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2015.01.16
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カテゴリ: 小説
アラサー独身ニートが縁談を断って友人の妻とチョメチョメしたら家族に絶交された話。

●あらすじ
不景気でインフレの最中に金持ち親父に頼ってアラサー独身ニートの長井代助がアホ書生門野と女中の婆やと一緒に遊んで暮らしていると、疎遠になっていた中学の同級生平岡が仕事を首になって職探しをしに来て再会したら、平岡の細君の病弱な三千代が平岡の借金を払うために金を借りにやってきたものの代助には金がないのでビジネスマンの兄貴の誠吾に頼むものの断られる。三千代は代助と平岡の友人菅沼の妹で、菅沼の母と菅沼が死んだ後に代助は平岡と三千代の結婚を取り持った仲なので三千代を助けてやりたくなって嫂の梅子に借金を頼んでも自分で働けと断られるものの、結局ちょっと貸してくれたので三千代にやる。平岡は新聞社で働くことにする。代助は親父に佐川の娘と結婚するように言われるものの三千代が好きなので、三千代との関係を絶つために結婚しようかと考えるものの、やっぱり縁談を断ることにして三千代に告白して、父親からはもう世話をしないと言われる。代助は平岡の留守中に三千代としばしば会うものの、三千代が病気になって原因は代助に聞けと平岡に言ったので、代助は平岡に一部始終を話して絶交されて、平岡が代助の親父に代助の所業を手紙で知らせたせいで家族からも絶交されたので職探しに行くことにする。

三人称の神の視点で時系列順に書く構成。

・良い点
長編小説として描写がきちんとできている。テンポのいい会話で場面を展開して、場面が落ち着いたところでやや長めの説明を入れて人間関係や人物像を補足している。基本的な描写のテクニックがしっかりしているので安定して読み進めることができる。金を使い込んだだの借金の無心だのという話がいかにも金にルーズな明治時代という感じで、その時代の特徴が出ていてよい。

・悪い点
三人称の神の視点にもかかわらず、代助のことしか書かないのでプロットが単調になっていて神の視点のメリットをあまり活かせていない。神の視点だと自由に物語を展開できるので、平岡や三千代や代助の親父の立場から見た出来事も書けばもっとプロットが複雑になって心理の重層性が出て面白くなっていたかもしれないものの、ニートがぶらぶらする様子を延々と描写してしまって物語に緊迫感がなくて飽きる。
プロットは平岡の謎の借金の理由→ギャンブルで夫婦不仲、代助が結婚しない理由→三千代が好き、代助が三千代を好きだったのに平岡との結婚を世話した理由→平岡も三千代を好きだったから友情のために譲った、というくらいしかないのに、代助が美千代が好きだということに言及されるのがようやく物語が半分を過ぎたあたりで、物語展開が遅すぎる。そのくせに肝心な三千代との恋愛や平岡との友情のエピソードは端折られていて、終盤が盛り上がらない。
Wikipediaによると妻側からの離婚請求が認められるようになったのは明治6年の太政官布告からであるらしく、この物語は日露戦争後の話なので妻側から離婚請求ができるのに、三千代が離婚を検討していないという点も不自然。三千代が平岡と離婚して代助と結婚していたら万事丸く収まっていたかもしれないのに、わざわざ旦那に不倫をうちあけるなんてアホじゃないかと思う。悲劇的結末の姦通小説を書こうとする作者の思惑に沿った展開にしてしまって、人間の心理のリアリティを損ねていて、三千代をプロット上の都合のいい女として扱っている。恋愛小説では主人公とヒロインの両方が重要なのに、三千代の存在感が欠けている。
書生の門野と婆やはプロット上の役割がほとんどなく、雑談相手という以外に存在意義がない。父親からの援助がなくなることで代助は餓死まで考えるくせに、門野と婆やの処遇をどうするのかという点にまったく言及していないのも不自然。
平岡が代助と絶交する際に借りた金を返さないのもよくない。

あと、物語の筋とは関係ない部分で面白かったのが代助が働かない理由。
「何故働かないつて、そりや僕が悪いんぢやない。つまり世の中が悪いのだ。もつと、大袈裟に云ふと、日本対西洋の関係が駄目だから働かないのだ。第一、日本程借金を拵らへて、貧乏震ひをしてゐる国はありやしない。此借金が君、何時になつたら返せると思ふか。そりや外債位は返せるだらう。けれども、それ許りが借金ぢやありやしない。日本は西洋から借金でもしなければ、到底立ち行かない国だ。それでゐて、一等国を以て任じてゐる。さうして、無理にも一等国の仲間入をしやうとする。だから、あらゆる方面に向つて、奥行を削つて、一等国丈の間口を張つちまつた。なまじい張れるから、なほ悲惨なものだ。牛と競争をする蛙と同じ事で、もう君、腹が裂けるよ。其影響はみんな我々個人の上に反射してゐるから見給へ。斯う西洋の圧迫を受けてゐる国民は、頭に余裕がないから、碌な仕事は出来ない。悉く切り詰めた教育で、さうして目の廻る程こき使はれるから、揃つて神経衰弱になつちまふ。話をして見給へ大抵は馬鹿だから。自分の事と、自分の今日の、只今の事より外に、何も考へてやしない。考へられない程疲労してゐるんだから仕方がない。精神の困憊と、身体の衰弱とは不幸にして伴なつてゐる。のみならず、道徳の敗退も一所に来てゐる。日本国中何所を見渡したつて、輝いてる断面は一寸四方も無いぢやないか。悉く暗黒だ。其間に立つて僕一人が、何と云つたつて、何を為たつて、仕様がないさ。僕は元来怠けものだ。いや、君と一所に往来してゐる時分から怠けものだ。あの時は強ひて景気をつけてゐたから、君には有為多望の様に見えたんだらう。そりや今だつて、日本の社会が精神的、徳義的、身体的に、大体の上に於て健全なら、僕は依然として有為多望なのさ。さうなれば遣る事はいくらでもあるからね。さうして僕の怠惰性に打ち勝つ丈の刺激も亦いくらでも出来て来るだらうと思ふ。然し是ぢや駄目だ。今の様なら僕は寧ろ自分丈になつてゐる。さうして、君の所謂有の儘の世界を、有の儘で受取つて、其中僕に尤も適したものに接触を保つて満足する。進んで外の人を、此方の考へ通りにするなんて、到底出来た話ぢやありやしないもの――」
これは現代の日本にも当てはまる話で、借金まみれなのに先進国面してODAをばら撒いて、国民はブラック企業でこき使われてうつ病になり、ニートは働いたら負けだといふ。日本は明治時代よりは物質的には豊かになったものの、本質的なところでは金にルーズな借金体質で明治時代から進歩してないんぢやないかと思つたのである。

★★★☆☆







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最終更新日  2016.02.11 00:05:21
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