システムエンジニアの晴耕雨読

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2007.01.07
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カテゴリ: 書評・読書メモ




「知の愉しみ 知の力」
白川静さんと渡部昇一さんの対談です。

昨年10月にお亡くなりになられた白川静先生の本、ということで手に取りました。
白川静さん・・・と高橋和巳「わが解体」



 まず、白川さんが研究された文字の研究の一端が垣間見ることができます。

 たとえば、鳥の漢字と鳴き声の関係・・音で擬態的に表わしたものとして、

  鳩  ・・・ クックと鳴くから、「九」

  雉  ・・・ チーと鳴くから、「矢」

  鶏  ・・・ ケケケと鳴くから、「奚」

 のような例が紹介されたりしながら、

「まあ、学問をするのにそんなにお金はいらんということですな。
 理工系は別としても、人文系の学問は手仕事でやれることが結構ある。」と語る。


 途中、論語の中での孔子と、孔子が生きた時代の状況等の話が面白いのですが、
このあたりについては、また「孔子伝」を読んだ時、感想を紹介できればと思っています。


 渡部さんが、漢文を通して生き方を学んだ良い話として、
 柴野栗山の「進学三喩」を紹介しています。

「春のうららかな日に京都の近くの神社にお参りする人がゾロゾロ歩いてきた。
 自分もそのとき江戸に行こうと思って同じ道を歩いていた。
 ところが、一緒に行く人たちは近くの神社まで行くものだから、お互いに話し笑いながら楽しげに歩いている。自分は江戸まで行かなくてはならないからサッサと歩いた。ときどき隣の人と話しては先に進み、前の人に追いついてはその人と話をする。
 そういうふうにしてしばらく行くと、最初に話をした人はずうっと後ろにいる。
 半日ぐらいたつと、もう消えて見えなくなる。
 夕方にもなれば、もうどのくらい離れたかわからなくなってしまう。
 学問というものもそういうものではないだろうか。
 目的が近ければ、さんざめきながら歩いていてもいいければ、自分の希望が遠くにあればサッサと歩いていかなくてはいけない。
 そして、いつの間にか大きな差がついてしまう。
 だから志を高くしよう、というような話です。

 表現が実にうまいんですね。
 なるほど同じ楽しくやっているようでも、志がある人とない人の違いはじわじわと出てくる。その漢字を柴野栗山はうまく書いているなと思いました。」

さらに、
「林羅山のほうは、大晦日にある人が羅山に
 「来年から私は漢文を勉強するからよろしくお願いします」と言ったところ、
 「来年からなんて言うな。すぐにはじめよ」と言って大晦日に講義をはじめたという話でした。
 こちらは学問というものは思い立ったらすぐやりなさいということですね。」

という話を受けて、白川さんが、

「今お話にあったように、漢文教育をやると大人になれるんです。
 漢文というのは、科挙という試験を通って地位についた一番有力な知識階級の連中が、自分の知的な力を尽くして書いている文章ですから、それを学ぶことによって、人間的な修為に役立つ。」

と、古典教育の回復の必要性を説く。西欧でも、ラテン語・ギリシャ語の教育が廃れてから同じような状況になっている、とのこと。
 このあたりは、浅田次郎さん「蒼穹の昴」第一巻の科挙、特に、八股文(はっこぶん)に、受験生が悪戦苦闘し、遂には神の啓示を受けるようなシーンが出てくるので、強く印象に残っています。


 白川さん、小学校卒業後、進学できず、働きながら書物を通して学び、33才で大学を卒業。それ以降も貝塚茂樹さんや吉川幸次郎さんの京大閥とは無縁の世界で、コツコツと研究を続けてこられたこと。
 その50年間の結果が開眼するのは、60才を過ぎ、70才を越えて、字書三部作に結実した、

 最後に、白川さん93才、渡部さん70才で、

白川「70歳なんて、まだまだこれからですよ。
 中国の考えではね、上寿は120歳とします。大体120歳を一応の限度としております。」

 ・・中寿は100歳。だから、僕もまだ30年ある。ましてや渡部さんは50年もあります。
 前途洋洋、まだまだ若造ですな(笑)。
 しかし、真面目な話、今、実際自分で気をつけながら現代の医学を使ってやれば、よほどのことがないかぎり、100を越えても仕事はできるはずです。」

渡部「やはり目的がなかったらいけないですね」

白川「それがなければね。歩くのでも目標がいります。
 目標を失うといかん。目標なしには一歩も歩けません。
 だから、なるべく具体的に、大体手の届く範囲の目標を立てること。
 80歳のときには、5年計画ぐらいでやる。まあ90越えたら大体は3年計画ぐらいでやる。
 目標があると、そんなに弱るものじゃないですよ。」


 「字通」が素晴らしい・・との評判ですが、一方、難しすぎるとの話をあるので、
まずは「常用字解」ぐらいから、手にとってみようかな・・・
 その前に、中公新書の数冊からと思っています。





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最終更新日  2007.01.07 23:01:16
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