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16歳の孤児ジルージャ・アボットが匿名の評議員ジョン・スミスのおかげで大作家を目指して大学にいくことになり、その条件としてジョン・スミスに手紙を送る話。孤児院の狭い世界しかしらない孤児が大学に行くことになり、見たことのない世界に接した興奮を手紙に書いてあしながおじさんに送る生き生きとした様子が見所。孤児の物語としては『赤毛のアン』のほうが先に書かれていて、孤児だけど元気でやんちゃな少女という人物像には既視感があるものの、主人公が大作家を目指すティーンエイジャーという点で知的なユーモアに特徴があり、先行作品と差異化している。一方的に手紙を送りつけるという変則的な書簡体小説で、喜怒哀楽にジョークを織り交ぜて手紙が単調にならないようにしている作者の工夫があるのはよいものの、短い手紙に収まる程度の小さな出来事の繰り返しで単調になるのは構成上の欠点。主なプロットはあしながおじさんが誰なのかという点だけれど、これは登場人物の少なさで簡単にわかってしまう。プロットとしては手が込んだものではないものの、きれいにオチがついてすっきり終わっていてよい。他にルームメイトのサリーとジュリアにも言及するものの、こっちはプロットとして発展せず、サイドストーリーが描写不足なのが物足りない。読者が女性なら主人公の目線で読むのもよし、読者が男性ならあしながおじさんの目線でジルージャからの手紙を読むのもよし、という読み方の多様性があるのはよい。アニメ化されて児童文学という印象があるものの、原作のほうは恋愛小説として大人でも読める面白さがあった。ついでにアニメ版のほうを見てみたら、アニメ版はコメディとドラマ性を強調して児童向けに改変されていて、こちらのほうが物語の展開がわかりやすいので、子供は小説よりアニメを見たほうがよいと思う。小説とアニメだと演出が違って主人公の人物像も違うので(アニメは喜怒哀楽を誇張しすぎ)、小説の表紙にアニメの絵を使うのは気に入らない。★★★★☆
2013.04.29
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公女のようだと言われた金持ち娘のセーラは父親が破産して死んだので学校の屋根裏部屋に住み込みで働くものの、公女のような気持ちで怒りを抑えて逆境に耐えていたら、セーラを探していた父親の友人が助けてくれる話。三人称。アニメ版を子供のころに見て内容は知っていたものの、小説版を読んでみると小説としてもよい出来栄えだった。各章ごとに原稿用紙30-60枚程度のエピソードに区切られているので、長編でも飽きずに区切りをつけながら読むことができる。子供でも理解できるように物語が整理され、長編にもかかわらず無駄な登場人物や余計な伏線や不必要な物語の引き伸ばしもなく、無駄がないように章が構成されているのもよい。そのうえねずみの視点の章を加えるなど飽きないような工夫もある。欠点としては伏線回収ともいえるパン屋のエピソードを最後に持ってきた点で、ミンチン先生やラヴィニアとの対決の決着がつかないまま終わるので、終わり方の印象が薄い。アニメ版ではセーラがミンチン先生やラヴィニアと和解していた記憶があるけれど、小説では和解に至っていない。セーラはもし自分が公女だったら自分をぶったミンチン先生をどうするだろうかと考えていたのだから、セーラが身分を回復した後でその考えの答えをはっきり出すべきだっただろう。隣の家にインドの紳士が引っ越してきたあたりはご都合主義的でオチが読めてしまうものの、ラム・ダスがセーラの部屋に侵入して空想を実現させるというくだりは面白いのでこれは欠点とも言い切れない。描写は平易なものの、逆に物語さえ面白ければ凝った言い回しなど必要ないわけで、現代文学の小手先の技巧を使わなくてもセーラの想像力だけで逆境を克服してみせるのは小説そのものが持つ根源的な魅力といえる。登場人物もキャラ立ちしていて、様々な性格の女性たちを生き生きと書き分けていてよい。子供たちにミンチン先生みたいな嫌な大人がいることを知らしめるという点でも有益。主人公の波乱万丈な生涯を物語の中心的プロットに据えた、長編小説の手本といえるような良い小説。★★★★★
2013.04.10
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作家志望のポールが同じアパートに住むわがまま美人女優のホリー・ゴライトリーに片思いの恋をしたり愛想をつかしたりしていたら、ホリーが金づるにしてた男たちは麻薬の密輸をしていてホリーも逮捕されて外交官ホセとの婚約が破棄されるけれど、ホリーは保釈されてブラジルに高飛びして誰かと結婚して、今度はアフリカにいるかもしれないよという話。ポールの一人称で、ホリーのことを回想する形式。映画化されたので有名だけれど、物語がごちゃごちゃしていて内容はあんまし面白くない。ホリーの恋愛小説というよりは自由奔放な女にほれちゃった様々な男たちの苦労話で、男たちの情けなさにしらける。この小説はホリーの存在感なり魅力なりを読者に印象付けることができればそれで成功なのだろうけど、逆にホリーという変な女がいたという以外に見所がない。そのホリーにしても結局のところ男を金づるにして生きていく打算的な考え方で、自由な野生動物というほどたくましさを美化できる生き方でもない。語り手のポールに何かしら面白いところがあればもうちょっとましなのだろうけど、ホリーに比べてポールの存在感がまるでなく、ヒロインだけ目だってヒーロー不在というしまりのない感じ。表題作よりは併録の短編「ダイヤのギター」と「クリスマスの思い出」のほうが物語としてまとまっていてよい。しかし短編のせいか説明に乏しく、物語の時代と場所がどこなのかよくわからないのが欠点。「ティファニーで朝食を」は好き嫌いが分かれるだろうけど、それ以外の短編に気に入るものがあるなら買っても損のない短編集。★★★★☆
2013.04.07
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ハイカラ好きのアラサー会社員の譲治が16歳のあいのこみたいなナオミと結婚して英語やピアノを習わせて自分好みの淑女に育てようと思ったのに、アホで金遣いが荒いヤリマンになってしまったので別れたけどまたよりを戻す話。譲治がナオミとの出会いから現在に至るまで時系列順に回顧して読者に説明する形式。譲治から読者への口語での説明なので、難しい表現がなく読みやすい。平凡な男の目線から女主人公ナオミが男をとりこにする様子を描いていて、描写は平凡ながらもそれゆえにナオミにリアリティと強烈な存在感を出すことができている。やたらと西洋にあこがれて社交ダンスをしたり洋装をしたりという関東大震災前の大正モダンの虚栄の様子を書いているのも文化的資料として面白い。わがままでヤリマンなナオミは耐えて忍んでという男尊女卑の女性像の正反対で、ナオミのような西洋かぶれの女なら現代にも大勢いるけれども、大正時代にそのプロトタイプというべき人物像を鮮やかに抉り出して人間の性欲の一側面を描いたところは着眼点がよい。★★★★☆【送料無料】痴人の愛改版 [ 谷崎潤一郎 ]価格:660円(税込、送料込)
2013.04.07
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