~歩幅の狭い道~思い出話

~歩幅の狭い道~

3,思い出話

「つかさ、その試作品001号機とやらはどうするんだ?」
沈黙のなかから言葉が喉を通って出てきた。
はっとするように皆シュウの方を見る。
「そう、言えば・・・・・」
同時に思ったことは一緒だろう。
皆、聞きたいことは同じだったようだ
「その001号機・・飛ばしちゃおっか?」
青龍号に乗りながら前傾姿勢でニコニコ微笑んでいる。
魔女特有の「面白いこと」が思いついたんだろう。
「い~やいやいや、折角ですし、コイツの部品も探さなくてはなりませんので」
どうやら持っていくのだろう。
ここから先にある細道に、試作品001号機は通ることができるのか?心配だが、ま、いいか。
持っていくのはあくまでもヤツだ・・・・・(爽笑)
含み笑いしつつ、顔をひょいと覗かれ、硬直・・
「崇~?良いんですか?きっと、絶対『001号機』通ることができませんよ?あそこの細道」
凪斗が緑の髪を揺らし、こっそり耳打ちをする。
他の皆は、珍しいのか『001号機』を見て、質問して、ミッドを困らせている。
「良いんじゃないか?ミド持ってくって言ってたし。」
そう、あいつのことなら、その『試作品001号機』をどこかに隠す?いや、持ち運びに便利なように、小細工はしているだろう。
何でも作るヤツだ。
「さて、さっさと行くか」
そろそろ歩き出さないと満月が隠れるような雲が出てきたようだ。
「おや、そうですね。今の流行に乗らなくては!!」
一足早くに『001号機』の足エンジンで風力を送る。
どうやらエネルギーは風のようだ・・・
ふわっと宙に浮きまたも爆音が辺りに響く。
「さ~!!こうしちゃいれません、もう、びゅんびゅん行きますよ~!!」
風力全開で上にゆく、爆音は消えないが実に楽しそうだ。
「良いな・・結構・・」
ぽろっと口から出した言葉が耳の良い凪斗に聞こえたらしい。
「ほほう、では乗せて貰えば良かったじゃないですか。」
てくてく見慣れた街を後目に最初の森がある『ウェルタ』に歩みを進める。
「ウェルタか・・・久しぶりだな。狩りに来て以来か。」
思い出話をしつつ 感傷に浸る。
「な~に?崇、なんかウェルタって森に思い出でもあるの?」
にやけながら聞いてくる魔女にシッシと手であしらうように無骨にイヤな顔をする。
「あ~、前、崇ってばウェルタで迷子になったんですよ」
のほほん声で昔の思い出話をほじくられ、機嫌悪いMAXの崇にニッコリ笑いかける。
青龍号に乗りながら口に手を当て、『ぷっ』と笑みを浮かべる。
「まっじ~(にや)へ~そうなの~」
明らかにバカにしている顔で崇の頭を小突く。
「あれは!!かなり昔の話ッス!!」
また、ムキになって返すのが崇の悪い癖。
この癖はどうやら成人になっても取れないようだ・・・
「何が昔ですか~崇が確か・・14~5の時ですよね?」
クスクス笑いながら昔の話をする。
「あれは、たまたま狩りに行こうと言うことで騎士隊長のおじさんが誘ったことが始まりですよね?」
ふいっと崇に目で合図をして、その合図に崇は不本意で頷く
了解を得たと、確信をして続きを始める。
「で、狩りもあまり経験がなかった崇が久しぶりに馬に乗り、矢と弓を持ち、準備して、さ~行こうて事になりましてね?」
つらつら騎士隊長の武勇伝を話しながら自分にも二、三匹ヒットしたと言う話をして、そして、含み笑いをしながら、その迷い話をしている。
「で、暫くして崇ってば一匹も取れなくてね~『ちくしょ~!!あっちに行ったら絶対いる!!』って、馬を走らせちゃって・・・・」
げんなりしつつ凪斗の話に耳を傾ける。
「崇店長・・・実は方向音痴?」
こっそり耳元(と言ってもこっそりではない)と、爆音の中から質問してきたのはミッドだ。
「あ~、そうッスよ・・おりゃ方向音痴だよ・・・」
またもげんなりしつつ質問に答える。
「それで、馬を走らせて、独走~な感じで気が付けば辺りは暗いし、人はいないし・・・」
て、ことですよね?クスっと笑い目線を迷子主に。
「いや~崇がいなくなったときはどうしようかと思いましたよ。辺りは暗かったし、丁度、お尋ね人もその近辺うろついていたので、本気で心配ですよ~」
ふむふむ、話をネタ帳に書き留めている早咲はこぼれるくらいの笑顔で聞いていた。
「崇の捜索は王国の兵士100人がかりで探しましたよ~ホンットに大がかりでしたよ~で、いざ見つかったと思えば、動物も一緒にいたんですよ~どうやら動物を見つけて矢を放ったんでしょうが、見ているうちに情が移ったんでしょうね?」
あらかた話し終わってニッコリしながら水袋を片手に飲んでいる。
「で、その動物はともかくお尋ね者さんはどうしたのですか?」乖里が面白かったのかニコニコしながら尋ね人を聞いた。
「それがビックリ、数十メーター先の大きな木の下にいたんですよ。鼻から血を流してね(ニッコリ)あのお尋ね者は崇、貴方が沈めたんでしょう?」
ニッコリ笑いながら聞いてくる。
「あ~そうッスよ~だって、やつが子どもの動物をくるしめてたんだ。」
「って、そんなことを言っても貴方も狩りをしていたでしょうに」
グッと、息を呑みながら、わなわなと握り拳を片手に震えている。
だが、その握り拳をどうすることもなく震えながら下ろす。
魔女早咲と、霊媒師凪斗・・・この二人に手を挙げたら明日の朝日は見られないと確信していたからだ・・・
「あ~もう、いいっしょ!!その話はもうおしまいッス~!!」
まだまだバラバラと音を鳴らせたミッドが奇っ怪な悲鳴を上げる。
どうやら、例の細道までひとっ走りしたらしい。
「ほ~ら、やっぱり」
「ん、だな・・・(遠)」
「ちょ、っちょちょ!!!崇店長と愉快な仲間達の皆様!!ここは・・・!!ここはとてもですけど無理です!!通れません!!」
大慌てのミッドを見て大笑いのその他諸々
「さては!!崇店長知ってたんですね!!」
「知ってるもなにも、俺ここ出身だぞ?」
けたけた笑いながら木の枝やらツタやらに絡まるミッドを見て、一人で大ウケ馬鹿笑いいや、爆笑?
さすがに絡まる姿は後世に残しても惜しくはない格好だ。
「ミッド、ミッド」
ぱしゃっという音共に哀れすぎる格好を小型写真機で撮る
「貴方ヒドイですよ~!!」
涙ながらに照れながら上からよじよじ降りてくる。
「ホントにまぁ~・・・ヒドイじゃないですか!!」
声を張り上げ空気の透き通った夜空に紫髪の青年がほえる。
道行く人はこちらを見ながらクスクス笑っている。
「お笑いの才能あるな・・・・」
うんうん頷き写真に納めたことを詫びる
ま、其処に小道があり、なおかつ機械が通れる大きさでもない。人が一人通れるくらいの小さな小道。
その小道があったことを言わなかった。
矢張りこういう状況になることが楽しみだったのかもしれない。
と、いうか、楽しみ・・むしろ余興。
流石ミッド期待を裏切らない!!
そんなところが実は気に入っている。
だが、本人にはかなり秘密だ。
後で何を言われるか分かったものじゃない。
「ま~ま、イイじゃない悪気はあったようでなかったのだし。」
その場で早咲が青龍号から身を乗り出しニコニコ笑いながら場をなだめる。
「ささ、ちゃっちゃといっちゃいましょう~」
そういうと青龍号マックスのスピードで駆け出す。
夜空は穏やか風は優しく、青龍号も気持ちよさそうに駆け回る。
まるで水を得た魚のようだ。
涼しい風がやっぱり気持ちいい。
空気、星、夜風(よるかぜ)、旅に出た事は矢張り当たりなんだろうと実感。
一つ背伸びをして青龍号と共に駆け出す。
「負けないッス!!」
クスッと笑い負けじと走り出す。
「私も負けませんよ?」
「わわ、みんな速いです!!」
後押し去るかのようにとてとて駆け出す
「乖里!!お乗りなさ~い。」
「わ、早咲おねーさん!!」
青龍号と共に風の如く走る。
「うわ!!ひっどいですよ!!皆さん!!」
木の枝やら葉っぱやらを付けて、絡まったツタをほろい
風力全開で疾風の如く追い掛ける
「お前ら!!俺ら生身!!走ってるから手加減しろよ!!」
風のワルツを聴きながら
月明かりに走る若者、
端から見たらこんな旅もまたいいモノだと思わせるのであった。

~歩幅の狭い道・終~


++++++語り部++++++
取りあえず、細道の方は短いけど終わらせることが出来ました。
次はいよいよ港町!!
何と、港町で早咲と乖里が・・・・!!!
続きはそのうち風の向くまま気のままに~

by 翠零

PS・途中で出てきた夜風はあえて「よるかぜ」と読んで下さい。




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