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小説にリアリティを出す方法を解説した動画を作りました。私の父は夜9時のサスペンスドラマが好きなのですが、刑事の知り合いのおばちゃんが捜査にしゃしゃり出てくるようなリアリティがない設定だと「なんだニセモノか」と開始5分でチャンネルを変えてしまいます。作品の冒頭部分だけでリアリティの水準は判断できるし、読者が要求するリアリティの水準と合わない作品は読者にとって面白い作品にはなりにくいです。「小説家になろう」というサイトは異世界転生小説を書きたい作者と、リアリティが乏しい作品で満足する読者のリアリティの水準が一致しているので流行っているのだろうと思います。
2019.07.29
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高齢化で5080問題が顕在化して、ようやく政府は就職氷河期世代が生活保護を受けだしたら大変なことになるぞと気づいていまさら対策しようとして3年で正規雇用を30万人増やすといっているけれど、名ばかり正社員になったところでもう婚期は過ぎているしどうせ年金はもらえないし長生きしてもしょうがないしいろいろ手遅れなのである。最近は就職氷河期世代の犯罪が起きているけれど、犯罪というのは社会の縮図で、家庭や学校教育に問題があると非行少年が出てくるし、経済に問題があって不景気になると詐欺や窃盗や強盗が起きるし、政治に問題があって不正や汚職がはびこるようになるとテロが起きる。就職氷河期世代は思春期から現在まで問題だらけのなかで生きてきたので、失うものがない無敵の人になる人も出てくる。5ちゃんねるによくあるような犯罪者や犯罪者予備軍は全員死刑にすればいいという極論は独裁国家でもない限り実行不可能なので、犯罪をなくすためには社会問題を解決して社会の底辺の人を救済しないといけない。就職氷河期世代を生み出した当事者である自民党の政策はあてにならないので、何か就職氷河期世代を救済する政策はないか考えることにした。●社会的救済・短足おじさん制度を作る独身の氷河期おじさんが孤独を紛らわそうと思って公園にいっても、児童を眺めているだけで事案発生になる。そうしておじさんをむやみに危険視することがおじさんの孤立につながる。金持ちの足長おじさんは好き勝手に子供に援助して孤児を養子にしたりできるけれど、心優しい貧乏な短足おじさんは援助するほどの金がない。そこでクラウドファンディングで児童養護施設の子供におもちゃを援助したり、ランチをおごったりして、短足おじさんが少額で子供を援助できるようにして孤独なおじさんが他人の子育てに間接的に参加できるようにすれば、孤独なおじさんが社会性を持てるようになって失うものがない無敵の人にならずに済む。・非正規差別をなくすための団体を作る就職氷河期世代だけが少ない企業や、正規雇用に切り替えないために雇い止めをした企業や、非正規労働者がエレベーターや食堂などを使えない企業を反社会的差別企業としてつるし上げて、糾弾会を開いて経営者を再教育したり、株主総会で圧力をかけたりする。・中年海外協力隊を作る閉塞感がある日本で他人の目を気にしながら生きるのは嫌だという人を政府が海外に集団移住させて能力を発揮できるようにする。ついでに中年海外協力隊のおじさんにはベーシックインカムを支給して、協力するモチベーションがどのくらい保てるのか実験すればよい。●金銭的救済・失職徳政令就職活動をしてお祈りされた回数や非正規雇用の雇止めで失職した回数の分だけ税金や奨学金やローンの金利を減らしたり返済期限を延ばしたりして、安易に自己破産や生活保護に頼らないように就職活動にインセンティブを作る。・遺産相続宝くじを売る身寄りのない人の遺産は最終的に国庫に帰属するけれど、そういう身寄りのない金持ちの遺産を資金源にした宝くじを貧乏人限定で格安で販売して、金持ちと貧乏人の格差をなくす。・中間搾取の透明化派遣社員や下請けの一人親方やフリーランスが仕事を紹介した企業に何割抜かれているか公開するのを義務付けたり、搾取上限値を設けたり、原発作業員の給料が元値の1/10になるような上限値を超える多重搾取を違法にしたりして、現場で働く人に直接金が回るようにする。●精神的救済・宗教団体を作る就職氷河期教という宗教団体を作って、氷河期神社にうつや過労で死んだ就職氷河期世代を祀って弔ったり、社会に不満をもつ就職氷河期世代の相談に乗って社会への恨みがテロに向かわないように昇華させる活動をする。宗教活動をしながら生活保護を受ければ路頭に迷うこともなくなって人生の目的もできて平和に暮らせる。・就職氷河期記念館を作る圧迫面接や人格否定の洗脳社員研修や過酷なノルマやサビ残やサイコパス上司の長時間叱責パワハラを体験できるキッザニアのような施設を作って、過労死大国の日本が後世に残すべき負の世界遺産として就職氷河期世代の様子を語り継ぐ。就職氷河期世代が企業にどれだけ虐げられて精神的に追い詰められていたのかを他の世代に知ってもらって同情してもらえれば救済になる。職にあぶれている就職氷河期世代の人を従業員として雇えば雇用の創出にもなる。・AIメンターを作る非正規の仕事を転々とする人は職場の上司や同僚との縁も薄いし親との仲も悪いので、転職や健康問題や法的手続きなどの相談をする相手がいない。受けられる福祉サービスがあっても自分がどういうサービスを受けられるのか探しにくいし、どうすればいいかわからない中で一人で何でもやらないといけないことが精神的ストレスになるし、忙しい中でいろいろな手続きや支払いに追われてミスをしてつまづく原因になる。そこでAIメンターがいて相談に乗ってくれるとストレスが軽減される。例えば年収が下がったら自分で調べなくてもAIメンターが自動的に年金の免除申請の仕方を調べてきて解説したり、ブラック企業に就職したら法テラスの使い方を解説したりして、AIメンターが生きるためのガイド役になると孤独なおじさんでも生きやすくなって、ひきこもりおじさんが火葬の手続きがわからなくて親の死体を放置したままにするような事態がなくなる。・無料の公営猫カフェを作る保護猫を集めた無料の公営猫カフェを作って、つらいときはいつでも無料で猫まみれになれるようにすると猫を飼えない貧乏で孤独なおじさんが癒されるかもしれない。●身体的救済・大麻を合法化する安くて栽培しやすい大麻で脳をぽやーんとさせて苦痛を忘れさせてピースでポジティブな愛のバイブスで救済する。・健康管理クーポンを配る金がないせいで健康管理がままならない非正規雇用の人が低額で健康診断やマッサージなどを受けられるように、所得が低い人に医療サービスが割引になるクーポンを配る。病気で失職すると結局は生活保護で医療費を払うことになるので、重症化するまえに病気を予防できれば総合的な医療費は減らせるかもしれない。もし私が政治家になったら、就職氷河期記念館を作ってこの世の絶望を詰め込んだ世界を再現してみたい。サイコパス経営者のろう人形コーナーは充実すると思う。
2019.07.25
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私はアニメ好きというわけでもないし、京都アニメーションが制作したアニメはほとんど見たことがないけれど、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『けいおん!』といったアニメが人気だということは知っている。人間が知識と技術を身につけるには長い年月がかかるけれど、失うのは一瞬である。犯人の動機は不明だけれど、盗作されたという妄想系の精神病の可能性があるようである。こういう被害者に何も落ち度がない逆恨み系のテロの恐ろしい点は、どこでも起こりえて、誰でも被害者になりうるというところである。オウム真理教のような組織犯罪なら公安が監視できるけれど、個人による突発的なテロを防ぐのは難しい。今回の事件も川崎殺傷事件のようにネット掲示板には犯人が許せないというコメントがあふれている。しかしそもそも犯罪の被害者が出ないようにするには、犯罪者がでないようにするしかない。この残虐な犯人が許せないというのは当然だし、私は犯人を擁護するわけではないけれど、その犯人だって犯罪をする前の段階で環境がよければ犯行を思いとどまる可能性だってあったかもしれない。家族が精神病の治療をさせていたり、友人が諭したりしていれば極端な思考や行動には至らなかったかもしれない。秋葉原通り魔事件の加藤智大は掲示板のユーザーが煽らなかったら犯罪をしなかったかもしれない。川崎殺傷事件で小学生を殺して自殺した岩崎隆一も社会的に孤立していなければ救われた可能性だってあったかもしれない。ではどうしたら犯罪が起きないようにできるのかといえば、社会の底辺の人の教育や仕事が家庭が充実して希望を持って幸福に暮らせるように底上げしないといけない。被害者がかわいそうだ、犯人が許せないという段階で思考停止せずに、どうしたら次の犯罪者を生まずに済むのか考えて社会を変えない限り、同様の事件はいつでも起こりうる。小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンが「日本人は分析をしない」と東洋経済の記事で言っているように、日本人は何かの出来事があると感情的に一時的に騒いでしばらくすると忘れてしまう。三島由紀夫はそういうからっぽの日本人の気質に気づいていて、『果たし得ていない約束―私の中の二十五年』という随筆で「これからの日本に大して希望をつなぐことができない」と言っていた。三島が危惧したような日本人の劣化はどんどんおきていて、バブル時代のキープ君とか、2000年代の勝ち組・負け組や自己責任論とか、金持ちが増えるにつれて金の有無で人間を蔑む態度が露骨になってきた。文化人はそれを批判するどころか流行に乗ってセレブや美男美女を持ち上げて、小説家もタレント気取りでテレビに出て小銭を稼いで浮かれるようになって、今だけよければよい、自分だけよければよい、金だけ稼げればよいと弱者の苦悩には見向きもしない。しかし作用には反作用があるもので、金持ちが増えた一方で貧乏人も増えた。自己責任の社会というのは勝ち組がうっぷんをためた負け組に殺されても被害者が危機管理を怠った自己責任だという恐ろしい社会である。自己責任論を喧伝して搾取を正当化してきた勝ち組の人たちは自分たちがどんな恐ろしい社会を作ってきたのか自覚していないので、社会の底辺になったのは自己責任なので死ぬなら一人で死ねと寝ぼけたことをいっているけれど、その慈悲のない態度が恐ろしいモンスターを育てたのだ。文系は役に立たないからいらないといってヒューマニティーを捨てて金儲けに励んだ社会の結果として、守るものがない人が捨て身で文明を破壊する社会になった。フィクションにはしばしばドラゴンだののモンスターがでてくるし、モンスターハンターやらモンスターストライクやらのゲームも人気だけれど、現実世界の人間が戦うべきモンスターというのは文化や文明を破壊しようとする他の人間である。正義を振りかざすモンスターもいるし、狂気や妄想にとりつかれたモンスターもいる。反移民思想で移民受け入れ派の子供を狙って大量殺人したノルウェーのブレイビクや、ニュージーランドのモスクを襲撃して大量殺人したタラント、知的障碍者は生きる価値がないと決めつけて大量殺人した植松聖、アフリカで教会を襲撃するボコ・ハラムやらイスラム原理主義者やらメキシコの麻薬カルテルやらアメリカで銃乱射をしたりする人やらが現代のモンスターである。私は無神論実存主義者なので、個々人が文明の建設に参加することが人生の希望になりうると考えているけれど、就職氷河期世代というのは新卒で社会参加を拒まれて非正規雇用で使い捨てられて、中年になったらキャリアがない役立たずとして蔑まされて、高齢者になったら生活保護で社会保障を圧迫する存在として疎まれて、金もなく結婚もせず希望のない世代である。その世代が社会的に孤立して犯罪を起こしている。では誰が就職氷河期世代を救えるのか、文明を破壊するモンスターを退治できるのか。中国のような人権無視の監視社会で信用スコアをつけて治安を乱す人間を徹底的に排除するというのも一つのやり方だけれど、私は思想の自由がない社会は嫌である。私は言葉には世界を変える力があると思うので、文学こそが希望を描いて、社会をよくするために戦うべきだと思う。フィクションを作る側の人は物語を面白くするために過激な殺人やら復讐やらを描くけれど、本当にフィクションは社会の役に立っているのか、モンスターを育てる側になっていないか、フィクションの在り方を問いなおすべきだろう。個人として社会を良くするためにとれる行動としては、投票に行くことで社会を変えられる可能性があるのだから、犯罪が起きてほしくないと思う人こそ誰に投票したら社会が良くなって治安が良くなるのか考えて投票に行かないといけない。
2019.07.19
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因果関係、目的の達成、ジンテーゼで物語を終わらせる方法について解説した動画をアップロードしました。小説投稿サイトだと小説を書き始めても途中で飽きて続きを書くのをやめる人が多いようですが、それだと物語の終わらせ方の練習にならないので、文学修行中の人は終わりまで書くとよいですよ。
2019.07.16
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小説の書き方がわからない人向けに、ロシア・フォルマリズムに基づく小説の書き方を解説する動画を作りました。喋って解説しようと思ったのだけれど、1年に3時間くらいしか言葉を発しない生活をしていたら猫がニャーニャーいうような声しかでなくなったし、壁の薄い部屋なので大きな声も出せないので、私の声をつけても邪魔になるだけだと判断して結局テキストだけの動画にしました。今後は人称や焦点についての動画や、オチのつけ方についての動画など、小説の書き方を解説する動画をシリーズ化する予定です。↑(2021年7月更新)音声ソフトのCeVIOを買ったので音声をつけることにしました。トマシェフスキーの文学理論は水野忠夫編『ロシアフォルマリズム文学論集2』に書いてあるので、詳しく知りたい人は読んでみるとよいですよ。ロシア・フォルマリズム文学論集(2) [ 水野忠夫 ]
2019.07.11
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感覚、学習、記憶、言語、性格など、心理学の一般的なトピックを広く浅く網羅した入門書。●面白かったところのまとめ・知能の遺伝の要因ダーウィンの従兄弟のゴールトンは歴史的に著名な人物の家系を調べて、優れた才能をもつ人を生んだ家系からはほかにも優れた人物が出ており、その率はその人との血縁関係が濃いほど大であるという事実を発見した。ラインエールの研究では両親ともに優秀な場合には子供の70%が優秀な知能を持ち、両親ともに知能が低い場合には子供の60%が知能が低く、子供の知能程度が親の知能程度に類似する傾向が示されている。・個体保存の要求個体の生命維持に直接関係する個体保存の要求は、呼吸の要求、苦痛排除の要求、水分補給の要求、排泄の要求、睡眠と休息の要求、食物補給の要求の6種類あり、どれか1つが欠けても個体は死に至る。食欲に関しては社会的要因ないしは環境の要因が影響を与える。ベイヤーの観察では、満腹状態の1羽の鶏のところに空腹な鶏を1羽入れるとその鶏が食べるのを見て満腹のはずの鶏も再び食べ始めて、60%多く食べた。空腹の鶏を3羽に増やすと満腹な鶏が食べる量はさらに増した。満腹な鶏が多くて空腹な鶏が1羽の場合は満腹な鶏はそれ以上食べようとしなかった。・非行少年の性格特性第1のタイプは性格的に直情的(自己抑制力が弱い)で、権威を軽視し、享楽的な態度を示すグループ。第2のタイプは性格的に自己顕示欲が強く、かつ他人からの称賛を求める欲求も強い。権威への反発は強くなく、対人関係も大切にするが、意思が弱くて遊び志向が強い。第3のタイプは、承認欲求が強いが自信がなく、消極的に自分をまわりに合わせていくという性格特性を示す。金銭や流行など精神的なものよりも物質的なものを重視する。●感想この本は200ページ程で2-3時間くらいあれば読めるので、入門書としてはよい。私が読んだのは1996年の改訂版で古くて、定説化した昔の研究が中心なので古いからといって特に間違っているということもなさそうだけれど、脳科学の発見が取り入れられていないので脳の認知機能に関連した情報が欲しい人はもっと新しい本を読むほうがよい。昔勉強した事をおさらいすると以前は気づかなかったことに気づいたりするので、私は大学の教科書に使われるような入門書をブックオフで中古で買ってたまに読むのだけれど、今回も発見があった。ゴールトンの家系の研究だと、昔の人が優秀な家系と政略結婚したのは優秀な子孫を残すために合理的な判断だといえる。しかし現代は才能が細分化されて、優秀さを測る基準がよくわからなくなって、身体能力が優れたスポーツ選手でもバカだったり、金持ちでも親から相続した株や不動産を運用しているだけで経営センスがなかったり、東大卒で博士号持ちなのにルーピーだったりする。あるいは家系を無視して自由恋愛をして遺伝的な相性がよくて惚れたとしても、政治や宗教の思想が違ったり、仕事が忙しすぎてうまくいかないこともある。政治も宗教も細分化しているし、食生活もベジタリアンだのヴィーガンだのと細分化している。そういう点では現代人が長期間ストレスなく一緒に生活できる結婚相手を選ぶことは昔に比べてものすごく難しくなっていて、個人の幸福を追及するなら結婚しないほうが幸福になれる場合があるので、非婚化や晩婚化は単に金がないことを原因にはできないんじゃないかと思う。離婚率は35%くらいあるし、殺人事件のうちで親族間の殺人が40%くらいあるし、変な相手と結婚するくらいなら独身のほうがいいやという考え方も道理がある。AIによるマッチングで最適な相手が見つけやすくなったら、今みたいに男性の年収を最優先するような婚活の状況が変わって少子化対策になるのかもしれない。マレーが心理発生的要求として挙げたものとして、「その他社会的要求」として遊び、求知、解説があるけれど、遊びというのは無駄にふざけているのではなくて知的欲求に結び付いたものである。スパルタ教育をして子供の遊びを許さない親がいるけれど、遊びの欲求を押さえつけるのは脳の発達を阻害して教育的に逆効果になりかねない。遊びは子供っぽい行為だとみなされがちだけれど、ルーチンワークで創造力がなくなりがちな大人こそ趣味を持って遊んで脳に刺激をあげるほうがよいと私は思う。ベイヤーの鶏の食欲の観察は面白くて、たとえば大食いチャレンジをしていて終盤で満腹になってペースが落ちてきたときに、空腹な人を数人連れてきて周りでガツガツ食べさせたら満腹な人の食べる量も増えるのかもしれない。金銭欲は心理学だと2次的欲求の社会的欲求にあたるようだけれど、金持ちになって承認欲求を満たす以前に、現実的に金がないと食物補給できないし、快適な寝床を確保できないし、種保存の要求も満たせないので、金銭欲は人間の欲求としてはかなり強い欲求なんじゃないかと思う。この金銭欲の強さが資本家の搾取による格差だの、ブラック企業だの、結婚相手に求める年収が高すぎて婚期を逃すだのの現代社会の問題の根源になっている。この欲に歯止めをかけるのが道徳である。道徳的要求というのがないにもかかわらず、宗教者のように修身に生涯をささげる人がいるのは本能を意思で制御しようとする試みである。人類が小さな集団で生きている間は猿のように本能的に暴力でグループを服従させて支配していればよかったけれど、大きな集団で本能的に要求を満たそうとすると集団の秩序を維持できなくなる。そこで善悪という観念を作って本能に後天的な制限を加えて秩序を保つわけである。人類が前頭葉を発達させて大規模な文明を作るようになったのは数千年前で割と最近の話なので、まだ本能を制御する仕組みが十分に備わっていないので、強い理性が必要になる。しかし個人の理性で制御できるのは個人の行動だけなので、個人の道徳に頼るだけでなく、社会制度にも道徳を組み込まないと社会が荒廃する。古代ローマは個々人は道徳があっても道徳がない暴君が君主になったせいで失敗した。個人の教育が不十分な中世は宗教が道徳を担ったけれど、宗教も権力の一部になって腐敗して失敗した。プロテスタントは稼ぐことを正当化して社会が発展した反面、領土を拡大したがって帝国主義になって戦争ばかりして失敗した。現代の民主主義は為政者の権欲を制限して言論の自由によって権力を監視した点で道徳的な効果があったけれど、資本主義は金を稼ぐほど評価されるので金銭欲を制限できないどころか増幅させて、株主が経営者の抑止力にならない点に問題がある。金銭欲を社会システムとして制御する方法として共産主義がでてきたけれど、共産主義は権欲と結びついて党の独裁につながって腐敗して失敗した。社会的指導者層の金銭欲と権欲を制限するいいとこどりのシステムは何かあるのだろうかと考えてみると、資本主義で高額所得者の所得税や相続税を高くしてその分褒章とかの承認欲や名誉欲で欲求不満を代償する方法がある。アメリカは寄付が節税になるので高額所得者が積極的に寄付をしてハイソサエイティで名誉を得られるシステムになっている。しかしLIXILの潮田会長みたいに名誉より金を優先する人はタックスヘイブンの外国に行ってしまうので、ハイソサエイティのような規範を共有するコミュニティに属さなくて愛国心がない人には効果がない。じゃあ愛国心を持つことが大事なんじゃないかという結論になる。道徳を学習する臨界期はあるのかも気になる。道徳は善悪の知識の記憶ではなくて衝動を押さえる前頭葉の働きなので、大人になって脳が発達しきった後では道徳は学びえないとしたら恐ろしいことである。叱らない子育ての失敗談なんかが典型的で、すぐにかんしゃくを起こしたり暴力をふるったりする理性がない大人になるそうで、欲を抑制するために前頭葉をうまく使えないので欲求不満になって無禁止や退行といった行動が顕著に出るわけである。投資詐欺とかの経済犯罪なんかはいったん楽に稼ぐことを覚えたら捕まっても反省しなくて出所したら同様の犯罪を繰り返す。振り込め詐欺で39人から1億4600万円をだまし取った主犯は懲役20年だそうだけれど、これでもまだ苦労して働くよりも割に合うと考える人がいるかもしれない。刑務所が更生施設として役に立たないなら犯罪をするインセンティブがなくなるほど刑期を長くするくらいしか対策がないのではなかろうか。認知症になって前頭葉が委縮すると暴言を吐いてキレる老人になるけれど、人間が道徳を失うように運命づけられているというのは皮肉である。最近はTim MaiaのO Caminho Do Bem(善の道)という曲が気に入ったのだけれど、芸術が道徳心を喚起できるとしたらやっぱり芸術は社会の役に立っていると言えるような気がする。★★★☆☆【中古】 心理学 改訂版 /詫摩武俊(編者) 【中古】afb
2019.07.09
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スペイン系アメリカ人の口承文芸研究者のアウレリオ・エスピノーサが収集した280話の民話集から82編を選んで翻訳した本。『グリム童話集』の民話集が採集されたままではなくて編者の手が加わっているのに対して、エスピノーサは聞いたままの方言表記で書いていて脚注も充実していて欧州の昔話研究の必読者というほど学術的な価値があるそうである。●感想謎話、笑い話、教訓話、メルヘン、悪者話、動物昔話、だんだん話というカテゴリで分類されている。しかし笑い話があまり笑えない話で、「乞食」は乞食の変装をして姉妹が留守番をする家に泊めてもらった男が窃盗をした挙句に妹を誘拐して逃げられたら殺人しようとする話だけれど、なぜ悪者話でなくて笑い話に分類されているのか、どこが笑えるのか謎である。笑い話といっても漫画日本昔ばなしのようなほっこりした笑い話でなく、殺人や誘拐の失敗談のブラックユーモア系の笑いが多くて、中世人の倫理観が現代人とは根本的に違うようである。現代人の感覚だとなんじゃそらというようなナンセンスやツッコミどころが満載で、例えば「兵士のフアン」はキリストが死んだ娘をよみがえらせて父親から代金をもらうけれど、キリストが金とるんかい、ドラクエの教会やないか、とツッコむ練習になる。こういう本は酔っぱらって読むとわけがわからなくて面白い。物語の構成としてはプロップの昔話の分析のようにパターン化されていて、間抜けが予想外のことをやってひどい目にあうパターン、誰かが出産したときに悪魔が手紙を書き替えて鼠を産んだとか犬を産んだとかで母親が追放されるパターン、何かを3回繰り返すパターン、兄弟や仲間が裏切って宝を横取りするパターン、魔女に捕らえられた王女を助けて結婚して終わるパターンとかがある。悪者がうまく犯罪をやったら悪者話で、懲らしめられたら教訓話になるようである。動物昔話は狼が騙されてひどい目にあって死ぬパターンが多くて、なんで狼が目の敵にされているのかよくわからない。日本文学と関連があるのは芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の原話の「聖女カタリーナ」で、天国に行った聖女カタリーナ(1347-1380、イタリアのシエナの修道女)が地獄に行った母親を天国に入れるように聖母マリアに頼んだら母親につかまって地獄の亡者がついてきて、天国に上りたかったら聖女を娘に持てと母親が悪態をついたせいで天国に入れなくてまた地獄に落ちて、聖女カタリーナは一緒に地獄に行ったという教訓話である。ヨーロッパだと聖ペテロの母が一度だけ乞食に恵んだ玉ねぎの葉を伝って天国に上がろうとする場合が多いそうな。こういう民話はフィクションに慣れた現代人が読んでも物足りないけれど、現代のフィクションにいろいろ影響を与えているという点では興味深い。謎を解くとか王女を助けるとか城のトラップが発動して猛獣が出てくるとかはファンタジーによくある展開だし、悪者が活躍する話はスペインのピカレスク小説だけでなくサスペンスやホラーやクライムアクション映画とかにもなっているし、動物同士が騒動を起こす話はディズニーとかの子供向けのアニメになっている。しかし女房が聖職者と浮気したとかの宗教絡みのエロ系の笑い話は現代のフィクションからは消えていて、これは社会からキリスト教の影響がなくなって聖職者が権威ではなくなってもはや嘲笑する対象ではなくなったうえに、ポリコレでフィクションから宗教色が排除されたからなのだろう。じゃあ現代人は何を笑っているのかというと、『サウスパーク』のケリーがひどい殺され方をするあたりに昔の笑いに似たブラックユーモアが残っている。あるいは他人の失敗の動画やYouTuberがいたずらを仕掛けたりするのが笑いのネタになっていて、間抜けを笑うパターンが昔の笑いと似ている。いたずらを仕掛けて普段見せない表情や反応を引き出すというのは動画ならではのやり方で、そういうえばいたずら小説というのはあまり見たことがない。小説の登場人物は作者のコントロール下に置かれているので、いたずらをして感情を引き出す意味がないのである。★★★☆☆スペイン民話集 (岩波文庫) [ アウレリオ・マセドニオ・エスピノーサ ]
2019.07.03
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