酵母について



 パン酵母って、御存じですか?
 一般的に、イーストと呼ばれているものです。そして、世の中、たくさんの酵母が流通してます。

 では、たくさんある酵母を、いったん整理してみることにします。

 大胆ですが、酵母を2種類に分けてしまいます。
 糖を作れるか、作れないか、です。

「なんやそれ。わけわからん。」

 その通り。これだけ書くと、訳がわかりません。
 訳がわかった人は、読み飛ばして下さい。
 わからない人は、続けていきます。

 では、こう書きましょう。

 フランスパンに適しているか、そうでないか。

 こう書くと、すっきりします。

 フランスパンには、通常、砂糖は配合しません。
 小麦粉、イースト(酵母)、水、塩の4つの材料で作るパンが、フランスパンです。

 フランスパンは、菓子パンなどと比較して、醗酵時間が長いパンです。この醗酵時間は、「イーストが、自分の栄養となる糖を、小麦粉から自分で分解して生成し、自分で食べている」から、長くなるのです。
 周りに栄養となる糖がないので、自分で作って食べて働いているなんて、なんて健気なんでしょう。
 ちなみに、こういったイーストは、原産の酵母がヨーロッパに生息している為、「ヨーロッパ型」と呼ぶことにします。
 具体的には、ルサッフル社のサフ・インスタント(赤)などが、入手しやすく、有名です。

 では、フランスパンに適していないイーストの場合を考えていきましょう。
 適していないと言っても、まったく作れない訳ではありません。もしかしたら、作れるかもしれませんが、前者の「ヨーロッパ型」に比べて、フランスパンを作るのが、圧倒的に苦手なのです。
 同じような書き方をすれば、周りに栄養となる糖がないと、あまり働いてくれない酵母と言えます。

 では、どういった事が得意なのでしょうか?

 周りに栄養となる糖が多い時に、そういった酵母は、すぐに周りの糖を食べながら、頑張って働きはじめます。フランスパンよりも、糖分の多い菓子パンやブリオッシュなど、甘いパンが得意な酵母です。

 日本には、こういった酵母が生きやすい環境なのか、元から住んでいたみたいです。こういった酵母達を「日本型」と呼ぶ事にします。

 さて、おおまかに2つに酵母を分けました。

 自分で糖を作れる「ヨーロッパ型」と、自分で糖をあんまり作らないで、周りの糖を積極的に利用する「日本型」の2種類です。

 でも、こんな疑問がきっと生まれるでしょう。

「じゃ、白神こだまとか、ホシノとか、どないやねん。」

 これらも、どちらかでしょう。
 でも、私は、昔に「ホシノ」をすこしだけ使った事があるだけだし、「白神こだま」に関しては、存在自体を最近知ったばかりなので、詳しくはなんとも言い様がありません。
 「ホシノ」は、単一の酵母の純粋培養でない為、酵母本来の働きの他に、べつの細菌が活動するのが、特徴だと考える事は出来ます。一般的に言われている、「自家製酵母」の活動と同じ事が起こります。しかし、細菌を取り除き、パン酵母だけを取り出して調べてみれば、きっと「ヨーロッパ型」か「日本型」かを区別することができるでしょう。

 「白神」は、どっちかのタイプだとは思いますが、これまた、良くわかりません。どうやら、純粋培養タイプの酵母らしいのですが、私の知る限りでは、ちょっと今までのイーストとは、すこし活動の仕方が異なっているのが特徴です。


 例外として考えて頂きたいのですが、ヨーロッパには「日本型」と似た働きをする酵母も生息しています。
 例えば、パネトーネ種は日本型のイーストと似ています。でも、パネトーネ種は「ホシノ」などの酵母+細菌の組み合わせ(正確には、パネトーネ酵母と乳酸菌)ですので、純粋な酵母としての「日本型」に似ているか、といえば、ちょっと困ってしまう所です。

 酵母については、まだまだ書く必要があるので、「ヨーロッパ型」と「日本型」のなかの、細かい分類は、後日に譲る事にします。


~ 第2回 ~

 第1回では、「パンに使う酵母」自体について考えていきましたが、今回は、もうひとつ大きく、パンに使わない「酵母」も含めて、酵母の事を考えていく事にしたいと思います。

 一口に「酵母」といっても、たくさんの種類があります。

 パンを作る酵母はもちろんのこと、ビールを作る酵母もあれば、日本酒を作る酵母もあるし、ワインを作る酵母もあります。酵母は、醗酵食品を通じて、人間の生活に密接に関わっているのです。

 パン作りでは「イースト」を使用しますが、「イースト」とは、英語で「酵母」という意味です。
 とはいうものの、パンを作る時には、「イースト」と言う呼び方で慣れていますし、「イースト」という呼び方で売られていますので、「イースト」=「酵母」ということだけを押さえておくだけで、十分だと思います。このあたりは、さらっと流しておきましょう。


 酵母とは、どちらかというと植物に近い生き物なので、増える時には、芽を出して増えます。「とても素朴な植物」であると考えるとわかりやすいと思います。
 植物に近いので、生きていく為には、酸素と水と栄養が必要ですし、寒かったら動かなくなるし、暑すぎたらバテます。

 さて、酵母はたくさんの種類があって、それぞれがいろんな得意分野を持っています。それは、最初に書いた通りです。
 そのなかでも、パン作り向いている活動をするものが、現在のパン作りに使われています。

「酵母、酵母って、とりあえず酵母の紹介かいっ!」

 はい。まずは、酵母の紹介でした。

 さて、次回は、酵母を含む、微生物のお活動(醗酵)について考えていきましょう。


~ 第3回 ~

「酵母について」の第3回は、酵母を含む、微生物の活動(醗酵)について、考えていきたいと思います。

 昔、人間がまだ小麦を水に溶いて焼いていた頃、多分偶然に、ワインかビールか、なんらかの酵母がその生地に付着したんでしょう。当時の人は、普段ならのっぺりしているはずの生地が、膨らんでいるのを見て、何を思ったのでしょうか。
 パン酵母を使って、当たり前のようにパンを焼いている私達にとっては、知る余地もありませんが、最初に「醗酵パン」を焼いた人は、きっと挑戦者か、無謀な人だったのでしょう。

「まぁ、捨てるのはもったいないし、焼いてみたら・・・」

 この好奇心が、現在のパンにつながっているのです。

 さて、それでは、「醗酵」とはなにかという事を考えていこうと思います。

 醗酵とは、微生物が生きていく為に、糖やその他のミネラル分を食べて、なんらかのものを分泌することです。

 私達同様に、微生物も生き物ですので、なにかエネルギーを得る事なしに生きていけません。微生物達はエネルギーを糖などに求め、その結果として、炭酸ガスを出します。ガスを出すだけではなく、アルコールを出したり、酵素を出したり、酸を出したり、いろんな生成物を生み出します。
 そういう活動を「醗酵」と呼んでいます。

 ほかの微生物の活動としては、ヨーグルトを作る乳酸菌や、酢を作る酢酸菌や、酒を作る麹などが、良く知られています。

 ちなみに、醗酵と腐敗は、紙一重です。
 人間にとって、利益のあることは「醗酵」と呼び、損になる事は「腐敗」と呼びます。どちらも、微生物の活動が生み出した結果なのですから、人間本意の呼称だと思いますが、言葉を使えるのは人間ですので、微生物達は、甘んじて受け入れるしかなさそうです。

 パン生地がパン酵母によって醗酵することと、パンにカビ菌がついてカビがいくことは、微生物の視点からは、あまり変わりがない、と言えます。どちらも、微生物にとっては、生きている証なのです。

 そういう訳なので、パン酵母が活動しやすい温度や湿度などは、他の微生物も活動しやすい環境と考えて良いと思います(もちろん、それぞれ、活動しやすい温度帯はありますが、だいたい、そのぐらい、ということです)。


 さて、パン酵母は、そういった微生物のなかの一つであり、人間にとって、パン生地の中でパン酵母ががんばってくれると、有益な(おいしいと感じる)ものを作ってくれるので、その活動は「醗酵」と、呼ばれています。

 とはいうものの、パン酵母にとっては、別に好きで「醗酵」している訳ではなく、生きる為に「醗酵」しているのですから、私達は、そのパン酵母と付き合う時には、「いかにその環境を整えてあげるか」を考える必要があると思います。
 良い環境を得たパン酵母は、がんばって、美味しいパンづくりの手助けをしてくれるのですから。


~ 第4回 ~

 さて、「酵母について」の第4回は、一般に流通している、パン酵母の形状について考えいきたいと思います。

 おおまかに分けて、現在流通しているパン酵母の形状は、4つです。

1)生イースト
2)ドライ・イースト
3)インスタント・ドライイースト
4)醗酵種(生地種の場合と、液種の場合がある)

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1)生イースト

 これは、業務用では特に良く使用されてい形状のイーストです。「生」ですので、生きた酵母を粘土状にキューブにしたものです。

2)ドライ・イースト

 これは、生イーストを低温乾燥させて作ったものです。粒状になっており、使用する時は、お湯などに溶かし、予備醗酵をさせて使用します。
 低温乾燥させて作られる為、表面の酵母は乾燥し、死んだ酵母(死滅酵母)で被われている中に、生きた酵母がくるまれている状態になっています。
 予備醗酵とは、乾燥した状態の表面の死滅酵母を溶かすと共に、中の酵母までふやかして、活動を呼び起こすような意味合いがあります。

3)インスタント・ドライ・イースト

 ドライ・イーストに比べ、粒が小さく顆粒状になっていて、より水分が少なく、保存が効きます。しかも、ドライ・イーストで必要だった「予備醗酵」が必要無く、混合する時に、すぐに投入できます。
 生イーストと比べ、水分が飛んでいる分だけ比重が軽い為、だいたい同じだけのパン酵母の量にする場合(レシピを生とドライとを変換する時)、生3:ドライ1の比率で考えると、考えやすいと思います。
 具体的には、フランスパンを生イーストで作る場合、ベーカーズパーセントで2%入れますが、ドライになると0.6~7%になります。

 少し余談になりますが・・・。
 パンを焼く時、香ばしい香りとキツネ色の焼き色がつきますが、これは、イースト自体持っているアミノ酸も、表面の炭化にすこし関係してきます(他にも小麦粉や、糖や、副材料も関係してきますが、ここではおいておきます。酵母の話ですので・・・)。
 酵母も生き物ですので、主要な構成要素は、アミノ酸です。
 ドライ・イーストも、インスタント・ドライ・イーストも、乾燥させて作る為、表面のパン酵母は死んでしまった酵母(死滅酵母)で被われています。死んでしまった酵母は、生き物としては天寿を全うしましたが、亡がらにはアミノ酸が残っていますので、このタイプのイーストは、パンの色付きや香りが、生イーストよりも、若干良いと考える事ができます。

4)醗酵種

 このタイプは、一見、パン生地のような感じで、流通しているものと、液種として流通しているものがあります。
 もちろん、その生地の中には、パン酵母がいる訳です。その醗酵種をパン生地に混合して、使用します。
 パネトーネ種や、酒種などに、良く見られます。

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 酵母の流通時の形状は、以上の4種類ですが、中身のパン酵母については、形状とは直接関係はありません。
 つまり、生イーストだけど、ヨーロッパ型酵母というものもあるし、ドライだけど、日本型酵母という場合もあります。中には、自家製酵母をドライにしたものもあります。

 酵母の流通時の形状は、酵母の特性とはあまり関係がないので、それぞれの酵母自体が、どのような特性であるかは、製造元の説明を聞くか、実際に使用するかして、判断する必要があると考えられます。



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