『悪い仲間』



オイディプス・コンプレックスと同じくらい、あるいはそれ以上に思春期の少年の行動に影響を与えるのが仲間から受ける精神的プレッシャー(peer pressure)である。
この物語は思春期の少年達が、仲間からの精神的プレッシャーを受けながら成長していく様を描いている。

思春期の少年にとって女を知っているかどうかは、精神的に大きな差を与える。
主人公と親友の倉田は童貞であり、語学学校で知り合った藤井は女を知っていた。
たかがセックス、されどセックス。
この「女を知っている」ことにより、藤井は三人の中で最も優位な立場を手に入れる。

三人の関係はそのまま三人に精神的なプレッシャーを与える。
藤井はカリスマ的な存在となり、二人にプレッシャーを与えつづけるために、無意味な遊郭通いを続けてゆく。
他の二人は競って藤井に同化しようと努力を続ける。
子供のようにたわいもないが、このピア・プレッシャーは、三人の中では親よりも家族よりも、何よりも重要なものであった。

このピア・プレッシャーは所詮井の中の蛙。
大海を知ることによって自然消滅する運命にある。
主人公はこのピア・プレッシャーの呪縛から自然に解かれていったが、藤井と倉田はいつまでも縛られていた。
ピア・プレッシャーは行動を束縛する。
束縛するが同時に井戸の中で守ってくれる。
主人公の『ぼく』は呪縛から逃れてオトナになると同時に、淡い羨望の入り混じった感情で二人の生き様を「外側」から眺めてゆく。
もう二度と「内側」へは戻れないというノスタルジアを抱きながら。


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