JAPANESE GIRLS&BOYS

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寂滅希望



金属質な音、それは踏み切りに似ている。
緩慢な動きで錆びた階段を上る。
開いていないドアに額を合わせると、冷たくてほんの少しだけ楽になる。
蜃気楼はゆらゆらと現実を歪め、曖昧な世界を見せつける。
人工色に彩られた街が耳を塞ぎたくなるような嬌声をあげる。
僕は熱いため息をドアに吹きかけた。

―――まだ帰ってこないのか。

別にたいした理由ではなく、電車のためにこの暑さの中走るのには億劫になっているだけで、それだけで僕はここにいる。

 カンカン カンカンカンカンカン

時計に目をやると九時四十五分。
先ほどの金属質な音は間違いなく僕が逃した電車の踏み切り。

 カンカンカン カンカンカンカン

―――・・・。

ふと隣の部屋に目をやると一人の少年がドアの前に座っていた。
こちらの視線に気づいたのか軽く首をかしげ

「誰を待ってるの?」

小さい声だが、脳に直接響いてくるような音で。


「そこには―――誰も住んでないよ。」

 カンカンカンカン カンカンカン


―――え。

少年は徐に立ち上がり、背中でもたれていたドアに手をかけた。
音も無くそのドアは開き、酷くゆっくりと閉じた。
僕は誰を待っているのか解らなくなりそうで、必死に思い出そうとした。
だけどあの踏切の音ばかり頭に響いて、先ほどの少年の声に混ざる。

 カンカンカンカンカン カンカン

吐き気がする。

 カンカンカンカンカンカン カン

僕は


「なにしてるんですか?」


声の主は僕が待っていた人物で

「電車、間に合わなかったんですか?」

―――隣の。

「え?」

酷くのどが渇いている。

―――隣の・・・子供は



「隣には誰も住んでいませんよ。」



 カンカンカンカンカンカンカン

「あれ?電車、今出て行きましたけどここで待ってたんですか?」


時計は九時四十分を指していた。



僕は部屋にも入らず挨拶もせず、そのままふらふらと駅ヘ向かった。
まだ音が響いている。


階段を下りる音を聞いて解った。








あの少年は君に出会いたくなかった―――僕だ。



 カンカンカンカンカンカンカン









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