不同沈下の損傷は予想以上

不同沈下の怖さ

軟弱な地盤や、盛土地盤などでは、地盤が徐々に沈下して
その上の建物が地盤に追随して傾くことがあります。
このような現象を不同沈下と言います。
建物や基礎に亀裂が入ったり、下水の排水が悪くなったり、いろいろな障害が現れてきたときは、
まず不同沈下であるかどうかを疑ってみるべきでしょう。
沈下が大きいときには、ほとんど半壊状態となり、住めなくなってしまう場合さえあるのです。
そしてその復旧には500万~1000万円もの費用がかかるのが普通です。


造成地は不同沈下の危険が潜む
不同沈下の起きやすいところは低地の軟弱な地域ですが、
低地でなくても、造成地で次のようなことには注意が必要です。


1.切土と盛土にまたがる場所

山側部分を切り崩し、その土砂を谷側へ盛土して造成することはよくあることですが、
このとき表面上は同じ地盤に見えても、
土中では切土地盤と盛土地盤に分かれている場合があります。
そして、その境界をまたいで建てられた住宅は、不同沈下を起こしやすくなります。
これは、盛土に粘土分が多く含まれていたり、ガラや木の根などがまじって埋められている場合、
盛土が十分に締固めできないため、雨水などが流れ込んで隙間ができてしまい
圧密沈下を生むこととなります。
切土のほうはもともとの地盤を切っただけですので、硬く締まっていて沈下はほとんどしません。
つまり盛土の部分だけが沈下する不同沈下が起きてしまうということです。
2.雨の浸透による圧力
盛土の締固めが不足していると、水が土の中へ浸透しますが、
雨は流れるほうに向かって土を動かそうとしますので、表土も地下に向かって流れていきます。
これは地盤全体が収縮を行っているのであり、「雨降って地固まる」のたとえ通り、
地盤が落ち着くまでには時間がかかることを意味していて、すぐに建てると危険です。
3.建物重心の偏り
2階建ての住宅などでは片側に荷重が偏っていることがありますが、
このような偏りも不同沈下を起こす原因となります。
荷重は均等に分散されてこそ安定するもので、
偏った荷重はそこだけに特別な重さが加わることになり、
やがて耐えきれず地盤が沈下して家が傾いてしまいます。
また、隣にビルなどが建つ可能性のある商業地域などで、
地盤に伝わる荷重が一様でないために、重いほうへ傾いてしまうことがあります。
隣接してマンションなどが建つときは注意する必要があるようです。
4.敷地内の掘削工事
擁壁や車庫などを築造するために建物の近くを掘削すると土圧が緩み
建物の下の土が横に流れようとします。土留めをしっかりと施せば問題ありませんが、
地盤が軟弱であると土留めが押し出されて地盤が沈下します。
また、水分の多い場所で掘削するときは、ポンプで水をくみ出しながら行うことになりますが、
その際、取り出した水の量だけ地盤が沈下することがあります。
5.基礎栗石の締固め不足
基礎を造るとき、栗石や砕石を基礎の底全面に敷き詰めますが、
布基礎の下の地盤は、締固めを十分にしないと石が動いて土地が沈むこともあります。
6.軟弱層の厚さの変化
地形が変化したり、地層が傾斜している場所は、
建物の下の軟弱層の厚さが一様でないことがあります。
軟弱層の厚い部分ほど沈下量が大きくなるので、不同沈下が起きやすくなります。

以上が、不同沈下の起きやすい事例ですが、
このほかにもさまざまな沈下例がありますので、注意しておきましょう。

不同沈下は予想以上に損傷を与える

住宅で最も重要な構造部は基礎、柱、梁、壁でしょう。
これらの部分がダメージを受けると、極端に家の寿命は短くなります。
木造住宅の場合、基本的に柱の構造は家の四隅に立てて2階まで通した通し柱と、
その階だけに立てた管柱があります。
通し柱というのは入の背骨にあたり、体を支える最も重要な構造材です。
不同沈下で家が傾くと、この通し柱も傾いてしまうわけですから、
通し柱に支えられた胴差しや桁といった他の構造材もゆがんでしまいます。
それまで四角形だった箱が菱形に変形し、
隙間や亀裂、剥離といった現象があちこちに現れてきます。
一部がダメージを受けると、連鎖的に他の部分も損傷を受け、
家としての機能がしだいに薄れていき、雨露をしのぐだけの、単なる入れ物となってしまうのです。
もちろん、そのような家は資産価値も下がり、
売りに出そうにも、売れないといった事態もあり得るのです。



© Rakuten Group, Inc.
X

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: