JAPANESE GIRLS&BOYS

JAPANESE GIRLS&BOYS

幸福の配分 第一話


 全ての人間には幸福が均等に配分されるべきである、と。
 私は今までずっとこう考えてきた。
街角で人目も憚らず、いちゃつく男女を見る度に。
満面の笑みを浮かべて自転車に二人乗りしている男女を見る度に。
二人いるくせに、一つしか頼まなかったパフェを女が男の口に運んでいるのを見る度に。
 全ての人間は生まれたときには同じスタートラインにいたはずである。

 それがどうだ。
 いつの間にこれだけ差がついてしまったのか。
 あの男女と私の間には天と地ほどの差がある。
 ああ、何と悲しき格差社会!
 なぜ幸福は均等に配分されないのか!
 一体神は何をしているのだ!
 たとえ相手が神であろうと知ったことか。
 私は断固抗議する。

 しかし、神に対して憤ったところでどうしようもない。腹が立ったからといっても、神父さんやお坊さん、神主さんに文句を言ったところでどうしようもないのだ。
 それはあまりに、皆さん可哀想である。
 私は怒りをゲームにぶつけていた。ゲームの中で、私はナンバーワン・ホスト並の実力者であった。恋愛シミュレーションゲームの中で何人のヒロインを籠絡させてきたことか。私の手にかかれば恋に落ちない女性などいないのだ。恋愛ミュレーションゲームの中では、なのだが。
 しかし、所詮は二次元である。私は今現在世の中を闊歩している「オタク」と呼ばれる人種ではないので、とてもではないが満足できなかった。
 私は恋愛シミュレーションゲームを好む人々が集まるチャットをよく利用することがあったのだが、そこで私は「神」と呼ばれていた。
 それを三次元でも実践してやろうと思ったのである。

 要するに、世の女性を籠絡させ、お付き合いをしようと思ったのである。

 神様が幸福を分け与えてくれないのなら、自分でつかみ取ってやろう!という訳である。

 世界中の女性よ、覚悟せよ。

 私に惚れると、焼死するぞ。 


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: