猫といねむり。
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動物病院に猫を連れて行く--。頭に思い浮かぶ場面は病気の猫さんを連れていく人間、という方が多いかもしれません。実際には、猫の病気を治してもらうためとは言い難い場面も多くあります。日本の獣医学部はもともと産業動物(馬、牛、豚、鶏など)のために設立されたものでした。人間の食を守るための学問ですから獣医学科は農学部に属していました。獣医師は産業動物について学び、畜産農家の家畜などを主に診察していました。猫や犬といった愛玩動物は本来の診察対象ではありませんでした。*1ここ15年ほどのあいだに動物病院をとりまく環境は大きく変わりました。家庭で飼育される猫や犬などの健康に気を配る人が増えました。これらの小動物も獣医師が診察する対象となりました。それでも大学附属の動物病院が「家畜病院」という名称から「動物医療センター」と変わりつつあるのもここ1~2年のことです。*2日本の獣医療はまだまだ始まったばかりなのです。あまり多くを期待できないのが現状です。そして命には必ず限界があるものです。生命力の強い猫さんたちの生きる力を私たちがサポートするために獣医さんの力を貸してもらうために行くところが動物病院だ--という認識ですこし早めに対処することで安心を得ることができるように思います。家族の一員である犬や猫などに充実した医療を求める人も増えています。専門性の高い獣医師によって治療の選択肢を広げる高度治療の受診ができればと願う人も少なくありません。獣医療は日進月歩の勢い以上に進んでいます。治療が難しい疾患とともにある場合にはホームドクター(かかりつけの獣医さん)では提供できない治療もあるでしょう。そのときには、疾患に適した治療を高度医療を提供する二次機関で受けることができればという願いを持つことに不思議はありません。機会とご縁があれば高度医療機関を受診する経験は何ものにも代え難いと思います。*3高度医療機関を受診すると、これまでに受けていたホームドクターでの受診で不思議に思わなかったことが逆に不思議に見えてきます。診断の根拠を説明しないのはなぜか?こちらの意向も聞かずに、注射をすぐに打つのはなぜか?処方する薬の名前を教えないのはなぜか?病院ごとに薬の価格差が激しいのはなぜか?・・・数えれば切りがありません。そんな不思議ワールドについての雑感をつづっていきます。拙文がよりよい獣医療を納得して受診する一助になればと願っています。*1 歴史写真館@東大農学部の歴史をみると、家畜病院の建物が変化していく様子を見ることができます。[web魚拓]*2 東京大学での名称変更は2007年1月です。「2007年1月から、大学院農学生命科学研究科附属家畜病院は、同附属動物医療センターに名称変更いたしました。」出典:動物医療センター長からのメッセージ@同センター*3 高度医療機関の受診を検討される場合は猫を大学病院に連れて行くには:高度医療機関の「受診の手引き」のまとめをご覧ください。情報公開度を★の数でランキングしています。★の数が多い機関ほど紹介を受けて受診する人が多いと推測しています。問い合わせが多くなると受診者への告知を用意しておく必要性に迫られるからです。←[Home]へ戻る[猫を大学病院に連れて行くには]をみる→※はじめてこのblogにいらした方は[はじめに]をご覧ください。
September 2, 2007
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