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雪香楼箚記
恋(1)_よそにのみ
読人しらず
よそにのみ見てややみなん葛城や高間の山の峰の白雲
よそながらひとめ見ただけで終ってしまうのだろうか、あの葛城(かずらき)の高間の山にかかる雲のように、の意。平安時代中期の詞華集『和漢朗詠集』に収録された歌です。新古今集では巻十一(恋歌一)の巻頭におかれています。勅撰集編纂のうえで、各巻の最初(巻頭歌)と最後(巻軸歌)には、特に名歌を置くことが常識でした。この歌は、巻十一の巻頭歌であるだけではなく、巻十一から十五に到る恋歌五巻分の巻頭歌でもあるわけですから、非常に格の高い名歌であると選者から判断されたことになります。
よそにのみ見てややみなん、という歌いだしが特に響きのいい歌だとは思いませんか? この「ん」は「む」のことで推量の助動詞ですが、まず自分の心のなかにはこのような予感があるのだ、というのをぱっと全面に押しだして詠む勢いのよさが見事です。言葉の内容そのものは、なんだか先行き不透明な恋の挫折を予感したものですが、それとはうらはらに言葉の調べや流れはたいへんに美しくてちからづよい。『和漢朗詠集』という本は、名前のとおり、声をあげて朗詠するのに適した和歌と漢詩の一部を集めた本ですが、たしかにこういう姿のいい句なら口ずさみたくなるのも当然でしょう。
見る、ということが、平安時代には大変に重要な意味を持っていたことはすでにご存知のはずでしょう。当時、身分のある女性は、例え親兄弟でも軽々しく顔を見せることなどありませんでした(平安時代、あるいは平安時代の風俗を描いた絵を見ればわかりますが、例え肖像画であっても、女性は後を向いています。百人一首のカルタでも、身分の高い女流歌人は顔を隠してあります)。女の人が顔を見せるのは、恋仲になった男に対してだけでした。それでは、どうやって恋愛をしたんだ? ということになりますが、当時の男性は女の人の黒くて長い髪や美しい着物の袖などにひと目惚れしていたのです。もちろん、女のもとへ通いはじめても、一回目、二回目くらいでは、恥ずかしがって見せないように用心しますし、夜は月の光しかないわけですから、顔なんか解りません。何度かいっしょに過ごしてみて、やっと朝方の光のなかで(当時は日の出といっしょに女のところから帰るのが作法でしたから)顔を見られる。場合によってはそのとき、末摘花に出逢った光源氏のように手ひどく幻滅させられたりもするのですが……。
つまり、見るという行為は、それだけ重要な事柄であったわけで、女性にとってはほとんど、男性と関係が成立するのに等しいほどの意味を持っていたわけです。源氏物語のなかで、光源氏の妻である女三の宮が不注意から、柏木という男に顔を見られてしまう場面がありますが(若菜の巻)、これなどは、女三の宮と柏木の不義の関係への伏線になっています(その子供が薫君なのですが)。逆に言えば、この歌のなかでは「見てややみなん」、つまり、見るだけに終ってしまうのか、と言っているのだから、恋のはじまりを詠んでいるわけで、これは顔を見たというのではなくて、例えば御簾の隙間に出ている袖(これが当時の女性の性的アピールのひとつ)とか、髪のすそのあたりを見た、とか、それくらいのことでしょうね。いわば、ほんのささいなきっかけで恋心を抱きはじめた直後の歌。
それなのに、どうして作者はこの恋をあきらめ気味なのでしょうか? それには、後半の比喩の部分を見ればわかります。葛城というのは大阪と奈良の境の山で、これも歌枕。高間山というのは葛城連山のひとつで、最高峰。近畿の人にはわかりますが、大阪の金剛山のことです(楠木正成が籠城したところですが)。その高い、といっても相対的に高いだけで、近畿は山が低いから大したことはないですが、まあ高い山にかかる白雲みたいに、と言っている。だから手が届かない、と。つまり、女の身分が高いということではないでしょうか?
高貴な女性に卑しい身分の男というのは、永遠の文学的主題ですね。『チャタレー夫人の恋人』も、『美女と野獣』も、『タイタニック』も、みんなそうだ。日本人だってこれが大好きで、例えば伊勢物語に出てくる業平と二条后(例の「月やあらぬ」の歌や、「白玉か露かと」の歌のお話です)の話だってそうですね。在原業平だって、いちおう皇族の血を引く貴族ですが、なにしろ家に金はないし、身分も高くないから、藤原氏のお嬢さん(で、天皇のお后になる人)とは釣合がとれなさすぎる。やっぱり、女が高貴すぎて悲劇が起るわけです。当時の政界を牛耳ってた連中と喧嘩したら、そりゃいくら日本一のいい男でも負けますわねえ。色男には金も力もないんです。
それなのになぜ、人はこの組合わせを好むのか? ひとつには、そこに劇的な状況(人間の意志が社会によってねじふせられる、という)が生れるからでしょう。どちらかというと、ついに愛は身分の差を越えられなかったという悲劇のほうに重心をよせて、読者は物語のなかに同一化することを好んでいるわけですね(身分を越えられれば越えられたで感動しますが……)。
しかしそこにはもうひとつ理由があります。それは、社会を重層的に横断することによって得られる面白さ。例えば、身分の高い女の人を描くなら、社会の上流を描写できるし、卑しい身分の男のことを書くときは、下層の社会も物語のなかに登場する。ひとつの社会をまるごと描くことで(描かないでも連想させたり、類推させたりすることで)、文学に厚みが出てくる。同じような階層ばかりを描いて読者を退屈させることがない。例えば、『忠臣蔵』という芝居がおもしろいのは、大名の世界、武士の世界、町人の世界がみんな出てきて、江戸時代をまるごと書いているからでしょう。三島由紀夫の、まあ、作品名は挙げないけれど、上流階級を描いた小説があんまりおもしろくないのは、別な階層がでてこずに、同じような社会のなかだけで話を進めようとするから、飽きが来るんですね、読者に(まあ、彼自身が上流社会をよく解ってないからリアリティーに欠けてる、というのもひとつの理由ですが)。もちろん、和歌で『忠臣蔵』のようなことをやるのは不可能ですが、それでも、三十一文字のなかに入っていない、背景の部分を豊かに想像させる。味わいが深くなるわけです。
しかしまあ、よほど身分の高い人に、むくわれない片想いをしてしまったのでしょうか、この歌の主人公は。切ないもの思いをしても、人間は生きてゆかなければならないから、残酷なものです。見えていて手の届かないものの象徴としての雲が、あまりに美しすぎるかたちで歌のなかにただよっていますね。そんなに苦しいのならば恋などしなければいいのに、と言うことはできるでしょうが、しかし、それを押さえきれないからこそ人間というもののよさがあるのかもしれない。割りきって考えることができるのであれば、人間という生き物はほんとにつまらない存在になりはててしまうでしょう。未練のような、矛盾のような、そんな気持を抱えていることの純粋さが、この歌のひとつの妙味です。
ちなみに、葛城山には、こういう伝説があります。曰く、この山にはたいそう容貌の醜い神さまがいて、しかもやけにひねくれた性格の持ち主で、なんにしろ一言おおいので、葛城の一言主神(ひとことぬしかみ)と呼ばれていた。あるとき、役小角(えんのおづぬ)という法力ことにすぐれた行者……、というから、まあ後の時代の山伏のようなものです、この行者がやってきて、葛城山に石の橋を架けろ、とこの神さまに命令した(神さまがえらくこき使われていますが、これは小角が仏法という舶来品で武装しているからです。神さまは仏さまにかなわなかったんですね、奈良時代には)。ところが、一言主神は期日までに橋を架けられなかった。醜い顔を見られるのがいやで、夜しか働かなかったからです。神さまはついに、小角に怒られて、罰として土佐に流されてしまいました。いまでも高知の一宮神社にこの神さまはいます。高知の人がよきにつけあしきにつけ一言多いのは、この神さまがせっせと布教したからなんだそうです。……というのはほんとかどうか知りませんが、こういう伝説がある。
ところが、この神さまがいつの間にか女の神さまということになったんですね。たぶん醜い顔を恥じらうのが、男よりは女の神さまのほうにふさわしい、ということになったんでしょう。いつごろからそういうふうになったのかはっきりしませんが、『葛城』という能ではもうすでに神さまが女性になっているので、もしかすると新古今集のできた鎌倉時代には、そういうふうな話ができていたのかもしれない。この歌はそれを重ねあわせて読んでも、色っぽくておもしろいし、あるいは、男の身分の低さを一言主神の醜い容貌で象徴させているのかもしれませんね。ちなみに、『葛城』はうちの大師匠こと観世喜之が舞ったものが、昨年末NHKで放映されましたが、まことに結構な舞台でした。
この歌の最大の魅力は、やはり陽性であることです。切ないもの思いを、うんと明るく、晴れやかに読みあげている。『蒲団』で出発した近代日本文学は、まことにまことにまことに、陰性かつ、じめじめした、根暗な、私小説をもっとも格が高いものとしてきましたが(すくなくとも戦前までは)、おなじ国の文学的伝統のなかには、こんな作品もあるのですね。すくなくとも、悲しい恋をした人には、『蒲団』よりも、「よそにのみ」の歌を薦めてあげたい気がします。
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