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むらさきシキBOO!の 私しあわせですけど、なにか?
真夜中の太陽
「旅」というお題で書きました。
けっこう個人的に気に入ってる作品です。
「真夜中の太陽」
<人物>
宮崎志穂(27)…会社員
村上亮太(33)…会社員
佐藤隆(30)…志穂の新しい恋人
○ファミレス・外観(夜)
○同・店内(夜)
怒った顔の宮崎志穂(27)と、向かいに座っている村上亮太(33)。
志穂は村上と目を合わせない。
村上「…なんだよ、ずっと黙って」
志穂、「エラ・フィッツジェラルド」の「ミッドナイト・サン」のLPをバッグから取り出し、村上に渡す。
志穂「これ、返す」
村上「え?なんで?ジャズ飽きちゃった?」
志穂「別れよう、ってこと。…奥さんから電話があって慰謝料請求するって」
村上「…冗談だろ?そんな嘘つくなよ。不満があるなら直接俺に言えって」
志穂「…不満。不満は亮太が私の言っているのを信じてくれないこと」
村上「そんなことないよ。愛してるから心配で」
志穂「あと、口では『愛してる』とか言っておいて、私より奥さんを大事にしていること」
村上「(むっとして)そんなことねえよ!」
志穂「(逆ギレして)そうだよね!奥さんいるって知ってて付き合った私の方がバカだったんだよね!大切な大切な奥様がいるのに無理矢理付き合わせてて悪かったわね! じゃ、これでさよなら!」
席から立ち上がった志穂の手を掴み、
村上「海!海に行こう!」
志穂「は?」
村上「今度、海に行こうって話してただろ?」
志穂「今、別れ話してたの伝わってた!?」
村上「3年も付き合ってて、一言『別れよう』で本当に別れられるかよ。ほら行くぞ」
村上、志穂の腕を掴んで歩きだす。
志穂「痛いってば!離してよ!」
○首都高速道路(夜)
走っている村上の車。
○村上の車・車内(夜)
運転する村上、助手席でふてくされいる志穂。
車内にはジャズが流れている。
志穂「しんじらんない。何で別れた男と海に行かなきゃなんないの。しかも真夜中に」
村上「いつだったか京都に行く約束もしてたよな。海やめて京都にしようか」
志穂「……(ぶすっとしている)」
村上「…何か言えよ」
志穂「…京都より北海道がいい」
村上「札幌ラーメン食って?」
志穂「うん。流氷も見たい」
村上「あと、エビとカニだろ?」
志穂「富良野のラベンダーも」
村上「流氷と季節が違うじゃん。志穂の町も案内してくれる約束もしてたよな」
志穂「…もう、やめよう?いっつも約束ばっかり」
村上「(ムキになって)じゃ決定。北海道」
志穂「帰れなくなるよ?」
村上「…いいよ、帰れなくなっても」
志穂「……」
× × ×
フロントガラスから「柏インターチェンジ」の看板が見える。
村上「腹減った。札幌ラーメンでも食うか?」
村上、ハンドルを切り出口のほうへ。
志穂「え?茨城で?」
○××ラーメン店・表(夜)
店前に村上の車が止まる。
○同・店内(夜)
村上と志穂の前に普通の味噌ラーメン。啜り始める村上。
村上「うまい!やっぱり札幌ラーメンは味噌だよな。志穂も札幌ラーメン食えって」
店主や客らが胡散臭そうに志穂と村上を見ている。
志穂「(困惑して)ちょっと亮太、何言ってるの?恥ずかしいよ」
村上「(一段と大声で)ああ、札幌ラーメンはやっぱり美味い!札幌まで来たかいがあったよなあ。志穂も食ってみろって」
ハッとする志穂。ラーメンを食べる。
志穂「…」
○常磐自動車道(夜)
テロップ「常磐自動車道」
○村上の車・車内(夜)
運転する村上と、助手席の志穂。車内にはジャズ音楽。
かっぱエビせんの袋を振る志穂。
志穂「なによ。これが亮太の言うエビなの?」
村上「うるせえ。嫌なら食うなよ」
村上、志穂からエビせんの袋を取り上げる。袋を奪い返す志穂。
志穂「食べる!でもこれ、カニは入ってないよ」
村上「(ニヤリとして)ジャーン」
村上、カニの形をしたかにパンを志穂の膝の上に放る。
志穂、思わず吹き出し、笑う。
志穂「あはははは。負けた!」
思いっきり笑う志穂と村上。
ラジオDJ(声)「次のリクエストは、エラ・フィッツジェラルドのミッドナイト・サン」
ラジオから曲が流れる。志穂と村上から笑いが消え、曲に聴き入る2人。
○水戸インターチェンジ(夜)
「水戸」のプレートがかかる料金所を通り過ぎる村上の車。
○ひたち海浜公園(夜)
「ひたち海浜公園」と書かれた門を歩いて通り過ぎる志穂と村上。
× × ×
公園内を歩く志穂と村上。
村上、道端のタンポポに気づき、
村上「志穂。ラベンダー…らしきもの」
志穂「黄色いラベンダーもかわいいね」
○海岸(夜)
砂浜を歩く志穂と村上。
村上「オホーツク海はしばれるなあ」
志穂「へたくそ。(北海道弁で)すばれるな」
村上「(笑って)地元民にはかなわねえよ」
月明かりに照らされ波間が白く光る。
志穂「あれ、流氷じゃない?」
村上「うん」
村上、海を見る志穂の横顔を見つめる。
村上「あとは志穂の育った町を教えてよ」
志穂「小さくて何もない町だよ。ここが私の家で、ここに幼馴染みのトモちゃんの家があってね。小学校の裏には赤土山があって、毎日遅くなるまでそこで遊んで…」
志穂、説明しながら砂の上に簡単な地図を描いていく。
月明かりが2人を照らしている。
○海が見える駐車場(早朝)
水平線が明るくなっている。
駐車場に村上の車だけが一台止まっている。
○車内(早朝)
運転席の村上と助手席の志穂が水平線を眺めている。
ミッドナイト・サンのメロディを口ずさんでいる村上。
志穂「…『ミッドナイト・サン』って『白夜』の他に意味があるって知ってた?」
メロディを口ずさむのやめる村上。
志穂「『君は僕の太陽だ』って恋人にいう文句があるでしょう?昼間は会えない、真夜中にしか会えない太陽って…だーれだ?」
村上「…」
志穂「それを知っててミッドナイト・サンのLPを私にくれたの?」
村上「…」
志穂「…分かった。いいよ、答えなくて」
村上「…ごめん」
志穂「いいよ」
村上「ごめん。本当の北海道じゃなくて」
志穂「いいよ」
村上「ごめん。たくさんの約束守れなくて」
志穂「いいよ」
村上「ごめん。一番大切にできなく」
志穂「(遮って)もう、やめて!…それ以上謝られたら、なんだか私たち悪いことしてたみたいな気がしちゃうじゃない」
太陽が水平線から顔を出す。
志穂「あーあ、本物の太陽がきちゃったか。…じゃ、私、始発で帰るから」
村上「送るよ」
志穂「いい。自分で歩いてく」
志穂、ドアを開け、半身外に出て、
志穂「…ありがとね、亮太。北海道に連れてきてくれて」
志穂、無理矢理笑顔をつくってみせる。
泣きそうな顔で志穂を見つめる村上。
村上を見ずに車から降りる志穂。
○××コーヒー館・表
テロップ「二年後 十二月」
○同・店内
アンティークでお洒落な雰囲気の店内にはジャズ音楽が流れている。
志穂と佐藤隆(30)が楽しげに話している。2人の前には旅行ガイド。
佐藤「どうせ旅行行くなら遠くがいいなあ。(本をみて)あ、北海道は?雪まつりとか」
店内の曲が「ミッドナイト・サン」に変わる。
志穂「……」
佐藤「…志穂?」
志穂「…この曲。いい曲ね」
志穂の目から一筋の涙がこぼれている。 <終>
◆書いた当時は、村上を「愛すべきダメ男」として書いたつもりだったのに、今読み返すと村上って 単なるウザイ男・・・(怒)。
そしてラストシーンは、最初「3カ月」「温泉旅行」のつもりだったんです。
過去をふりかえらない、次に次に進む女性の強さ・したたかさと、それでも無視することができない胸の痛みがいい対比になってる気がして。
でも、先生の「3カ月なんて早すぎよ!男と女が温泉に行ったらやることは決まってるでしょ!軽い女にしたら志穂の魅力がだいなしよ!」という名言(?)によって、上記のような設定になりました。なつかしいなあ。
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