『えこちゃん』のホームページ

『えこちゃん』のホームページ

ベルト


 母の洋服ダンスは大人の魅力満載の宝箱だった。
 その中でも、姉と私のお気に入りの一つにベルトがある。

 それはとめ具の部分が大きめで金色。
 ベルト部分は麻のような素材だったように記憶している。
 とにかくそのベルトに憧れていた。
 正確に言うと、そのベルトをしての外出を夢見ていた。
 でもその夢は一度も叶ったことがない。

 大人ものだから大きかった。
 ということもあるが、理由はそれだけではない。
 なんせ姉と私、二人とも狙っていた品。
 だからどちらかがベルトをして外出したら
 それはその人のものとみなされる。
 といった思いが心のどこかにあった。
 でも、姉も欲しいといっているから
 私が先に獲ってしまうのにも抵抗があったのだ。
 だからお互いに
 『大きくなったらちょうだいね』
 と母に約束し、曖昧になっていたのだ。

 あれから十何年。。。
 あのベルトはまだ母の洋服ダンスで眠っているのだろうか。

 小さい頃、姉とはたくさん喧嘩もしたけれど
 『おねえちゃん』がいてくれてよかったなぁと心から思う。
 私はいつも姉の背中を見てきた。
 姉が何かをすれば、私もそれをやりたいと思った。
 そしてそれを二人で一緒に楽しんだ。
 この経験がなかったらずいぶんと孤独な生活だったはずだ。
 母のベルトももしかしたら、姉の真似をして
 「ほしい!ほしい!」と言っていたのかも。
 勝気で負けず嫌いな妹を
 優しい目で見てきてくれた姉。
 そこから私が優しさを学ぶことも多かっただろう。

 二人で憧れていたあのベルト。
 見つからなくてももういいや。
 そのままそっと、心の中にしまっておこう。





© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: