真紅はぼやいた
あと何ページ分？だいぶ書いたろ俺。
はぁ？あと40も？無理無理無理死ねるそれは。
そりゃお前みたいに詳しく詳しく書いてきゃページは稼げるだろうけど
その手もちょっともう苦しいんだよなー。
でも融通のきくタイプの奴じゃないかんな相手・・・・
ん？そりゃ俺だって苦手なやつぐらいいるよ。
どーやって説明したら初心者にこの魔術の美しさと機能性が伝わるかね。
・・・あーわざわざ悪ぃな。じゃあ緑茶と生きゅうりよろしく。
朝飯の時間にゃまだ早い。
ああ、この本書こうと思った理由か？
いや編集者にせがまれて。忙しいっつったのに。
まあお前に比べりゃ全然か。
ああごめんなさい物投げないで！！
あーあともう一つはな、冠位資格の常用魔術って極端に専門書少ないだろ？
ここを卒業した生徒を教えるのに、俺が困ったんだ。
だから自分でいっちょ書いてやるかと思ってな。失敗した。
剣核に丸投げするべきだったか・・・・ごめんだって？
まぁそんなわけで、炎王なんて仰々しい名前もらって、恐れ多くも
炎属性魔術の第一人者に置いてもらってるわけだから
炎魔術だけでも俺が書こうって思ったんだ。
あ、ひらめき。これさ、七大称号もった全員に自分の属性の書かせるか！
なんだよその顔。すげえアイデアじゃないか？
よっしゃ、今度方々に頼んどこう。闇負は物凄い拒否しそうだけどなー。
俺のことが嫌いなんだって？違いない。嫌われて当然のことしたしな。
・・・あ。よし、書くこと思いついたぞ。
これならいける。・・・・・おう祝え祝え。称えろ！
なぁ、剣核。
自分が他人と同じ世界を見てるって自信、あるか？
そうそう。同じ赤という色を見て、同じように形をとらえてる自信。
ねぇよなぁ。やっぱり。
俺は二、三本ねじ飛んでんだわ。
当然お前と同じように世界を見てないんだ。
俺にはどこの図書館でも案内板見る必要はない。
ぜーんぶの本の位置を覚えてるから。
覚えた位置から変えられると探すことになるけどな。
俺にはジグソーパズルは楽しめない。
柄じゃなく形だけみてはめちまえば終わりだし。
嫌味って言うな。事実だ事実。
俺には努力ってもんが欠落してる。
ほとんど頑張らず、四全なんてたいそうな資格もらっちまうし。
なんっつーか・・・距離を感じるんだよなぁ。他の奴と。
おう、大丈夫だ手は動いてる動いてる。
闇負って名をもらったあいつが俺のこと、『存在するだけで気分を害する』
って言ったのがわかるんだよなぁ。
ほーやっぱお前も腹立つか？俺見てると。
何でもできるくせに自分に頼ろうとするって？
違う違う。マジに何でもできちまったら、一人になっちまうだろ？
だから俺は無意識にダメ人間になろうとしてんだな。たぶん。
ほっとかれたら飯忘れるし書類仕事は苦手だし
ほっつき歩いて仕事しないし、そのくせピアノ弾きに教会に行くし。
そりゃきっと全部、誰かにいてほしいからだ。
人間でいてぇからだよ。聞いたことないか？
人間てのは一人じゃ生きていけないって。
・・・・そりゃお前みたいな努力家から見りゃ、すっげえ気分悪いよな。
なーんもしてねぇちゃらんぽらんが、魔術校フェンデラムの校長で、
世界最高の魔道士だもんな？間違ってる間違ってる。
おう、悪かったなつき合わせて。授業の準備か？
ああ、雷刀・南雲か今日。当然鳳凰帝は使えんだろ？
おお、さすがサンダー・プリンス。
あの術はなかなか気性が難しいからな、帝はいいとして他は苦労するかもな。
ま、頑張ってくれ灘梶先生。ん？おう、二時間目が始まるまでには書き上げて
編集者へ送っとくから。じゃまた朝飯のときに。
静桐遊凪 62歳 《真紅遊戯》 フェンデラム総合魔術校校長
七大称号、《炎王》
簡潔に表すこと不可能な、世界最高の魔剣士。
世界中、そしてこの世の史上においてただ一人、
神の領域とされた四全の資格を有する。
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