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『絶対音感』
これは絶対音感について書かれたドキュメンタリーである。
著者である最相が絶対音感という言葉の語感の強さに引かれ、調査したものだ。
ところが、この本の面白いところは絶対音感の科学的検証という範疇にとどまっていないところである。
『絶対音感』と『相関音感』の違いに触れ、それぞれの持つ世界観へと話は発展していく。
そこに見出されるのはまぎれもなく生き方の指標となる哲学だ。
それはそうと、最相はあとがきでこう書いている。
「音楽は言葉で説明するものではない。表現がすべてであり、わかる人にはわかる、わかならければそれもやむをえない。ただ、そう突き放されることでどれだけの音楽が私たちの手を離れていっただろう。言葉で説明することを邪道とする固定観念は、鑑賞者よりもむしろ音楽家自身を不自由にしてきたのではないだろうか。それが彼らのストイシズムである一方で、呪縛ともなっていたことは否めない。
日本はこれまで、言葉なくして音楽の本質を伝えうるほど成熟した音世界を持っていたといえるだろうか。絶対音感という言葉を始めて知り、語感の強さに引かれ、その本当の姿を知るために絶対音感を持つ人々とであった私は、次第次第にそんな危機感に襲われていった。そして、蝙蝠の羽音にわずらわされたり、扉の向こうをモノトーンと語る彼らとは、音楽を覆う閉塞した重い空気を人知れず嗅ぎ取っていた、鉱山のカナリアではなかったかと思うのである。」
絵画や音楽などアートと呼ばれるものを言葉で表現することは一種タブーとされている。
それは主に言葉をコミュニケーションの媒体としないところに表現の可能性があると信じられているかだ。
確かに、絵や音楽というものは言葉を超えた表現力を持つ。
その反面、コミュニケーションツールとしては言葉の足元には、はるかに及ばない。
確かに絵や音楽で表現されていることを言葉ですべて言い尽くすことは不可能だ。
100人いれば100通りの解釈が成立するだろう。
しかし、絵や音楽で人を感動させることができるということは、そこには共有できるなにかが存在しているはずである。
それがなんであるかを正確に言葉にする必要はない。
ただ、周りをなぞるだけでもいいので、言葉にすることができれば、よりいっそう、絵や音楽に対しての造詣は深まるはずである。
わかるひとにだけわかればいいという態度は最終的には自分の身を滅ぼすこととなるのではなかろうか。
追記:
絶対音感とは電車の音だろがなんだろうか、すべての音がドレミで何の音かわかる能力だ。
だから『絶対』なのだ。
面白いのは、コミュニケーションツールとして言語は極めて優れているとはいえ、人によって微妙にニュアンスが変わってくるため、『絶対』は有り得ない。
言葉を超えた表現力を内包する音楽に『絶対』的価値基準を持ち込んだ『絶対音感』の存在はやはり驚異なのではなかろうか。
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