JAPANESE GIRLS&BOYS

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十五秒後の過去



僕は唇を閉じた。
もう、君へ送る言葉を、これ以上重ねるつもりは無い。
目蓋も閉じきってしまうから。
君は好きにしてくれて良いよ。
僕は十五秒前の言葉を後悔している。

僕は今まで後悔を沢山してきたけど、
こんなにも早く後悔をすることなんて無かったと思う。
たったの十五秒で、こんなに僕の中の世界が激変してしまうなんて。
十五秒前の僕は知らなかったよ。
だって十五秒前の僕は、
十五秒後の過去なんて考えたりしなかったから。
僕の心からこんな言葉が溢れ出るなんて、
僕の口からこんな言葉が雪崩れるなんて、
僕の体がこんな言葉に翻弄されるなんて、
君の瞳からあんな涙が伝い落ちるなんて。
僕の頭ではそんな未来は想像できなかったから。

今の僕の心臓は、嫌なくらい冷え冷えと落ち着いている。
秒針のように、はっきりくっきり、打ち続けている。
この心臓と一緒に、十五秒数えてみるよ。
目は閉じたまま、少し俯いて、
十五秒後の過去を考えてみるよ。
別に反省の意味ではないし、
沈黙で君に訴える訳でもない。
全ては僕の意志だから、
君は好きにしてくれて良いよ。
鋭い侮蔑の言葉を発してもいいし、
怒りに任せて殴り倒してもいい。
何もしないでそのまま立ち去ったって構わないよ。
ただ、
この目を閉じたまま、
十五秒間、
僕は静かに数えているから。
君は好きにしてくれて良いよ。
黒く暗い目蓋の裏には、
全然何も見えないよ。
愛しいと感じた、君の笑顔さえ、
ひとつとして映ってくれない。
十五秒前の君は、
十五秒後の君が見えていたのかな。
どうして僕らは、
遠い未来は様様と想い描けるのに、
十五秒後の未来は考えられないのだろう。
どうして僕らは、
十五秒後の未来を、
十五秒後の過去を、
こんなにも蔑ろに扱うのだろう。
遠い先よりも、大切な刹那なのに。

十五秒。

時は過ぎていった。
僕は今、目を開こうとしている。
十五秒後の独創の過去と、
十五秒後の現実の過去と、
答え合わせをするために。
それでも僕は、期待している。



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