おもいつくまま きのむくまま(経済指標グラフからみえるもの)

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放射性炭素年代測定

★★放射性炭素年代測定の効用と問題点★★

【命題】
放射性炭素年代で弥生時代後期から古墳時代前期までの遺物を編年できるか?

【基本方針】
放射性炭素年代測定上の原理・技術上の問題のみを取り扱うこととする

【放射性炭素年代法の原理】
放射性元素である炭素14( 14 C)が時間経過にともないベータ崩壊を起こして窒素14( 14 N)になる物理現象を利用し、試料中の炭素14( 14 C)/炭素12( 12 C)比から年代を算出する年代測定方法。

炭素14年代(BP、 14 C BP)算出計算式

放射性炭素の崩壊式は
t =C 0 -λt
(λ:崩壊定数 C 0 14 C/ 12 Cの初期値 C t :t年間経過した時の 14 C/ 12 C)

自然対数(ln)をとってtを求めると
t=1/λLn(C 0 /C t

上式に下記の値を代入して得たtの値を炭素14年代(BP、 14 C BP)とする。
:試料の 14 C/ 12 Cの値
14 Cの半減期:5730年=0.693/λ
0 :1950年大気の 14 C/ 12 Cの値



【放射性炭素年代法の範囲表記】
放射性炭素の崩壊式は、炭素14( 14 C)が5730年間にベータ崩壊する確率が50%であることに基づている。
この式から炭素14年代を算出するのだから炭素14年代はありうべき経過時間の平均値とその存在範囲となる。

つまり、炭素14年代を求めるということは、サイコロで1の目が10回出ているならサイコロを投げたのは60回と求めるのと同じ意味合いとなる。実際には、1が10回出た時の平均値を求めたに過ぎない。これでは、実際にサイコロを投げた回数を比較できない。比較可能な形式にするには、実測値の何%が平均値±幅に収まると表現するしかない。炭素14( 14 C)年代は通常σ(68.26894850%)で表記し、3世紀代なら±40年前後となる。

炭素14年代で表現される2つの試料の下限年代と上限年代に重複箇所があれば、炭素14年代でその試料の新旧を判別できない。

【放射性炭素年代法の初期値】
炭素14年代を算出する上での最大の課題は測定試料の 14 C/ 12 C初期値である。
初期値を試料から測定することはできない。推定値を使用する以外に方法がない。

《試料の 14 C/ 12 C初期値》
試料を生物遺骸に限定するならば、下記の経験則から初期値を1950年大気の 14 C/ 12 C値で近似できる。
大気中の 14 C/ 12 C値は安定していて大きく変動しない。
陸生生物の 14 C/ 12 C値は大気の 14 C/ 12 C値とほぼ等しい。

《1950年大気の 14 C/ 12 C値を初期値で使う場合の留意点》


大気の 14 C/ 12 C値は一定幅で絶えず変動している。初期値を1950年大気の値とするとおおよその年代は得られるが暦年とは一致しない。


大気の 14 C/ 12 C値の地域差は十分に小さいが完全には一致していない。初期値を1950年大気の値にすると離れた地域の試料でも新旧比較は可能だが、年代差が小さいと比較が困難な場合もある。




陸生生物でもその栄養源により 14 C/ 12 C値は異なり大気の 14 C/ 12 C値と完全には一致しない。初期値を1950年大気の値にすると試料の種類によらずおおよその新旧比較は可能だが、炭素14年代差が小さいと比較困難な場合もある。

14 C生成過程と年代による 14 C濃度変動》
14 N分子が宇宙線と衝突し、 14 Cが生成される。生成された 14 Cは速やかに酸化されCO となる。宇宙線は殆どが荷電粒子である為、太陽磁場・地球磁場の影響で到達量が変化する太陽磁場は絶えず一定幅で変動し、これとは独立に地球磁場も変動を繰り返している。結果として大気中の 14 C濃度も一定幅で絶えず変動を繰り返すことになる。

放射性炭素生成図
20091003_放射性炭素生成.jpg

14 C大気循環と 14 C濃度地域格差》
大気上層で生成された 14 Cを含むCO は拡散効果と大気対流で大気中に広がる。この結果、大気中の 14 C濃度はほぼ均一になる。但し、拡散効果で 14 Cが運ばれることから高高度で濃度が高く、低高度で濃度が低い。また、大気対流は緯度毎に異なり、高圧帯(下降気流帯)と低圧帯(上昇気流帯)を作る出す。高圧帯の 14 C濃度変化は、低圧帯に遅れることとなる。

ここで海洋問題を取り扱うと海洋の 14 C濃度は大気のそれと大きくことなる。 海洋の 14 C拡散速度が大気に比べ非常に遅く水深による濃度勾配が大気よりも大きい。また、海洋は地表全面を覆っている訳では無いため水平面での海水の動きが制約され地域格差も大気より大きく、更に温度により気体の溶融量が異なることから緯度による差も考慮が必要となる。
大気循環図
20091003_大気循環.jpg
地球が自転していなければ、赤道付近で暖められた空気は密度が低くなって上昇し、上空を両極に向かって移動し、冷却され密度が高くなって下降し、地表付近を赤道に戻るという単純な大気循環になるはずだが、地球は自転ている為、緯度により空気にかかる遠心力が異なり、空気は極までは運ばれず緯度30度付近で下降してしまう。また、コリオリ力により赤道から極極に移動する空気は地表から見てると西風(偏西風)、極から赤道に輸送された空気は東風(貿易風)となる。これと同様のことが60度付近でも発生している。
このこのから高圧帯、低圧帯は帯状に存在することになるはずであるが、地表面の凹凸および陸地・海洋の違いにより実際は断続的に存在している。上空で生成された 14 C濃度は、大きくは緯度の影響を、そしてその中で地域性を持つことになる。

14 C食物連鎖と生物種 14 C濃度格差》
CO となった 14 Cは、生産者である植物類が光合成で有機物に固定化することで食物連鎖の輪に取り込まれる。食物連鎖では、消費者である動物類が植物由来の有機物を摂取する為、 14 Cは、動物類に引き継がれその体を構成する有機物内に拡がる。その後、動植物類がその代謝を止めると分解者である菌類等が有機物を分解しCO に戻され 14 Cはまた大気中に放出される。これは、 14 Cが生成されてから個々の生物群に行渡るまでに時間差があることを示し、その分、 14 Cが生成されてからの経過時間を表す炭素年代と個々の生物群が生きていた時代に差がつくことになる。生産者である植物類の 14 C濃度は生きていた時代の大気 14 C濃度とほぼ等しくなるが、消費者たる動物類の 14 C濃度は、少し前の大気 14 C濃度を反映することになる。さらに分解者となると・・・・、例をあげれば白アリ類。倒木などの木質部を餌とするため現在大気 14 C濃度とはかなり異なる値を示すことになる。

食物連鎖図
20091005_食物連鎖.jpg

【炭素14年代と較正年代】
炭素14年代は試料のおおよそ年代から試料の新旧を判定するには優れた年代測定法方法である。主観の入り込む余地が非常に少なく再試性も高い。しかし、近接した時代の資料を比較するにはこれだけでは力不足。より時間分解能を上げるには、試料の 14 C/ 12 C初期値と1950年の大気の 14 C/ 12 C値の差を補正し、暦年に直すことが必要である。

3世紀の較正表
20091005_較正表.jpg

 実際の方法としては、年輪年代測定法等の他の測定法で暦年の確定した試料を放射性炭素年代測定することにより炭素14年代と暦年の対応表を暦年代、地域毎、また、試料が特殊な炭素源なら生物種毎に作ることになる。これを較正表と呼び、にここに記された較正曲線を用いて較正された年代を較正年代(calBC、calAD)とする。較正年代は、暦年と一致するが炭素14年代に1つの較正年代が割当たるとは限らない。
 較正年代に直すことにより炭素14年代では新旧関係を比較できなかった試料のかなりの部分が比較可能になったがこれでも近接する年代の試料の新旧を比較できない場合が存在する。較正年代は、暦年と一致するが炭素14年代に1つの較正年代が割当たるとは限らないからである。これは如何ともし難く、年輪年代測定法等の限界と考えられる。
 また、較正表を作るには暦年の確定した試料が必要となるがこれが非常に難しい。年輪年代測定法は文字通り年輪を数えて試料の暦年を確定する方法だが1世代の木で遡れるのせいぜい数百年単位、数万年単位を遡るには数百世代分が必要となる。当然、これだけの試料を単一場所で集めることは不可能、更に各世代間の繋ぎ目で誤差が入り込む余地が出てくる。
完全と言えるような較正表を作るには莫大な試料の分析が必要になるのだ。
これが出来ているかというと・・・・較正表は随時補正されている。






縦軸に炭素14年代、横軸に較正年代、炭素14年代で較正曲線を介して較正年代が単純に一つ決まるのは、水色の範囲のみである。較正年代の3世紀は、較正曲線が上下動している為、炭素14年代との交点が複数現れ、単純には、炭素14年代を暦年には変換できない。つい最近まで、炭素14年代は高精度のAMS法ですら誤差を40BP(図の赤点線)程度持っていたので、暦年を絞るのはかなり難しいことがわかる。

【海洋リザーバ効果】
海洋の 14 C濃度は大気のそれを大きく下回る。理由は 14 Cの拡散速度が大気に比べ遅いこと、及び、海洋の炭素再利用率が高いことにある。陸地では再利用対象の炭素源(生物残渣や有機物)の一部が海に流出する為、再利用率が低くなり、古い時期に生成・放出された炭素が少ない。逆に、海洋は古い時期に生成・放出された炭素が多いこととなり、結果として、海洋生物由来の炭化物は、実年代より古い測定値となる。これを海洋リザーバ効果と言う。測定試料に海洋生物由来の炭化物が混入すると得られる炭素14年代が大きく過去に引っ張られてしまう。また、海洋生物を主な餌とする生物種由来の炭化物も同じ結果となる。

炭素循環循環
20090105_炭素循環.jpg
火山から大気に放出された 12 C及び大気上層で生成された 14 Cは共に大気循環により拡散し、この一部が水の循環に乗って海洋へと運ばれ海洋循環により拡散する。海洋に運ばれた炭素は生物活動等により炭酸カルシウム等の鉱物に固定化され地殻に取り込まれる。近くに取り込まれた炭素はやがてマントルに引き込まれ、火山から放出されることになる。大気中の炭素が海洋に行き渡るには長い年月がかかり、さらに海洋循環は炭素が長期に亘り滞留する。


《日本国内遺物の放射性炭素年代測定上の課題》
日本は島国で周囲を海に囲まれている為、海洋資源への依存度が高く発掘された遺物(試料)に海洋リザーバ効果のある炭化物が混入する頻度が高い。

海洋リザーバ効果のある炭化物
種類
詳細
海洋生物種
魚介類、海藻類、海獣類
海洋依存性生物種
海鳥類、海岸線生息の捕食動物類
溯上性生物種
さけ、ます類
海洋資源
食塩、にがり類(生成過程で海洋性生物が混入する可能性が高い)

高精度放射性炭素測定で問題になる試料
種類
詳細
土器内壁の炭化物
炭化物は複数年を掛けて生成したと考えるのが妥当で、この間、海洋リバース効果のある生物および資源が当該土器で加工されなかったとは考え難い。
人由来の炭化物
(遺骸・排泄物等)
食糧源として海洋リバース効果のある生物の依存度が低かったとは考え難い。内陸部でもサケ・マス類への依存度はかなり高いと考えられる。
保存食品由来の炭化物
海洋由来の食塩、にがり類の大量使用がなかったとは考えがたい。
海洋資源
食塩、にがり類(生成過程で海洋性生物が混入する可能性が高い)

【古木効果】
 炭素14年代は生物が代謝を止めてからの経過年数を表し、試料が得られた地層や試料が使用・廃棄された年代を表してはいない。試料が代謝を止めた年代と使用・廃棄された年代にはずれがある。
 この為、使用・廃棄された年代に炭素14年代を当てると、使用・廃棄された年代が実年代より古い測定値となる。これを古木効果と言う、ことばの通り、木製品でのよく発生する。

《日本国内遺物の放射性炭素年代測定上の課題》
森林資源の豊富な日本おいては、木材資源の生産から使用・廃棄までは全般的に短期間と考えられる。よって大部分の木製品は炭素14年代を木製品の使用・廃棄年代としても大きな差は出はないが、暦年で10年が大きな意味を持つような場合は、製造期間・試用期間・再利用期間等を十分に考慮しなければならない。だが、これは非常に難しい困難が伴う。

代謝停止時期と使用廃棄時期が異なる試料
種類
説明
木材由来の炭化物
木の生長点は樹皮直下に存在し代謝があるのはこの部分のみ。
 (年輪毎に炭素14年代が異なる)
伐採してから使用可能になるまで一定期間が必要
 (加工するには乾燥工程が必要)
使用するまで長期保存が可能
廃棄するまで長期使用が可能
骨・角材由来の炭化物
(貝・珊瑚等含む)
使用するまで長期保存が可能
廃棄するまで長期使用が可能

高精度放射性炭素測定で問題になる試料
種類
出土状況
詳細
建材
寺院・仏閣等
遺構
・伐採後、長い乾燥工程が必要だがこれを推定することは困難。
 (直径80CM以上の木材を天然乾燥するなら5-10年程度は必要)
・材木は伐採後、長期保管可能だがこれを推定することは困難。
・材木の耐用年数は非常に長く、再利用することも可能な為、
 試料が現形態に至るまでの経過期間を推定することは困難。
 (ヒノキ材の耐用年数は1000年超、杉・松材でも500年超)
燃料
残存物
土器外壁固着物
炉内残留物
薪(小木)からの炭化物と特定できればいいが、当然、廃材や大木
加工残渣なども含まれていると考えられる。焼失前の形態が確認で
きなれば測定は困難。



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