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Benediction of God in Solitude
譲れないものXI
「別れよう。」
スコールはこれ以上リノアを悲しませたくはないあまり、精一杯の虚勢とポーカーフェイスでそう告げた。なによりも残酷な言葉だとわかっていて。
「………え?」
また、リノアはその一言で理性を取り戻していた。
「…前々から思ってはいたんだ。待たせてばかりで俺は何もできないんじゃないか。リノアは俺なんかよりももっと側にいてやれる奴の方が幸せにできるんじゃないかって。俺なんかにはリノアはもったいないんじゃないかって。…今回の事ではっきりわかったよ。だから……別れよう。」
苦しい素振りは一切見せずにスコールは淡々と告げた。内側では今にも崩れそうな精神をしっかり繋いで。リノアはスコールの言葉に耳は傾けていたはずだ頭の中では別のことが渦を巻いていた。
(なんで…どうして?)
重たい沈黙が二人を包んだ。そして…
「私の幸せはスコール無しじゃ有り得ないんだよ?スコールは私の騎士じゃないの?」
「そう思ってるだけかもしれないだろう?これから先、誰が表れるかわからないだろう?俺よりふさわしい騎士がきっといるはずだ。」
「それでスコールはいいの?私がスコール以外の誰かの手で幸せになっても平気なの?」
「………あぁ。」
最後の言葉が極め付けだった。二人とも、お互いを思う余り嘘を付き合っている。スコールとリノアは目を合わせずに話していたのでどちらもそれに気付かず話は進んでしまった。
「……わかったよ。………スコールがそうしろって言うならそうする。」
「……この部屋…開けなきゃならないんだ。だから荷物を全部持っていってくれ。」
「…………わかった。」
(すまない、リノア。けどお前のためになるはずなんだ。)
スコールはただそう信じて彼女に別れを告げた。
スコールはリノア一人残して部屋を出ていった。
そこにある、普段は優しく感じる雰囲気も、この時ばかりは残酷な刃となって周りの空気を、人の心を重くした。
夕方になり、スコールは部屋に戻った。
そこには荷物をまとめたリノアが立っていた。
「荷物、、、全部運んだよ。」
「…そうか。」
「スコール。」
「なんだ?」
「少し目を閉じててくれる?」
スコールは素直にしたがった。リノアはスコールの手を取り、掌にその『もの』を握らせた。
パシン!
軽い音が空気を震わせた。
「さようなら。今までありがとう」
「さようなら。ここで新しい幸せを探し幸せになれ。」
リノアは風のように去っていった。スコールはその哀愁漂う後ろ姿を見て抱き締めたくなる気持を必死に押し留めた。
殴られた傷よりも、リノアを傷付けてしまったことと、彼女がもういないことの方が、スコールには遥かに痛かった。
スコールは掌に押し付けられた『もの』を見、顔に絶望の色を表した。クリスマスの夜、約束を交した指輪がその中にあった。
気高き獅子の指輪も、その時はまるで泣いてるかのようだった。
(これでよかったんだよな?いつまでも彼女を縛って悲しませる事がそもそも間違いだったんだよな?)
スコールは一人になった部屋で考えていた。
(あれでいいはずだ。この先、きっと彼女に新しい幸せが訪れるはずだ。)
それは有り得ないことだとどこかで否定する自分を押し込め、スコールは荷物をまとめ、眠りに就いた。
集合三十分前、スコールは荷物を赤い機体―――ラグナロク―――に詰め込んだ。
「あ、はんちょ。おはよう」
「……」
「スコール~おはよう~」
「………」
「おい!スコール!」
怒鳴られ、スコールは初めて自分が呼ばれていることに気が付いた。
「「「「「おはよう」」」」」
「…おはよう。揃ったみたいだな。時間だし行くとするか。」
「リノア、わかってくれた?」
「………(煩い。今その名前を出さないでくれ。)」
「時間だぜ、スコール。」
「あぁ、出発しよう」
赤い機体は上昇し、エスタに向けて飛び立った。
三時間後、ラグナロクはエスタに到着した。
その間、スコールは皆から質問されたが全て無視した。
その様子を見て、全員リノアのことを聞くのは禁忌だと悟った。
到着した一行は、ラグナ、キロス、ウォード、エルオーネに迎えられた。
「よう!よく来たな。これから頼むぞ。」
「ラグナ様~久しぶり~。」
「キロス、ウォード、おねえちゃんも久しぶり~。」
「………」
「久しぶり。と言いたいようだ。こちらこそご無沙汰しております。」
「さて、早速向かうとするか。」
「お願いします。」
全員でエスタガーデンに向けて歩き始めた。
その途中、、、
「今スコールの前でリノアの名前は禁句だからね。」
「わかりました。しかし何故だい?」
「今回の任務のことで喧嘩しちゃっていつもになく不機嫌なのよ。」
「了解した。しかし…やはりそうなったか。」
小声だったせいか前にいたラグナとスコールには聞こえなかった。
「ここだぜ~。」
「うわ~キレ~イ。」
「でっけーなぁ」
「今日からここで教えるのね。」
「エスタなのに緑が一杯あるんだね~。」
皆それぞれの感想を述べ中に駆けるように入っていた。
エスタガーデン。そこは緑溢れる豊かな土地であった。
「構造は案内版、並びにその資料を見てくれ。」
「一度自分の部屋に行ってください。今12時30分ですから、一時にまたここに集まってください。」
「了解。」
それぞれ自分の部屋に向かい、一息ついた。
「悪くないな。けど広すぎじゃないか?」
スコールはそれだけ感想を言うと、またリノアのことを考えていた。そして時間が近付いてきたので部屋を後にした。
「お、集まったな。」
一同は再びエントランスに集まった。
「この後の予定を説明します。まず二時より関係者の顔合わせ。そして三時より開校式でその後パーティーとなっています。SeeD服を着用してください。」
「了解。」
「では二時まで解散。時間になったら三階の教室一に集まってください。」
「了解。」
必要な事を聞き終えた一同は式服に着替えるために部屋に戻りその後でガーデン内を探検しようと言うことになった。
(絶対に広すぎる…。ここならリノアと一緒でも全然問題無さそうだな。…これから忙しくなるんだな…。けどその方がリノアの事を考えなくてすみそうだ。)
ここまで考え、スコールは自嘲した。
(……未練がましいな、俺。)
そう思いながら皆と合流し、探検が始まった。中は大体ガーデンと同じだが、とにかく大きさだけは違った。設備も似通ってはいたが、体育館、会議場、研究所と言った、ものがいくつかあった。
「広いね~。」
「そうね」
「無駄な施設も多い気がするんだけどよ。」
「そうか~い?」
「絶対そうね。」
「そんなこと無いと思うよ~。」
「ならなんでメインホールの他に宴会場なんてあんだよ?」
「……あの馬鹿大統領の考えだろう。」
「言えてる~。」
「お。おい!そろそろ時間だぜ。」
「……行くか」
全てはまわれなかったが殆んど周り、時間が近付いたので指定された教室に行くと、馴染みの顔が揃っていた。
ニーダ、シュウ、三編みの図書委員、CC団。ただガルバディアから来てる人は一人もいなかった。話によるとガルバディアも人員不足だそうだ。
簡単に挨拶を各々すませ、最後にスコールは疑問を口にした。
「ところで学園長は誰だ?」
「ん?それがまだ到着してね―んだよ。多分もうすぐ来ると思うんだけどな。」
(学園長が遅れてどうするつもりだ?)
「さ、開校式の時間だ。宴会場に行くぜっ!」
「さぁ皆!これからこのガーデンで頑張ってくれ!」
大統領らしからぬ大統領の祝辞も終り、ダンスパーティーが始まるだけだったが、未だに学園長は表れなかった。
「学園長がまだですが先に始めましょう。」
キロスの事務的なその一言に百人近くの生徒は騒始めた。キロス曰く、大統領のお祭り好きが国民にもうつってしまったそうだ。
そして夜は更けていった。
そんな中スコールは一人壁に寄りかかり空を見ていた。
(初めて会ったのもこんな夜だったな。そう言えばあいつだけだな…。あの頃の俺に全く怯えずに寄ってきたのは。…俺…何考えてるんだ?)
リノアの指輪を手の中でもて遊び、スコールは気付いたらリノアの事を考えてる自分に、苦笑いした。自分にリノアは欠かせない。という事実には目を瞑って。
「スコール、そんな所に一人でいないで誰かと一緒に踊ったら?」
エルオーネが不意に声をかけてきた。それに一瞬驚いたスコールは指輪を落としてしまった。
「落としたよ。相変わらずそれ好きなのね。」
「………」
「……ところでこのガーデンはどう?」
「悪くない。ただ個室が広すぎる気がするんだが…。」
「あら?部屋の大きさはバラムと同じよ。それで広すぎるって感じるなら、それはリノアちゃんがいないせいね。」
「………」
「リノアちゃんと離れ離れにさせちゃって辛いし悲しいとは思うけどそんな顔しないでよ。」
「………」
「ハァ、まぁいいわ。あ、そうそう学園長先生がお待ちよ。」
「……ようやく来たのか。」
「えぇ。ついさっきね。あ、式辞が始まるわよ。」
学園長。それはイデアだった。
バラムのSeeD達は全員驚いていた。一般生徒は魔女に操られていたときのイデアと全く違うので気付かなかった。まさか彼女が学園長になるだなんて誰も思っていなかったのだ。
「…………これを式辞とし、終らせて頂きます。」
その後、パーティーは幕を閉じ、生徒達は寮へ、バラムのSeeD達はラグナに呼ばれ会議室一に集まった。
「ってーわけで今後の学校運営はイデアさんに任すから。お前達も頑張ってな。」
そう言うとラグナは半キロスとウォードに引きずられるように帰された。
「皆さん、明日からよろしくお願いしますね。私も至らないところが多いと思いますが、全力で頑張りますね。」
「はい。こちらこそお願いします。」
全員イデアに対し敬礼をした。
皆はそれぞれの部屋に戻り、明日からの為に眠りに就いたと言う。
ただ一人、久しぶりに一人なので落ち着かないスコールを除いて。
「……朝か。」
今までの癖なのか、スコールはソファで寝ていた。起きてすぐ、いつものようにリノアを見ようとベッドを見たが、そこにリノアがいないことを思いだし首を振った。
(…重症だな。俺。)
そう思うと朝食を取る為に台所に向かった。
おもむろに作り始め、すぐ作り終えた。
「さて、、、食べるとするか。…………なんで二人分作ってるんだ?俺。」
スコールは深く溜め息をつき、自分にはリノアが必要だと、改めて思った。しかし、同様にそんな未練がましい自分にイライラが募り始めた。
「まぁいい。行くとするか。」
そう言うと自室を後にした。
「おはよう」
「………」
「…最初の日なんだからもう少し愛想よくしなよ~。リノアがいなくて辛いのはわかるけどさ~。」
ギン
スコール気付いたらアーヴァインをおもいっきり睨みつけていた。
「ご・ごめんよ~。悪かったからそんな怖い顔しないでくれよ~。」
「(なにをそんなに怒ってるんだ。俺。自分からリノアを遠ざけたんだから諦めろよ。)」
スコールは自身にそう言い聴かせ、顔をあげた。
「……行くか。」
「オ~ケ~。」
教室に入り、スコールとアーヴァインは簡単に自己紹介をした。アーヴァインが質問してもいいと言ってしまったので二人とも質問攻めにあってしまった。そして授業を始めるため最後の質問にする。と言ったら今ここで来て欲しくないのが、そしてお決まりと言ったらお決まりの質問が来た。
「お二人とも恋人はいるんですか?」
スコールは氷ついた。しかしそれに気付かないアーヴァインは軽く言ってしまった。
「いるよ~。僕には一緒に来てるセルフィ、スコールにはバラムガーデンに。」
教室は騒然となった。スコールはそれを一喝して退け、事務的な声で授業を始めた。それを観察していた副校長エルオーネはスコールがいつもと違う事に気付いた。
written by eoh
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