ゆったり空間物語

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帝国師団 第一章 『開戦』



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 ◆ローレル国バチエタ平原第182号指令本部◆

「ローレライ大将軍閣下に申し上げます」

「んっ」

「バロニア敵軍はアッカス渓谷を北東に陸空軍総数約120万、バチエタ平原に約50万、第二次援軍予想200万余りの勢力です」

「数字的には我が軍は劣勢になっていることは確かだ。だが、最終防衛ラインのアッカド城を決して突破させてはいけない。そこに全レッド、イエロー(上級魔戦士)を集結させよ」

「御意」

「ホワイトはユーロ海峡に配置、一斉凍結攻撃により海軍の侵攻を遅らせる。空聖団は敵空母艦隊、並びにその他敵の空軍撃破を第一目標とせよ」

「御意」

「魔弓団は渓谷の中間地点に配備、敵のヘリ部隊だけに集中攻撃」

「御意」

「バチエタ平原に5万の一般兵並びに魔戦士100を残す。そして、アッカド城から若干数のエルフ強弩隊、並びに一般弓矢隊を、敵軍侵攻予想の道筋に沿って、大木や岩石に隠れるように待機させよ」

「…………」

「貴殿、何か不服でも?」

「失礼ながら、お言葉をお返ししますが……ここリレッタは敵の奇襲に遭いほぼ壊滅状態であり、残りの兵をアッカド城に集結させるのが得策かと……」

「貴殿は敵の中距離弾道ミサイルを知らないのか?ここを拠点としてミサイル配備されたらどうする?もしここを失えば未来永劫に失地回復はないであろう」

「このたびの失言、お許しを」

「では、この作戦を皆に伝えよ」

「御意」

「あっ、それから、誰でもいい一人の女性……一般兵をここに連れて来てくれ」

「あ、はい……了解です」

 副司令官はその意図が理解できず、一瞬、戸惑いの表情をみせた。

 そして、間も無く五分後に一人の女性兵士が現れた。

 その女性兵士は深々と一礼して大きな兜を取り、美しい長いブロンドの髪を靡(ナビ)かせながら、ローレライの前に緊張の面持ちで敬礼した。

「今回の度重なる激務お疲れ様」

 ローレライはにこやかな表情で言った

「えっ……」

 目の前のその女性は一瞬、戸惑いの表情を見せた。

「まあまあ、リラックスして、貴殿に頼みたいことがあるのだが、よろしいでしょうか?」

「勿体ないお言葉、私、死ぬ覚悟で任務を遂行します」

「いや……先程、ある少女に出会ったのだが、クマのぬいぐるみを持っている少女の護衛を貴殿に任せたいのだが」

「少女の護衛……ですか?失礼ながら閣下の御親族でございますか?」

「いや、先程、偶然出会い親友になった」

 目の前にいた女性兵士の顔は混乱した面持ちになっていた。しかし、次第に緊張が解れ、自然な笑顔を魅せた。

「貴殿にはその笑顔がとても似合う」

「あの……は、はい――」

 みるみるうちにその女性の顔が耳まで真っ赤になっていた。

「貴殿の名は?」

「クリステル・ロセットと申します」

「申し遅れました。私はローレライ・フェデラルと申します」

 ローレライは軽く微笑みを浮かべながら、戦火に塗れた薄暗い灰色の空をゆっくりと見上げた。


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