ぷるぷるぷりん

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「傷痕」 Written by kawazero



浅い傷 深い疵
癒える傷 消えぬ疵

身体(からだ)に残った醜い傷と
 精神(こころ)を壊した見えない傷と…



人とは、酷く弱い生き物だ。
人とは、常に脆い生き物だ。
ちょっとしたことで傷つき
ささいなことで壊れてしまう…

心も体も。
精神も身体も。

だが、そう言っている当の本人…
つまり私が人間ではないというのだからどうにも仕様がない。
でも、だからと言って私は弱くないのか?
脆くないのか?
傷つかないのか?
壊れないのか?
と、言われると…
断言できる。
「そんなことはない」…と。

人間ではない私。
正確には人間だった私。
私は弱い。
とても弱いだろう。
ガラス細工よりも脆く

傷つき続け…
 壊れ続けている…


――――――いたい
いたいよ…
こわい
こわいよ…
おおかみさん
ついてこないで
こっちにこないで
おいかけないで
もりへかえって
ああいつのまにかひとりだ
はぐれたしまった
ねえなんでなの
ひとりにしないで
ごめんなさい
ごめんなさい
もうやくそくをやぶらないから
こっそりもりへはいらないから
たすけておねがい
だれかたすけて――――――


少し…
疲れているかもしれない。
あまりにも鮮明に
あまりにも克明に
目を閉じればあの日の恐怖がよみがえってくる。
森へ初めて入った日。
森へ最後に入って日。

そして失った友。
残された傷。

その日から狂い始めた。
何かが私から欠けてしまった。
友を失い、家族を失った…
得たものはなんだろう?
本当になんなんだろう?


今夜は月が欠けている。
私の心も何か欠けているのだろうか…
あの月のようになにかが足りないのだろうか…

もし月ならば、やがては元に戻る。
私の傷はどうなのだろう…
あの月のように元に戻れるのだろうか…

『私に残った醜い傷は
   私に残った見えない傷は

現在を奪った忌むべき傷か?
   過去とを繋ぐ大事な絆か?』
敵意を持って静かに月に問う…

end.



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