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2016.01.09
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カテゴリ: 教養書
20世紀の美術を還元的情熱として位置づけて、抽象的な形態や色彩をミニマルに還元していった芸術家と作品について解説した本で、主に20世紀前半のヨーロッパの美術と20世紀後半のアメリカの美術を取り上げている。
客観的な情報ではなく、20世紀の美術に否定的な主観的な意見が書いてあるので読者によっては好き嫌いがあるだろう。200ページ弱で情報量としては少ないものの、門外漢には見所がさっぱりわからない現代美術を理解するのに十分な情報が書いてあってよい。
マチスの色彩と形態の単純化、デュシャンのテクノロジーの還元、印象派の点描による対象と目の原理的還元、セザンヌの空間の意識、空間のフレームとものを同時に描こうとしたキュビズムのものの前の段階の骨組みを書くことへの還元と遠近法以前の視点への還元、シュールレアリスムの無意識による意識の還元、ポロックのドリッピング技法によるもののイメージからの解放、モンドリアンの空間の単純化、という具合に芸術家たちは様々な角度から還元をしていって抽象的になって、現代美術はエントロピーが増大するように荒涼とした砂漠になったのだそうな。
そしてアメリカの美術はサブライム(崇高)というあり方で存在していて、やたら巨大な絵、1kmのパイプをバラバラにして並べた作品、砂漠にブルドーザーで1マイルの直線をひいた作品、避雷針をたくさん立てて嵐のときに雷が見れる作品、巨大な鉄の立方体の作品、島をラッピングして普段とは違う風景にする作品、黒一色の絵、不在の作品化とか、何かわからんけど強くて巨大でスゲーなというサブライムな感じのものが美術なんだそうで、著者はそのようなメインストリームの美術は無味乾燥で人間的要素が欠如していて、一過性で次の世代へ伝承しえない技術レベルで、抽象表現で人間的世界は広がったものの、もうそれ以上先には人間的世界は広がらっていない表現行為の限界で、認識が解体されて表現が形式に行き着いて内容が消えるという「均質化の危機」が訪れるのだと否定的にとらえている。

文学でも美術と似たような還元が起きている。20世紀前半には批評分野ではロシア・フォルマリズムや構造主義や記号論による単語や音節やプロットの還元が行われて、モダニズムは多様な表現内容と表現形式が充実したものの、ポストモダニズムで純文学は表現内容が伴わない表現形式の追求に向かうようになった。
しかし言語は論理性を失えば統合失調症の言葉のサラダのようになって他人には理解できなくなるので、還元にオリジナリティを求めても小説では抽象的表現への逃げ道は閉ざされている。還元すれば通常とは違う独特な文章になるものの、再構築しないまま還元しただけでは文章としてはむしろ瑕疵になってしまう。抽象への逃げ道がないという点では小説は美術よりも不自由なメディアで、日本の純文学ではいまだにポストモダン的な手法で小説の内容よりも形式にオリジナリティを求めているけれど、とっくに限界がきているのだろう。筒井康隆がやった様々な言語実験はスラップスティックにすることで支離滅裂さを肯定的にごまかすことができたがゆえに作品として成立したけれど、黒田夏子の回りくどいひらがなの文体は漢字をひらがなに還元したものの結局はわけがわからなくなってしまった。上田岳弘は太陽だの惑星だののスケールの大きな小説でサブライムをやろうとしているけれど、文学でサブライムをやっても結局は神と宇宙の先には何もないので限界は見えている。黒田夏子が芥川賞を受賞したり、上田岳弘が芥川賞候補になったりする傾向をみると文学は美術の砂漠化と同じ道をたどっているようだ。砂漠が今はやりの芸術なのだといわれても人は砂漠の中では生きてはいけないわけで、水を求める人に砂を浴びせ続けていれば文学から人が離れていくのも必然なのである。
新しさを求めなければ砂漠化を防ぐことができる。クラシック音楽は既に名曲が出尽くして作曲家の仕事は映画やゲームのBGMや編曲のような裏方の音楽ばかりになっていて、クラシック音楽界では曲の数を増やすよりも演奏の質を上げて名演奏で稼ぐようになっている。文学でもすでに限界が見えている表現技法の追求にオリジナリティを求めずに表現内容の質を追求すれば伝統芸術として後世に残る方法もあるかもしれないものの、ラノベやファンタジーやSFを真似た空想のアイデア頼みになって技術が低下して、思想もなくしてしまった現状ではもう無理だろうな。

★★★☆☆

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最終更新日  2016.01.09 23:56:19
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