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女を殴る性癖がある父親の円が主人公の遠馬の恋人の千種をレイプしたので母親の仁子が円を殺す話。三人称。場面転換が下手で一行空きでの場面転換がやたら多くて場面が飛び飛びになっていて、描写と説明のバランスも悪く、ぎこちない物語展開になっていて構成が悪い。冒頭では歩いて三分の千種の家に行くという文章で始まるのに、千種の家に着かないままいきなり登場人物の説明モードに場面が変わり、母親の過去の話だけならまだしも、琴子やアパートの女や父親まで、まだ物語内で登場していない人物まで一挙に説明してしまい、そのくせ千種が誰なのか、どういう顔立ちや体型なのかは描写せずにほったらかしたまま千種とセックスしていて、読者を置いてけぼりにしていてすんなり物語に入り込めない。冒頭で主要登場人物の人間関係を一気に説明するというのは初心者がよくやる拙いやり方で、既にデビューして何作も書いている作家がやるような展開方法ではない。また琴子は父親の現在の相手というキーパーソンなのに、なぜ父親と付き合っているのか、なぜ妊娠してから別れるのか動機がよくわからず、プロット上の役割というのは妊娠して父親が他の相手を物色して千種のレイプにいたるきっかけになったという程度で存在感に乏しい。その他にも父親のお古のアパートの女や近所の子供たちは説明不足で誰なのかよくわからず、脇役としての役割が中途半端な学芸会の村人Aとかそんな感じのぞんざいな扱いで、生きた人間を描写しているというよりはプロット上で都合のいい登場人物を用意したという感じで精彩がない。描写を増やして中篇くらいでまとめればちょうどよかったかもしれないけれど、短編にしては人物が無駄に多くて、描写をしないまま説明や回想に突入するという説明と描写のアンバランスが目立ち、プロットとしてもうまくまとまっていない。主人公の心理描写も不十分。遠馬は父親に似てセックス中に殴る性癖に悩んでいるものの、最後に「もうやらんけえ」と言っただけでやらんで済む程度のもんなら最初からやんなきゃいいだろう。川辺に住み続けるつもりなのか、琴子のように川辺を出て行くのかという結論もでていない。父親が千種をレイプしてすわ父親に復讐してクライマックスかと思いきや、復讐は母親の仁子に任せるという流れになって尻すぼみに終わり、遠馬の物語でなく父親と母親の物語として終わってしまい、これでは短編としてプロットが収束せず、着地点が間違っているんじゃないかと思う。遠馬を主人公にしたならそこは遠馬の物語として、遠馬自身が何らかの決断なり行動なりをして終わらせるべきだっただろう。物語が面白いつまらないという以前に物語の構成と展開が下手で、推敲不足、描写技術不足という感じ。このテーマでやるならやるでもっとうまい書き方があっただろう。この内容で芥川賞を「もらっといてやる」とはよく言えたもんだなと思うし、こんなのを評価してほいほい賞をあげてしまう選考委員も両方ともレベルが低いんだな、と現代日本文学の惨状にがっかりする。★★★☆☆【送料無料】共喰い [ 田中慎弥 ]価格:441円(税込、送料込)
2013.05.22
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子供の頃に仲良しだった貴子と永遠子が25年ぶりに再会して別荘を片付ける話。三人称で、永遠子と貴子を交互に書く構成。事件がおきず、登場人物間の対立もなく、物語に緊迫感がないままのっぺりと展開していく。文章自体は下手ではなく、描写の量も十分なものの、内容にまったく面白みがない。描写に強弱をつけずに改行しないまま均一にだらだら出来事を書いているので、何の物語を描こうとしているのか主題がはっきりせず、メンタルモデルが形成できない。つまりは印象に残らない。プロットや登場人物や文飾に面白いと思える点、魅力に思える点がひとつもなく、ただ文章が書いてあったという曖昧な記憶しか残らない。子供の頃に仲良しだった貴子と永遠子が、その後の25年をどういう思想を持ってどういう生き方をしてどういう決断をしてきたのかという人生のメインエベントをすっ飛ばして、子供の頃はあーだったこーだったという仲良しの二人の些細な回想に逃げ込んでしまい、登場人物に魅力がなく共感しようもない。ロマン主義の古典文学が今でも読みつがれているのは恋、復讐、殺人、不倫、戦争といった極限状況にある人間の波乱万丈の人生を書いていて面白いからだけれど、この小説にはそういった物語を面白くする要素がまったくない。ただでさえ別荘を片付けるだけの退屈な物語なうえに興味がない人間の過去の話を聞かされてもますます退屈するだけなのだけれど、作者はそんなことにはお構いなしで、読者を楽しませようとする工夫も気遣いもない。純文学的な仕掛けは貴子と永遠子が共に何かに髪をひっぱられた感じがして危険を逃れたというエピソードで、これは生まれてくるはずだった永遠子の妹が危機を知らせようと髪を引っ張った心霊現象として解釈したのだけれど、物語の本筋にかかわる部分でもなく、なんでこの仕掛けを投入したのか、これで何をしたいのか意味がわからない。作者は時間が流れていくことをテーマにして書いたらしいけれど、そのテーゼに対してアンチテーゼもなく、時間が流れたから何なの?という疑問を残したまま、読者にとっては無駄な時間が流れた。これは読書して無駄な時間をすごしているうちに時が流れて皆死んでしまうことを読者に自覚させることを目的にした虚無主義の前衛文学なんだろうか。もしそうなら体を張って読書の無意味さを訴えたすごく出来のいい無意味な小説だとほめてあげたい。★★★☆☆【送料無料】きことわ [ 朝吹真理子 ]価格:1,260円(税込、送料込)
2013.05.22
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京都の外国語大学の女子大生の乙女たちが『アンネの日記』の暗唱をする話。三人称。バッハマン教授をはじめ、冒頭から個性が強いキャラクターが出てきてコメディとして面白くさくさく読めるのはよい。バッハマン教授がバスに乗ってくる場面は笑える。短文を連ねていく文体はコメディの内容に合っていてよいものの、それだけだと単調で説明不足になっているので場面に応じて転調がほしいところ。物語の構成はアンネ・フランク(アンゲリカ人形)が密告されてゲシュタポのジルバーバウアー(バッハマン教授)に捕まることになぞらえてあって、主人公のみか子が真実を知ろうとしたことで他の乙女から噂を密告されて仲間はずれになることにおびえながらもスピーチコンテストに挑むというもので、元ネタが堂々と提示された上にそれ以外の仕掛けがないとなると物語世界の狭さが露呈してしまってやや興ざめする。暗唱の途中で忘れてしまった言葉がその人にとって大事な言葉らしく、乙女たちがそれぞれ大事な言葉を見つけていくというエンディングはさわやかでよいものの、コメディからシリアスなエンディングにしようとしたことでオチがすべっていて、血を吐いてアンネの名前を語らなければならないとみか子は考えるものの、みか子は血を吐くほど苦労したわけでもなくアンゲリカ人形を抱えて噂から逃げ回っていただけで、どうしてそういう結論に至ったのかよくわからない。アンネがユダヤ人として生きていくことが出来ず、オランダ国籍という他者の要素が必要だったことはわかる。しかしみか子にとっての真実とは何だったのか、なぜみか子は他者になる必要があったのか、乙女とは結局なんだったのか、みか子の噂を広めたのは誰だったのか、麗子様はどこに行ったのか、意味不明でよくわからない結末になった。貴代のアイディンティティ探しの話は伏線回収がちゃんとできているだけに、本編が余計に意味不明に見える。みか子は噂が信じられないというだけで自分が自分でいられなくなりそうという程度の軽薄なアイデンティティで、そんなのをアンネ・フランクと対比させてしまったことでかえって登場人物のくだらなさが際立ち、噂だの真実だのに振り回される乙女全員がくだらなくみえる。乙女を肯定せず、乙女への皮肉のコメディに徹していたらもうちょっと面白かったかもしれない。コメディとしてつまらなくはないものの、芥川賞をあげて期待の新人としてプッシュするほど優れた純文学かというとそうでもない。お嬢様上級生の麗子様はマンガ的なステレオタイプをそのまま登場させていて、面白い人物ではあるけれどリアリティがない。この作者の小説はこれ一冊しか読んでないけれど、純文学よりエンタメのほうが向いてると思う。★★★☆☆【送料無料】乙女の密告 [ 赤染晶子 ]価格:1,260円(税込、送料込)
2013.05.22
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バツイチ絵本作家の静香が、恋人の薫の姪の蛍に紹介された美術館の館長の司と不倫したら、盛のついた蛍が司に色仕掛けしたあげくに自殺してしまう話。三人称。主人公がくたびれた中年男のどこに惹かれるのかよくわからず、まずそこに躓く。ライトノベルでさえない男がもてまくる設定にリアリティがないのと同じで、この小説でも中年男がもてる要素の描写が乏しくて説得力がなく、リアリティがないご都合主義に見える。さらに蛍は状況をひっかきまわすだけで何をしたいのかよくわからない。静香と司の愛を確かめるために司に色仕掛けするとか、なんじゃそりゃー。なんじゃそりゃー。となんじゃそりゃーを連呼したくなるくらい動機がよくわからずなんじゃそりゃーになってしまう。蛍は静香に憧れすぎてそんな行動をとっているらしいのだけれど、そもそもバツイチの静香が思春期の少女が憧れるほどかっこいい女として描写されているわけでもなく、これもリアリティがない。最後に蛍が自殺して、静香の不倫の代償を他人に払わせるオチというのもなんじゃそりゃー。作者は状況をぐちゃぐちゃにすることでドラマチックにしたいのかもしれないけど、ドラマチックを通り越してなんじゃそりゃチックというくらいリアリティがなくてなんじゃそりゃーです。セックスの描写が一番わけがわからずなんじゃそりゃーになる。「ふたりがほとんど同時に、叫びに近い声を放って真空の中に踊りだし、次に五倍もの重力で低く落下していったあと、静香は長く伸ばした体で薫の体重を支えながら、やはりあるかなしみを視ていた」という描写があるけれど、五倍の重力ってなんじゃそりゃー?トップロープから雪崩式フランケンシュタイナーを食らったのか?カウント3でIWGPのベルトを奪取されたのか?と突っ込みたくなるなんじゃそりゃー具合で、ギャグ小説としてみるとシュールで面白い小説なのかもしれない。★★★☆☆
2013.05.22
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「マッチ売りの少女」「みにくいアヒルの子」などの童話集。有名な童話はすでに知っているし、文章にも工夫が乏しいのであまり新しい発見はない。「ブタ飼い」は求婚を断られた王子がブタ飼いに変装して姫からキスしてもらっているところを王に見つかって二人とも城を追い出され、駆け落ちしてハッピーエンドで終わるかと思いきや、王子が姫を罵倒して拒絶して終わるという内容で、これが童話なのかと思うとなかなかシュールで面白かった。★★★☆☆
2013.05.11
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貧乏詩人の高村光太郎が妻の智恵子と出会ってから死別するまでを書いた話。三人称。神の視点で光太郎の内面まで描写してるのに、「光太郎は智恵子に奉仕することを楽しみにしているように見えたものである。当人はむろん知るまい。わたくしがそう思うだけなのだから」といきなり作者の視点が出てくるのは視点の統一ができておらず、物語のリアリティを損ねる。智恵子抄というわりには光太郎視点の場面が多く、なぜ智恵子が精神を病んだのかという智恵子の苦悩の核心部分に切り込んでいかないのも物足りない。とはいえ東京には空がないという名言を残した智恵子の自然に対する感性はよく表現されていてよい。★★★★☆
2013.05.11
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1987-89年に大学生の久志と理恵が大人ぶってスタイリッシュに付き合っていたけど別れる話。三人称。酒と車とデートのエピソードばかりで物語が軽薄で、その上文体も軽くて描写不足で、登場人物の人間性が見えてこない。ひねりも伏線もないまま時系列順に物語が展開して、プロットにも文飾にも見所がない。バブル期の東京の大学生という狭い世界を舞台にしていて、恵泉の子とか駒沢通りのアンデルセンとかいわれても地方在住の人は恵泉女学園もアンデルセンというパン屋チェーンも知らないだろうし、作者は固有名詞を出しっぱなしにしてわかる人だけわかればいいという態度で説明を放棄している。実在する固有名詞をたくさん出せばリアリティがでるというものでもなく、肝心の登場人物のリアリティがないのでは恋愛小説として失敗だろう。内容は賞味期限切れで、バブル期に大学生だった人(つまりは作者と同年代の人)しか共感しようがなく、あえて現代に読むほどの魅力はない。★★★☆☆
2013.05.02
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