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ファブリスという消臭剤みたいな名前のイケメン貴族男子が恋をしたり投獄されたりする話。あらすじ:イタリアの大貴族デル・ドンゴ侯爵の次男の美男子ファブリスが、無知なくせにやたらと行動的な奴で、若気の至りで英雄主義にかぶれてナポレオンを応援しようと弾の込め方も知らないくせにワーテルローの戦争にいって負傷して逃げ帰ったところ、彼を嫌う兄のアスカニオ小公爵から告発されてしまうが、ファブリスの叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人がパルムのモスカ伯爵と恋仲になって告発を取り下げさせて、ファブリスが宗教を勉強して数年後に僧侶になって出世コースに乗るものの、劇場の踊り子のマリエッタと恋をしてたら彼氏気取りのブ男ジレッチに襲われたので返り討ちにして殺して逃亡して、さらに逃亡先で歌姫ファウスタをめぐってM伯爵と争っていたところ、検察長官ラシの陰謀でファブリスが捕まってしまい、公爵夫人が大公にかけあって特赦状を書かせたものの、モスカ伯爵の落ち度でファブリスが十二年城塞に投獄されることになったので伯爵がファブリスを釈放させて公爵夫人の愛情を挽回しようとラシを抱き込むものの失敗し、監獄長のファビオ・コンチ将軍の娘のクレリアにファブリスが恋をしたところ、クレリアが父親を裏切ってファブリス毒殺計画を教えて、ファブリスが脱獄して、公爵夫人が自分に恋する詩人フェランテを使って大公を毒殺したものの、その息子の新大公エルネスト五世がまたボンクラで状況がたいして変わらず、ラシと公爵夫人が対立して、またファブリスが収監されて毒殺されかかったので公爵夫人が大公の愛人になる約束をして大公にファブリスを助けてもらい、ラシとコンチ将軍が追放されて、ファブリスが無罪放免になって大司教補佐に出世するものの、クレリアと金持ちのクレセンチ侯爵と結婚して苦悩して、公爵夫人は大公の嫁になるのを断ってパルムを去って伯爵と結婚して、ラシとコンチ将軍が復帰して、ファブリスはクレリアが自分の説教を聞きにくるようにしむけたら、金持ちの娘に惚れられてしまい、嫉妬したクレリアがついに説教を聞きにいって十四ヵ月ぶりに再会して不倫して、ファブリスは息子のサンドリーノを他の父親になつかせたくないので誘拐することにしたが、誘拐した息子が死んでしまってクレリアも自殺した。三人称で、作者が読者に向かって神の視点で説明する文体。冒頭部分はファブリスの幼少期の10数年の家庭の様子が端折って説明されるので退屈する。戦争の話や毒殺の話はスリリングで面白いものの、宮廷の話になるとジャコバンだの自由党だのという当時の政治に関する会話がよくわからないうえに、女性の登場人物がわかりにくい。ファブリスの母親のデル・ドンゴ侯爵夫人、ファブリスの叔母のサンセヴェリーナ公爵夫人(=冒頭で出てきたデル・ドンゴ公爵の妹のピエトラネーラ伯爵夫人のジーナ・ピエトラネーラ)、モスカ伯爵と対立する党派でサンセヴェリーナ公爵夫人の姪のラヴェルシ侯爵夫人がでてきて、ピエトラネーラ伯爵夫人はいつの間にか再婚してサンセヴェリーナ公爵夫人に名前が変わっているし、名前は省略されて肩書きだけで公爵夫人、公爵夫人、伯爵夫人とだけ書かれているので誰が誰やらよくわからないし、おまけにしばしば主人公が脇に置かれたままなので退屈する。退屈だけれどこの辺の人間関係をきちんと理解しておかないと誰が誰と対立しているのか物語がわからなくなるので面倒くさいけれど読み返した。せめて冒頭に戯曲みたいな人物一覧表でもつけてくれりゃいいのにと思う。ファブリスが恋を探してあちこちの女にちょっかいを出していろいろ事件がおきるものの、ファブリスの心理描写が少なくてどういう基準で女を選んでいるのかよくわからないし、行動に一貫性がなく場当たり的なので主人公としての魅力がない。ラストシーンもはしょりすぎて余韻も残らない。恋愛小説というよりは宮廷陰謀小説で、恋愛は陰謀の駆け引きといった感じで、恋愛小説を期待して読むとがっかりする。登場人物も使い捨てで、ラヴェルシ侯爵夫人はサンセヴェリーナ公爵夫人のライバル視されてる割にいつのまにか出番がなくなるし、マリエッタとファウスタも忘れられて結局その恋はファブリスにとってなんだったんだという話になる。恋と宮廷政治の駆け引きの両方が中途半端で、それがうまく書かれているのはファブリスよりもむしろ公爵夫人なので、ファブリスを主人公にしないで公爵夫人を主人公にしたほうがよかったんじゃなかろうか。予備知識なしで初めて読んだら人間関係を把握するのに手一杯で物語を楽しむどころではなかったので減点。いったん人物の一覧表を作って人間関係を把握した上で読むのなら他のロマン主義文学の古典と同じくらいには面白い。★★★☆☆【送料無料】パルムの僧院(上巻)改版 [ スタンダール ]価格:540円(税込、送料込)
2013.03.14
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七人の貴婦人と三人の紳士の合計十人が一人一話づつ話をして、それを十日間つづけた百話の物語集。ルネサンス時代のイタリアを舞台にして、変装、姦通などの古典的プロットがひとつの短い話の中で簡潔に展開して、善人が報われて悪人が罰せられるので、オチがわかりやすくてよい。まったく高尚なところがない通俗的な物語だけれど、当時の人がこれを読んだら物語の語り手のように他人に語りたくなるだろう。ペスト大流行のときに部屋にこもった男女が退屈しのぎに話をしているという状況なのだけれど、そこで下ネタが出てくるあたりが不謹慎きわまりなく、いかにもラテン的おおらかさ。ユーモアが効いた下ネタは昔の人にとっても面白かったのだろうなあと、物語の面白さの原点を見るような気分。★★★★☆【送料無料】デカメロン物語 [ ボッカチオ ]価格:714円(税込、送料込)
2013.03.13
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失恋をテーマにした4つの短編集。「欲望」は悠介の大学時代の友人の証券マンの水島が友人に金を借りまくった上にヤク中になって自殺したので、悠介が水島の元妻の黎子を車で送っていってセックスしたら、黎子は前に一度セックスしたことを忘れていた話。物語の構成は悠介が黎子を車で送っている「現在」と、黎子と水島の過去の出来事が交互に展開する。しかし物語内の「現在」がどの時点なのかわかりにくくなるうえに過去の場面に戻されることで臨場感が削がれるので、この構成にする意味がない。素直に時系列順に書いたほうがまし。また物語が誰に焦点にあてているのかあいまい。悠介は黎子と水島の媒介役として存在しているだけで、登場人物としての存在感がまったくない。悠介の心情を書きたいのか、黎子を書きたいのか、主人公がはっきりしない。描写にしても三人称の描写に徹していたのに、「その後の経緯を時軸に沿って説明するのは難しい」といきなり作者が読者に顔をみせるのもよくない。語り手は悠介でないのだから、悠介の視点で作者が読者に向かって語り始めることはナラトロジー的に矛盾を引き起こしてリアリティを損なう。物語の軸もバブル時の証券マンが負債を抱えて自殺するという月並みなもので、そのうえ内容に具体性がなくリアリティがない。恋愛小説としても、セックスを書かずにすっとばして事後にしてしまい、その際の心理描写が不十分。黎子が悠介と一度セックスしたのを忘れていたというのがオチなのだから、セックスとそれに伴う心理はきちんと書かなければオチの意味がない。構成と描写とテーマのすべてが失敗している。テーマの重さと描写の軽さがつりあっておらず、全体的に描写不足。一番長い冒頭の短編の「欲望」は落第点で、他の短編のほうが粗が目立たないで読めるものの、暇つぶしにさっと流し読みして読み捨てる程度の面白さしかない。★★★☆☆【送料無料】失恋 [ 鷺沢萠 ]価格:420円(税込、送料込)
2013.03.03
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貧乏なダービーフィールド家が没落した名家の家系だと判明して、家系を再興させようとする両親の意向で美人でナイスバディのテスが偽貴族のアレク・ダーバヴィルのところへ下働きに出されたところ、セクハラされて子供を堕胎して、その後で働きに行った牧場でイケメンで牧師の御曹司のエンジェル・クレアと相思相愛になるものの、婚約後に非処女だということをばらしたら処女厨のエンジェルがブラジルに逃げてしまって貧乏になって苦労する話。三人称。ひとつの場面の描写が長くて長編らしい読み応えがあるものの、物語が進むテンポが遅く、テスの不幸な農村生活が延々と同じ調子で書かれるので退屈してしまう。純真な娘が不幸になるという物語は同情に訴えかけるものの、テスの頭がよくないうえに頑固なので同情しきれない部分もある。テスとエンジェルとのすれ違いがプロットの軸なのだけれど、エンジェルの心理があまり書かれていないのがよくない。処女でなくても愛情は成り立つのだというのが物語の核心ならエンジェルの心理こそ書かなければならないのだけれど、どうでもいい小さいエピソードの描写が長い割りにクライマックスの描写不足で物足りない。それにテスが考えるのはエンジェルへの愛情や神への愚痴といった感情的なことばかりで、苦境を脱するための建設的な思想が提示されないのも物足りない。描写技法としては、ところどころにテスの不幸を暗示する予兆をちりばめていて雰囲気作りをしているのはいいものの、予兆だらけで作為的に見えてしまうのはよくない。結婚において処女であることが重要だった道徳の過渡期の時代を書いた古典悲劇として今の時代に読んでみる価値はあるものの、テスの行動指針のない場当たり的な態度のせいで、「ボヴァリー夫人」や「ナナ」や「アンナ・カレーニナ」などの強烈な存在感がある女主人公たちに比べるとヒロインの印象が薄い。★★★★☆【送料無料】テス(上) [ トマス・ハーディ ]価格:882円(税込、送料込)
2013.03.01
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