JAPANESE GIRLS&BOYS

JAPANESE GIRLS&BOYS

寒煙



知り合いが亡くなった

別にそんなに親しい間柄じゃなかった
だから感じたのは喪失感だけだった
通夜の手伝いをして葬式に出て香典を集めて 泣いている人たちを見て
もう立ち直れないんじゃないかってくらいぐちゃぐちゃに

こんな日こそ皮肉なほど晴れているもので 透明な青空には雲が無い 
その雲を作り出すように知人は灰になっていった 
泣きずぎている人たちがその下にいて 

若すぎると 不幸だと 普通に僕もそう思うし
交通事故なんてありふれた文面はそれこそありふれた悲しみであり 僕にはどうも重過ぎた
冬空は知人の焼かれた煙に染まることもせず ただそこにあった
どこまでも突き抜けるような


あの空が




遠くで電車の音がする

「人が、沢山泣いてたよ。」

僕はここにいて

「は?」

彼の為に流された涙を

「たいした奴じゃなかったし、僕は寧ろ嫌いなタイプだったし。」

ただその光が

「誰の話ですか?」

嫌で厭で嫌で厭で嫌で厭で嫌で厭で
疎ましくて羨ましくてそれが惨めで


「人がたくさん泣いてたし、空が物凄く晴れていたから」


あの空はすべて包み込むような顔をしてた
だけど穢れなど受け入れるつもりは無くて
彼の為に流された涙を誰も弔わないのなら
僕はただあの空と死んでしまった彼を憎み


それでも僕の目の前には
この手には何も無くて
足元に転がる悲壮を
蹴り飛ばす勇気や
慈しむ愛情すら
僕は知らない
あの煙は今
空の彼方
どこへ
あの







「寒かった」




僕の吐き出したそんなに長くもない白い息は あの煙と同じように




空が嘲笑うように風を使って煙を掻き消していた








© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: