システムエンジニアの晴耕雨読

システムエンジニアの晴耕雨読

2007.03.01
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カテゴリ: カテゴリ未分類
アラン・C・ケイ「アラン・ケイ」

訳は、鶴岡雄二さん。
浜野保樹が、評伝を書かれています。


 昨日のクヌースさんは、「コンピュータの神様」という異名でしたが、

 今日は、「パソコンの父」といわれるアラン・C・ケイ(Alan Curtis Kay)さん。

 2003年にチューリング賞を取られた理由からすると「オブジェクト指向の父」でもあります。


 1968年時点で、現在のパーソナル・コンピュータ(でも、まだ実現できていないところもある)である夢のコンピュータ、「ダイナブック」のコンセプトを発表。
(東芝のノートPC「ダイナブック」とは別物。東芝さんがネーミング使用の許可をとったものの、当時のPCは夢の「ダイナブック」には遠いレベルにありました(といっても、DOS/V系のPCはどれも似たりよったりだったのでしょうが)。)

 本書は、このアラン・ケイさんの「ダイナブック」を語った論文である
 「パーソナル・ダイナミック・メディア」の他、

 「マイクロエレクトロニクスとパーソナル・コンピュータ」
 「コンピュータ・ソフトウェア」
 「教育技術における学習と教育の対立」

 の合計4編が収められています。

 ケイさん、本を書かれず、また、講演録も、身振り手振りやプレゼン資料等も再現できないため講演記録も拒否されており、文章で読むことが非常に困難だったので、米国にさえ本はなかったのですが、浜野さんと鶴岡さんらの尽力で、4つの論文の採録と図版の権利関係の整理をつけて本書になったとのこと。この本、米国へ逆輸入されているようです。



 最初の2つの論文は、ともに1977年に書かれていますが、
 30年経ったいま読むと、コンピュータに必要な機能、特にGUIや操作性等ユーザー・インターフェースに関して、ほんとによく見えていたんだなあ、と感心します。

 まさに、アラン・ケイさんといえば、この言葉でしょう。


  そうすれば、「未来はわれわれが手を加えるのを待っている-われわれは無力ではない」ということができるからです。」


 コンピュータを使うのではなく、コンピュータに使われることが多いことに対して、

 子どもをユーザーとして見て、あるべきコンピュータの姿を考える。

 すぐに使い勝手の悪さを妥協する大人と違って、操作性や性能に対して断固として妥協しない子どもたち・・だってエンターキー押してから3秒も帰ってこないなら、他の遊びをしちゃうぞ!とか、いちいち面倒なプログラムを書かないと使えないなら止めちゃうぞ!とか・・・言われるのがいやならば、その興味・関心をそらさないことがコンピュータの必要条件になるはず、という感覚。

 いまだと当たり前に感じるかもしれませんが・・・つい15年ほど前なら・・・いやシステム開発の現場では現在でさえ、コマンドラインのCUIインターフェースがいまだに使われていますし、それがないと詳細なチューニング等やっていけないと思っています。


 コンピュータ・リタラシーについては、PCが教育革命を起こすというのは期待すべきでない、と1977年当時から明快です。ようはPCだけでなく、電話も映画もラジオもテレビの登場時もそういわれつつそうならなかった。
 「世界中に数えきれないほど存在する教育のない人たちは、その気があれば、何世紀にもわたって文化を蓄積した公共図書館を利用できるのに、そうしようとはしない。
  だが、ひとたび個人あるいは社会が、教育こそすべてだと考えれば、書物、そしてパーソナル・コンピュータは、もっとも重要な知識の伝達手段となるだろう。」

 また、こうも言う。
「人間の能力を拡大する協力なメディアは、どんなものであれ、人間の世界をひっくり返す力をもっている。」そのためには、「リタラシー」が必要なのだ。と。


 「教育技術における学習と教育の対立」は、とっても密度の濃い15分間の講演記録です。

 ほんの20ページの中に、
 20余りの話題が、コンパクトにとってもわかりやすい話し言葉で語られています。


 日本人の創造性についても言及されています。

 「だれもが口をそろえて、日本人には創造性が欠けているといいますが、そんなことはまったくのタワゴトです。たんに、これまでは研究所の産物を手際よく「摘みとる」という戦略をとっていたために、創造的である“必要がなかった”にすぎません。」

 また、アップルの名誉研究員になって初めての仕事が、マッキントッシュの評価でしたが、
 マッキントッシュは「4分の1ガロンのガソリンタンクしかないホンダ。世界で最も良くデザインされた輸送システムだが、セロリを買いに行くために、角の店に行って帰ってくるくらいしかできない。・・・日本人だったら、こんなアンバランスなものを工場の外に出そうとはしない。」とも。

 ・・・これには、ゼロックスのパロアルト研究所が基礎研究を山ほどやりながら製品化できなかったことへの反省があるのだと思います。


 「教育技術における学習と教育の対立」は、折に触れて、読み返してみたい、と思いました。





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最終更新日  2007.03.01 19:56:04
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Re:パソコンの父「アラン・ケイ」(03/01)  
abilitgrunavi  さん
時々は、こんな本もゆっくりと読みたいですね。 (2007.03.01 21:41:29)

Re[1]:パソコンの父「アラン・ケイ」(03/01)  
abilitgrunaviさん

>時々は、こんな本もゆっくりと読みたいですね。
1時間ぐらいで読めちゃうので、ぜひ!
(2007.03.02 21:52:58)

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