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2021.05.02
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三千鸦杀 Love of Thousand Years
第19話「覚悟の一手」

覃川(タンセン)は傅九雲(フキュウウン)から靂渊(レキエン)に敵がもう1人いると言われ、ある人物を思い出した。
そこで鯪(リョウ)州王府に天原国第二皇子・亭渊(テイエン)を訪ねる。
実は亭渊はそろそろ覃川が現れる頃だと気づいていた。
覃川は本物の霊灯を見せて自分が靂渊を殺すと持ちかけたが、亭渊も簡単には諦められない。
すると覃川は血の契約をした者だけが霊灯をともせると教えた。
亭渊は灯心もないのに火がつくのか半信半疑だったが、ならば自分がやると申し出る。
しかし霊灯をともすには代価があった。
人は身体が滅びても魂はこの世に残るが、霊灯に必要なのはその魂、霊灯は燃え続け、苦しみも永遠に続くという。
「それでもやるの?…私はやる」
亭渊はさすがに怖気付いたが、ここまで覚悟できる覃川に驚いた。
「君は何者だ?…靂渊が探している胡姫(コキ)とは君なんだな」

覃川は靂渊にどんな武器も法術も効かなかったと話した。
すると亭渊が兄の秘密を教えてくれる。
靂渊が生まれた年、天原国にひどい長雨が降った。
外では妖魔の声が響いていたが、靂渊が生まれるとなぜかその声は止んだという。
国師は特別な力を持つ不死身の子供だと告げ、剣も法術も効かぬ子は妖神が現れる吉兆だと進言した。
それ以来、天原国では妖神が信じられている。
しかし亭渊は幼い頃、不死身の兄にも弱点があると知った。

あれは靂渊の15歳の誕生日のことだった。
靂渊は父皇から西域の宝剣を賜り、自ら手を斬りつける。
その時、亭渊は怪我や病気と無縁だった靂渊の指から血が流れるのを見た。
靂渊は咄嗟に手を隠してごまかしたが、それからと言うもの、中元節に姿を見せなくなったという。
中元節にどこにいるのかは皇太子妃が知っていたようだが、実は皇太子妃は病気で早逝していた。
しかも皇太子妃の命日は中元節の翌日だという。
恐らく中元節に靂渊が普通の人間になると知ってしまったせいだろう。

亭渊は偽物で懲りたため、霊灯を奪うつもりはないと安心させた。
そこで覃川は偽物にすり替えたのが九雲だと教える。
亭渊は九雲が自分たちを探しに来るのではと心配したが、覃川は自分が死なない限り問題ないと断言した。
「…私たちは立場こそ違うが、大きな目的を持つ同士だ」
「一緒にしないで、私は復讐のために霊灯を盗んだ、驪(リ)国の民の幸せのために闘ってる
 でもあなたは野心のためでしょう?」
「それは違う、権力に興味はない、国師は靂渊を使って妖神の信仰を広めた
 私は皇子だ、妖魔を除く責任がある、君も天原国も驪国も全ての民を救いたい!私が君を守る!」
何事にも絶対はない。
亭渊は必ず血の契約を破る者が現れるに違いないという。
「君は生きなければ…生きていないと意味がない」
「命なんて関係ない…私たちは違うのよ、今までも、これからも」
すると亭渊はともかく話は全て片付いてからだと決めて作戦を考えようと提案した。
中元節に靂渊がどこにいるのか調べるにはどうすればいいのか。

一方、空回りしてばかりの九雲は眉山(ビザン)君と一緒に酒で憂さ晴らししていた。
そこへ白(ハク)公子が現れる。
実は九雲は小白に覃川の身辺を探らせていた。
「亭渊は帝位に就いたら覃川にも良くすると言っていた、全ての民を大切にして彼女を守るんだって
 でも覃川は同志じゃないってさ」
「当たり前だ!何が同志だ!」
九雲が思わず声を荒げると、眉山と小白は失笑した。 
それにしてもこんな神器の使い方はさすがに仙人の常識を外れている。
眉山が苦言を呈すと、小白も思わず不満を漏らした。
「覃川をそばに置けばいいだろう?僕を何だと思っているんだ!都合よく鏡にしたり眠らせたり…」
しかし九雲からやめてもいいと突き放され、仕方なく小白は報告を続けた。

覃川は香取山で白紙仙術を学んだと嘘をつき、紙人形を靂渊に貼り付けようと考えた。
そうすれば靂渊の霊力が消えたのか、その時どこにいるのかも分かる。
しかし当日の大祭は身分によって行動が決まっているため、亭渊は皇太子と接触の機会がなかった。
「私がやるわ」
帝女だった覃川は皇室の儀礼に詳しい。
天原国の皇族たちも焼香に行く時に喪服に着替えるはずだ。
「そうだ、喪服はすでに主衣(シュイ)局にある」
「なら喪服を運ぶ侍女に紛れて宮廷に忍び込む」
亭渊は主衣局に知り合いがいると思い出し、覃川を母の侍女として紛れ込ませることにした。

秋華(シュウカ)夫人は栄華を取り戻すまであと一歩だった。
今日も宮廷から皇太子の使者がやって来る。
秋華夫人は娘の身支度を手伝ったが、玄珠は浮かない顔をしていた。
「太子殿下はあなたを気に入っているわ、山ほど贈り物も来ている」
「そうですか…母妾(ムーチン)、ご満足ですか?」
「何ですって?!これもあなたのためでしょう?」
母の言いなりになるしかない玄珠、すると使者がなぜか侍女に玄珠の採寸を命じた。
実は中元節には喪服を着る習わしで、皇太子の命で玄珠にも喪服を仕立てるという。



亭渊は覃川のために侍女の衣装を手に入れた。
片や覃川は黒い喪服に貼り付けても目立たないよう、紙人形を墨で塗りつぶし、真っ黒にする。
一方、九雲は覃川が再び宮殿に潜入するつもりだと知り、悶々としていた。
どんなに強がっても覃川が心配で仕方がない九雲、そこで酔い潰れた眉山を起こし、宮廷に遊びに行こうと誘う。

覃川は亭渊から天原国の儀礼を学び、いよいよ宮中に上がることになった。
その頃、眉山は張(チョウ)太尉に変身、公子斉(コウシセイ)に皇后の肖像画を描かせると言う名目で九雲を参内させることに成功する。
しかしそんな九雲に国師の魔の手が迫っていた。
皇后の姿絵を描き終えた九雲は眉山と2人で主衣局の様子をうかがっていたが、その時、突然、九雲が首の封印を押さえて苦しみ始める。
「どうした?!確かに封印したはずなのに」
「…奴からの宣戦布告だ」
眉山は九雲の真の目的が妖王だと気づいて止めたが、九雲はこれも覃川のためだと訴えた。
命懸けで復讐しようとしている覃川をこのまま見捨てることはできないという。
そこで九雲は妖王の居場所を突き止めるため、封印を解くよう頼んだ。
すると国師は九雲の発する力がすぐ近くにあると気づく。
「時が来たぞ、傅九雲…ここへ来る勇気があるなら歓迎しよう~わはははは~」

傅九雲は眉山について来るなと釘を刺し、解放された力がおもむくまま歩いた。
するとしばらくして昊天(コウテン)殿の前に出る。
その時、運悪く覃川が現れた。
九雲は咄嗟に力を鎮め、何食わぬ顔で奇遇だと笑顔を見せる。
「覚えているさ、霊灯にもそなたにも関わらない
 ただ中元節にそなたとバカな豆豆(トウトウ)哥が何を企んでいるのかちょっと見たくてな」
「なぜそれを?」
うっかり口を滑らせた九雲は黙っていられなくなった。
「よく考えろ、本当に宮廷で事を起こすのか?あんな人形なんかで靂渊を殺せると?
 それにあの豆豆哥だ、帝位に就いたらそなたも驪国も天原国の民も救うと信じているのか?」
覃川は小白を通じて全て九雲が見ていたと気づいた。
激怒した覃川は手鏡を割ろうとしたが、九雲が咄嗟に止める。
「よく聞け、靂渊はそんな甘い相手ではない!」
しかし興奮したせいか九雲は急に苦しくなり、思わず背を向けて欄干にもたれかかった。
「…どうしたの?」
「来るなっ!…私から離れろ、行けっ!」
九雲から初めて拒絶された覃川は深く傷ついたが、必死に涙をこらえた。
「分かった、行くわ」
覃川は怒りに任せて手鏡を捨て、走り去ってしまう。



靂渊は東苑で側室たちに玄珠を紹介した。
しかし玄珠はひとりうつむいたまま、笑顔はない。
側室たちは自分たちが世話をすると優しい素振り、ちょうどそこへ左紫辰(サシシン)が現れた。
「太子殿下、国師がお見えです」
すると靂渊は側室たちに玄珠の舞を見てしっかり学ぶよう指示し、左紫辰は残って玄珠を部屋まで送るよう命じた。

玄珠は側室たちから早く踊れと迫られ、仕方なく涙を流しながら舞を披露した。
母親のために屈辱に耐える玄珠、その痛々しい姿を見た紫辰は胸が痛い。
結局、側室たちは参考にもならない踊りだと揶揄し、さっさと帰って行った。
「私は身分も尊厳もない、宮廷で遊ばれるだけの女よ…私には何もない、本当に…何も…」
「玄珠、とにかく太子には嫁ぐな、幸せになどなれない」

つづく


(  ̄꒳ ̄)あああ~なるほど、小白は九雲の都合で鏡になったり人形に戻ったりするのね…
覃川がずっと持っていたんだ(←今さらw





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最終更新日  2021.05.02 15:45:18
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