず、人物にリアリティがない。サルトルのパロディらしいジャン=ソオル・パルトルという「嘔吐百科」を書く人物が出てきたりするものの、作者と同時代を生きた読者でもないとその冗談の裏にあるリアリティを感じとれないのではないか。それに心臓をひっこぬく心臓鋏やカクテルを造るカクテルピアノなどの架空の道具は凝っているのに、人間は普通のままなのはファンタジー具合が中途半端で、人間の存在感がガジェットの存在感に負けてしまっている。シュルレアリスムによる現実からのはずし具合や作者の言葉遊びにつきあえる人なら楽しく読めるのだろうけれど、ギャグが滑ったときのような感じでしらけてしまった。★★★☆☆【送料無料】日々の泡価格:580円(税込、送料別)
2012.04.24
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負傷してミラノに入院中のヘミングウェイと交友があったヴィラードから見たヘミングウェイ像と、看護師であり『武器よさらば』のモデルにもなったアグネス・フォン・クロウスキーに関する話。小説とは違ってアグネスに夢中になっていたのはヘミングウェイだけでアグネスはそうでもなかったらしい、というあたりが話のメインで、あとは第5章でネイグルの論考があり、そこで他のヘミングウェイ研究者の事実誤認などが指摘されている。普通の人が読んで面白い本ではないものの、ヘミングウェイ研究者には当時のヘミングウェイの情報を確認するのに参考になる。★★★☆☆
2012.04.22
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作家の引出し、女の引出し、主婦の引出しというテーマでのエッセイ。各エッセイは短いのであまり読み応えはないものの、リアリティがあるぶんこの作家の小説よりもよくできている。この作家が好きならついでに読むという程度の価値はあるけれど、エッセイ単体で読んで面白いものでもない。★★★☆☆女の引出し価格:438円(税込、送料別)
2012.04.22
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会社を辞めてなんとなくコンビニ強盗した男が連行される途中にパトカーが事故を起こして外界と交流がないという島に連れて行かれてしゃべるカカシを殺した犯人を捜す話。主人公の一人称の間に三人称が挟まる形式。しかしこれでは主人公が自分について物語る一方で第三者が神の視点で記述していることになり、読者に作者の存在を意識させることで物語のリアリティを大幅に損ねていて技術的に失敗している。やるなら全部三人称で通すべきだろう。物語の展開もテンポが悪く、変な島を案内されて住民をひとりづつ紹介されている間にちまちま回想が入って、状況がよくわからない上に話が先に進まない。島の住人の紹介だけで100ページつかい、その間主人公はただ連れまわされるだけで主人公の動機も物語の方向性もみえず、物語に対する好奇心を維持できない。主人公のコンビニ強盗の動機の軽薄さに加えて、すべてを見通すしゃべるカカシが出てくるあたりでますますリアリティから遠ざかり、物語に引き込まれるどころか読むのをやめたくなる。主人公の視点にせずに、島に視点を据えてそこに主人公が来るという構図にしたほうがテンポよく物語が進んだだろう。描写も下手で、変な描写があちこちにある。悪徳警官と元恋人の存在も中途半端で見所がない。なにか面白いどんでん返しとかがあるかもしれないと思って一応最後まで読んだものの、結局読む価値はなかった。★★☆☆☆
2012.04.22
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身体をテーマにした大正から昭和らへんの日本の小説家の考察。文学史といいながら内容は個々の作家論として誰某は身体をこうとらえたというだけで、文学史というほどのまとまった考察になっていない。小説の倫理など身体と関連があるかどうかよくわからない脱線も多くて論旨があいまい。タイトルと内容があっていない上に結局全体として何が言いたいのかよくわからず、中途半端な作家論の寄せ集めのようになっている。★★★☆☆
2012.04.22
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宝くじが当たって会社を辞めて海辺で暮らすおじさんがおばさんと恋愛をする話。神の視点の三人称。ファンタジーという名前の役に立たない神様が登場することで、この小説は他の恋愛小説と差別化できている。ファンタジー自体はただ居候したり旅についていったりするだけの脇役なのでファンタジーがいないとしても小説が成立してしまうのだけれど、ファンタジーがいることでファンタジー小説になり、散々やりつくされてワンパターンになりがちな恋愛悲劇をファンタジックコメディに中和するという役割を果たしているのはよい。それと同時にファンタジーをどう解釈するかという解釈の多様性も提供する。ファンタジーとは恋愛の仲介役なのか、それとも現実逃避なのか、あるいは登場人物自身が言及しかけたような死神のようなものなのか。そのへんは読者が好きに解釈すればよいのかもしれない。女性作家が書く恋愛小説となると不倫だの性欲におぼれるだのといったどろどろしたものになりがちだけれど、仕事を優先してその合間に恋をするというさばさばした現代人の恋愛を書いているあたりはリアリティがあってよい。しかし親近相姦や末期がんというテーマを扱う割には全体的に描写が少なくリアリティが乏しいのに加えて、終盤に雷に打たれて失明するところまでいってしまうとプロットを優先してリアリティをなくしてしまった感じがする。家族の不和を書いても和解を書かないというのも人間の一側面しか捉えていないようで物足りない。リアリティのある話にファンタジーが登場するならちょうどいい按配なのだろうけれど、物語自体にリアリティが乏しい上にファンタジーまで出てきてしまうと一気につくりものめいた物語になってしらけてしまう。童話が子供向けファンタジーとしたら、この小説は幸福な家庭を持ち損ねたおじさんおばさん向けのファンタジーなのだろう。★★★☆☆【送料無料】海の仙人価格:380円(税込、送料別)
2012.04.06
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障害児をもつ光・父が同じく障害児をもつ原子力発電の被爆者の森・父から手紙を受け取り、それをピンチランナーの調書として書く話。作者である光・父の一人称で森・父の手紙を記す形式。自身が障害児の父であるという事実を土台にして、よりフィクション要素の濃い森・父への話へとリアリティを損なわせずに移行していく構図はよく機能している。森・父と森の「転換」によって、森・父が18歳になり、森が28歳になり、年齢が逆転するというアクロバティックな展開や、実は「転換」していなくて変装しているだけだという森・母の見方による認識のゆらぎも面白い。序盤の仕掛けは面白いものの、中盤になって左翼の内ゲバがどうこうという話になると一気につまらなくなってしまった。障害児やら原子力やら左翼のネタになりそうなものが主題ならまだいいけれど、左翼運動自体が主題になると世界観が狭すぎてついていけない。誰が何のために内ゲバで殴り合っているのか、学生運動の当事者でもなく左翼でもない人間にはさっぱりわからない。★★★☆☆【送料無料】ピンチランナー調書改版価格:740円(税込、送料別)
2012.04.05
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