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官吏になりそこねた趙行徳が西夏の女と見知らぬ文字に出会ったことをきっかけにして西夏に旅立ち、西夏の初代皇帝李元昊の部下の朱王礼と共に戦争したりする話。三人称。時代小説だけれど説明くさくなりすぎず、時系列順に物語が展開し、各章ごとで場面が完結していて物語がわかりやすいのはよい。しかし趙行徳の物語として読むとたいして面白くない。前半は西夏文字を学びたいという明らかな動機があるものの、後半はどういう思想や動機で行動しているのかはっきりしないし、どういう最後をとげたかも書かれていない。ウイグルの王族の女をめぐる趙行徳と朱王礼の穴兄弟の関係も淡白で、その感情の書き方に面白みがない。脇役の商人の尉遅光のほうが自由気ままに行動していて主人公よりも魅力的に書かれている。敦煌の洞窟の中から無数の経典が見つかったという事実の背後関係の空想の物語として見ればそれなりに面白いものの、主人公の冒険も恋愛も中途半端。★★★☆☆【送料無料】敦煌改版 [ 井上靖 ]価格:546円(税込、送料別)
2012.09.11
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顔に火傷の痕がある31歳の独身カジテツの充江が乳がんでも医者にかかるのはいやだという叔母の介護をする話。充江視点の三人称。既婚のいとこへの隠れた恋心や親がわりの憧れの叔母の介護などの家庭内のぐちゃぐちゃした出来事を書くあたりはいかにも女性作家らしいテーマけれど、がんと看病の話で暗いうえに、バブルのちょっと前の昭和60年に書かれた割には没落した田舎の地主の家の離れが舞台で内容が古臭く、読んでいて面白いと思える要素がない。恋と介護というテーマが相性が悪い上に、恋が焦点になるのは第一章だけで、介護も最後は他人任せにしてしまい、どちらも掘り下げ方が中途半端になっている。顔に火傷があるコンプレックスを持った充江の人生を書きたいのか、医者にかからずに死ぬことを選んだ叔母の壮絶な死に方を書きたいのかも中途半端で、叔母の死に方についての充江の意見もなく、充江に主人公なりの魅力なり思考なりがない。それに描写がもっさりしていて、描写が多いわけでもないのに展開が遅いのはよくない。特に第一章に無駄な回想が多くて物語がろくに進行せず退屈してしまう。舞台はどこかの地方都市らしいものの、方言は出てくるのに地名がはっきりしないのももやもやする。どの程度の田舎なのかも地主と元小作人の爺たちとの関係もよくわからない。懐古趣味を展開するならするでせめて設定をはっきりさせてほしい。この小説で純文学らしい点は誰が充江に火傷をさせたかという点で叔母説とおたけ婆さん説の2つの解釈があることだけれど、叔母説を兄の見間違えとするのは強引で、その解釈を尤もらしく思わせるための複線なりの下準備が足りず、無理やりどんでん返しをしてオチをつけたような雑な終わり方になっている。ミステリが好きな読者ならこの小説を解釈をこじつけた失敗作とみなすだろう。タイトルにもなっている青桐にどういう意味づけをしたかったのかもよくわからず、物語の焦点がはっきりせずテーマがまとまっていない。作者はまじめに書いているんだろうけれど、技術的な下手さが目立ち、良い点が見当たらない。★★★☆☆【送料無料】青桐 [ 木崎さと子 ]価格:368円(税込、送料別)
2012.09.04
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