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1940年代に南米に民俗学の調査に行ったときの様子を書いた本。レヴィ=ストロースの代表作ということでたいした予備知識もなく論文のようなものを期待して読み始めると、どこそこの港で足止めをくらったという愚痴やエセ冒険家に対する批判が冒頭にあって気がそれる。それ自体は旅行記としてそこそこ興味深いものの、言い回しがまだるっこしくてわかりづらく、地図も添付されていないのでゴイアニアだのゴイアスだのの地名を出されてもどこなのかわからない。民俗学の話題に入るまでの前置きがかなり長く、上巻の後半から下巻にかけてようやく民俗学的な話題を掘り下げていくものの、本題に入る前に飽きてしまう。せめて旅行した航路や地図を添付してほしかった。地図を用意しながら読まないと旅行記の内容を理解できないので、研究者以外の人が読んで面白いものではない。★★★☆☆【送料無料】悲しき南回帰線(上) [ クロ-ド・レヴィ・ストロ-ス ]価格:966円(税込、送料別)
2012.10.21
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金髪イケメン土方が出会い系サイトで会った保険外交員をしているうそつきビッチを殺して、次に出会い系サイトで会ったスーツ売り場で働くさえない女に恋をして一緒に逃げる話。三人称で章ごとに視点を切り替えて各人物の背景を掘り下げていく構図。内容は小説ならではの文飾なり技巧なりがあるわけでもなく、脚本家が書くような小説もどきよりはましな台本という程度で、小説としての完成度は高くない。メインストーリーは殺人犯の祐一が悪人かどうかという点なのだけれど、これに対する掘り下げが足りない。サブストーリーとして祐一の祖母が健康食品の押し売りに対抗しようとしたり、床屋の主人が娘を蹴った大学生の増尾を殺害しようとするものの、これらは中途半端で蛇足。床屋なら剃刀とか殺害しやすい刃物があっただろうに、何でスパナを凶器に選んだのかも腑に落ちず、人物造詣の細部や作者の意図が透けて見えるような不自然な心理描写がひっかかる。メインストーリ自体の掘り下げが不十分なのに、さらに終盤に中途半端なサブストーリーを二つ入れたことで、誰についての物語を書きたいのか物語の焦点がぶれていて、さらには健康食品の押し売りの男たちも金持ち大学生の増尾もステレオタイプな悪人像でリアリティを損ねている。作者は弱者が悪人に立ち向かう話をまとめて終盤にもってきてクライマックスの感じを出したかったのかもしれないけれど、これはエンタメ的手法で芸術としては悪手。後半には誰かに語りかける形式で登場人物たちが独白するものの、このやり方は描写をすっとばして物語を展開する安易な手法で、オチまでこれに頼ったせいでしまりのない終わり方になった。最後にヒロインの光代に「悪人なんですよね?」と疑問系を言わせることによって読者には「悪人じゃないよ」という反応を引き起こさせるというのが作者の狙いなのだろうけれど、この部分では光代の心理を描いたわけではなく、物語の展開に沿った形で光代の心理的葛藤をすっとばして雑にまとめたご都合主義になっていて、最後に決定的にリアリティを損ねてしまった。「その悪人を、私が勝手に好きになってしもうただけなんです。ねぇ? そうなんですよね?」なんていうふうに自分の心理を普通は他人に尋ねないだろうし、いったい光代は誰に対して尋ねてるんだ、と思うと雑な縫い目からリアリティのほころびと作者の作為が見えてくる。★★★☆☆【送料無料】悪人 [ 吉田修一 ]価格:1,890円(税込、送料別)
2012.10.13
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